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2005年 11月 11日 金曜日 19:05 JST
[東京 11日 ロイター] 福井日銀総裁は、都内で講演し、消費者物価指数(CPI)の前年比が安定的にプラスだと確認したら、量的緩和解除という一つの通過点を間違いなく越えさせてもらう、と述べた。ただ、緩和解除によって、金融政策が引き締めに転じるというわけではないと強調した。
また、量的緩和解除の約束の基準となっているCPIは、年末にかけてプラスに転じる可能性が高いとした上で、いったんプラスになると簡単にはマイナスに逆戻りすることは考えにくい、との見通しを示した。
<金利機能殺す異常な政策はいつまでも続けられず>
福井総裁は量的緩和政策を、「海外で全く例を見ない異例の政策」と位置付けた。
そのうえで、量的緩和解除について、「今後、『約束』で示した条件が満足されたかどうかを確認していくことになる」とし、経済・物価情勢が今回の展望リポートの見通しに沿って展開していくのであれば、「2006年度にかけて高まっていくと考えられる。より具体的な時期については、今後の金融経済情勢次第であり、予断を持つことなく、適切に判断していく」と述べた。
緩和解除の後のプロセスとしては、「当座預金残高の削減」、「極めて低い短期金利の水準」、「次第に経済の実勢に見合った金利水準への調整」という順序をたどるとし、展望リポートで示した概念をあらためて紹介した。
その後、質疑応答では、金利機能を殺した政策の弊害を挙げ、「CPIが安定的にプラスだと確認できた後は、ひとつの通過点として、越えさせていただく。間違いなく。これを越えなければ、日本は、経済を見る判断力を失っていく可能性がある」と述べ、量的緩和解除に強い意志を示した。
ただ、「量的緩和の枠組み解消は、即引き締めに転じるということではない」と強調。そのうえで、「日本経済が全体としてデフレスパイラルに落ちてしまう瀬戸際の状況をぎりぎり脱出する非常手段として採用したもの。経済がこれから前進していくために一番大事な市場機能を基本的に殺す性格を持っている。こんな異常なものをいつまでも続けられないというだけの話」とした。
CPIが安定的にゼロ%以上になれば、「この非常手段は解除するが、その時点ではまだゼロ金利。そこからスタートして、今後の経済の展開を正確に判断しながら、われわれとしては、できる限り、引き締めという荒っぽい手段に早急に転じるということではない」と繰り返した。
総裁は、金利機能を早く復活させたいとしながらも、「心は焦っても、きちんと約束どおり、CPIが安定的にゼロ、ひとつの通過点になるまでは今の政策を続けさせてもらう」と述べた。
デフレ脱却については、「明確に、ひとつの時点をポイントと言える人は、世界中に一人もいない。われわれは、誰が見ても同じに見える消費者物価指数で通過点を越えようとする。その後、どういう金利政策を採るかは、その時の経済が最も呼吸しやすい、インフレ心理という生臭い息遣いが出てくることを防ぎながら運転する、そういう世界に入っていく」と語った。
<物価判断、ユニットレーバーコストを重視>
今後のCPIの動きについて、福井総裁は、年末にかけて、コメ価格や電気・電話料金引き下げなどの特殊要因がはく落する過程にあり、「前年比プラスに転じる可能性が高いと思われる状況だ」とし、その後も、「前年比のプラス基調が定着していく可能性がかなり出てきている」との見方を示した。
さらに、物価の動きを見る場合、「どういう品目が上がった、下がったという見方もあるが、根本にさかのぼって判断する場合には、生産性、賃金の抑制、あわせて、ユニットレーバーコスト(単位あたり労働コスト)がどういう動きをしているかをみれば、一番、正確な判断ができる」と指摘。今後のユニットレーバーコストの動きに関し、「下げ幅を縮小し、いずれプラスに転じていく方向をにおわせるようなことになっていく」との見通しを示した。
<経済は潜在成長率を幾分上回るペースで息の長い成長>
日本の景気については、「踊り場を脱却し、回復を続けている」と述べた。先行きは、「V字型の回復ということは念頭から消さなければいけない。しかし、緩やかな、その分、息の長い、ショックに次第に強くなっていくという意味でのしっかりした成長が展望できる」と指摘。日本の潜在成長率は「だいたい、1%強とみている」とした上で、今後1年半程度を見渡した場合、日本経済は、「潜在成長率を幾分上回るペースで、息の長い成長を続ける」との見方を示した。
こうした景気見通しの背景としては、「海外経済の拡大に伴って輸出が増加する。一方では、企業部門の好調が続いて、その好影響が着実に家計部門にも波及していく。内外需バランス取れた成長の姿を想定している」と説明した。
夏場以降、個人消費がやや弱めの動きになっているが、雇用者所得が緩やかに増加していくことを踏まえ、「今年前半が非常に好調であったことの一時的な反動に過ぎない」との見方を示した。
また、「国内的な要因から景気が後退局面に入る蓋然性は非常に小さいと思われる。派手ではないが、息の長い成長が続く」と述べた。
<原油価格の動向や緩和的な金融環境の変化には注意>
一方、世界経済全体の減速など大きなショックが加わった場合には、日本経済にも悪影響が及ぶことは避けられず、総裁は、リスク要因として、「高騰を続ける原油価格の動向や、現在、グローバルにみられている緩和的な金融環境が変化する可能性には注意しておく必要がある」と指摘した。
海外経済のうち、米経済は、「基調としては潜在成長率並みの景気拡大が維持される」としたほか、中国経済は、「高成長が続くもとで、在庫調整圧力も徐々に弱まっていく」との見方を示した。
総裁は、原油高のもとでも、インフレ心理がそれほど高まっておらず、急速な金融引き締めが回避されている点を指摘。そのうえで、「長期金利は、基本的には先行きの経済・物価に関する見方を反映して決まるものであり、インフレ心理の落ち着きが、長期金利の安定に大きく寄与していることは確かだ」との認識を示した。
こうしたことから、「原油価格のさらなる上昇など、何らかのきっかけでインフレ懸念が高まり、緩和的な金融環境に変調が生じる場合には、先進国経済の成長が鈍化するだけでなく、国際的な資金フローの変化などを通じて、エマージング諸国を含めた世界経済全体に悪影響が及ぶリスクがある」と指摘した。
一方で、総裁は、企業が設備投資や雇用スタンスを積極化させる可能性もあるとし、「上振れの可能性についても頭に置いておく必要がある」とした。
株や土地という資産価格は経済の先行きに対する見方の変化を示すとし、「今後とも注目していきたい」と語った。
福井総裁は、BIS総裁会議など一連の国際会議から帰国したばかりだが、「世界経済は引き続き、比較的バランスの取れた形で順調に、今も推移しているし、見通しとしても、バランスの取れた形で拡大を続ける可能性が高いとの印象を受けた」と述べた。
高止まりしている原油価格については、「多くの経済主体も政策当局も強く問題意識しているが、同時に、そのプレッシャーを吸収するプロセスも並行して進んでいる」と述べ、以前よりも経済にはフレキシビリティが備わっているとの見方を示した。
人民元の動向について、総裁は、「中国の国内の状況を勘案すると、今後とも、それほど急激な変化を為替相場の面だけで取るということは難しい」との見方を示した。
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