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※官の権限はどの程度大きいのか。
日本総合研究所主席研究員の藤井英彦氏は公的資金の流れから官に依存した経済規模を推定した。
政府の財政投融資残高と政府系金融機関の貸出残高を合計した数字は約四百七十兆円ある。
国内の製造業など企業部門の負債残高の二割に相当する。
こうした公的資金は補助金や政策金融などを通じて民間企業を支えている。
「おおざっぱに言って日本経済の二割が官に頼る計算だ」という。
知らぬ間に膨らむ政府――予算、実は300兆円、GDP比6割近くに(官を開く)2005/10/31,
政府は内閣改造後、政府系金融など改革論議を急ぐ。
官にとって不要な仕事を洗い出せるかが焦点だが、そもそも政府はどの程度大きいのか――。
実態ははっきりせず、公表統計には見えないところで知らず知らずに膨らみ、広くとらえた予算や公務員の規模はいまや統計の二倍との見方もある。
これをどうやって減らすかが課題となる。(1面参照)
「政府の規模をはっきり定義してほしい」。
先月二十七日の政府の経済財政諮問会議。
小泉首相は
衆院選の与党大勝を受け、「政府規模の十年以内の半減」という目標を掲げた民間議員提案にすかさず注文を付けた。
特別会計で加算
「小さな政府」を目指す小泉首相。
「政府の規模は欧米と比べて決して大きくない」との見方があるなか、減らすべきだと主張するには、それなりの根拠が必要だ。
政府の規模を示すうえで最も一般的な数字は国の一般会計予算。防衛、社会保障などの政策経費と国債利払い費を足したもので、二〇〇五年度は当初予算ベースで八十二兆二千億円ある。
国内総生産(GDP)の一六%に相当する。
英国(二九%)や米国(二〇%)、フランス(一七%)よりも、小さい。
国の一般会計に地方の予算である地方財政計画を足すと百六十六兆円になる。
経済協力開発機構(OECD)は、国、地方合計の支出に年金や医療の給付を加えた金額をGDP比で国際比較している。
〇四年は日本が三七%。米韓よりも大きいが、欧州各国より小さく、主要二十八カ国中下から六番目だ。
だが、マクロ統計には入らない一部の特別会計などを加えると日本の官はにわかに膨らむ。
特別会計は空港整備、土地改良など政策目標ごとに三十一ある。
歳出規模は単純合計で四百十二兆円と一般会計の五倍。
一般会計と特会で資金を出し入れする重複分を除いた国庫予算の歳出純計の合計は約二百四十兆円にのぼる。
郵便貯金を原資に政府系金融などに回す財政投融資や、国の補助金など重複分を引いた地方自治体の歳出などを足すと「官の支出は年三百兆円規模」(三菱総合研究所の白石浩介主任研究員)という。
これは国の一般会計と地方財政計画を足した数字の二倍弱。
GDP比で六割弱に相当する。
高福祉国家のスウェーデンに匹敵するとの見方もある。
「民」にも甘え
政府の支出が膨らむ背景には、補助金や低利融資などで恩恵を受けている「民」の存在がある。
「政府系金融は絶対に必要だ」。
政府系金融を巡る諮問会議のヒアリングでも業界団体のトップなどが組織の統廃合に反対の意見を表明。
選挙民からの陳情を受ける自民党内でも擁護論がなお根強い。
官の膨張を政と民が支えている面もある。
将来は少子高齢化で社会保障給付がさらにかさむ。
日本総合研究所の湯元健治調査部長は「行政サービスの効率化など官のスリム化は待ったなしだ」と指摘する。
借金、短期含め1000兆円
主要7ヵ国で最悪
借金でみると、どの程度大きいのか。
国債の発行残高は今年度末に五百三十八兆円に達する見込み。
地方分と合わせた長期債務の残高は七百七十四兆円。
GDP比で一・五倍あり、米国は六六%、英国は四六%、フランスは七四%で、主要七カ国の中では最悪の水準だ。
ここまでは知られた数字だが、政府が抱える借金はほかにもある。
一つが政府短期証券。
六月末で約九十七兆円の残高がある。
本来なら一年以内に返すべきだが、満期を迎えるたびに借り換えており、事実上の長期債務。国際協力銀行など市場調達する政府機関に対する債務保証も政府債務といえ、これが約五十九兆円ある。
政府が郵便貯金などを通して国民から預かっている二百五兆円も広い意味での政府債務だ。
これらをすべて足すとざっと千兆円となる。GDPの二倍だ。
経済成長率が高い時代なら借金は「将来への投資」と前向きに受け止められるが、人口減少時代ではそうはいかない。
身の丈にあった借金でなければ日本は海外投資家などから評価されない。
広義の公務員900万人
特殊法人など周辺雇用多く
政府の大きさを公務員の数でみると、国と地方を合わせて、ざっと四百万人いる。
国家公務員は、自衛隊や日本郵政公社職員などを含め、今年度末見込みで九十五万人。地方公務員は下水道など現業を含めて昨年四月時点で三百八万人いる。
この数字を国民千人あたりに直すと日本は約三十五人。
総務省の調査によると、フランスは約九十六人、英国は約七十三人、米国は約八十一人。この数字でみると日本は小さな政府といえる。
しかし、日本経団連の調査によると、中央政府と関係が深い公的部門で働く人はざっと百三十五万人いる。
内訳は各省が設置を認めた財団法人など公益法人に五十一万人、政府が出資する企業に四十五万人、政府系金融機関など特殊法人に十五万人、国立大学に十三万人などだ。
地方の第三セクター企業や公益法人など地方自治体と関係が深い部門を含めれば、さらに規模は大きくなるが、この具体的な統計はない。
国税庁がまとめた二〇〇三年の源泉所得税の納税状況をみると、政府部門の就労者に区分される人は八百九十三万人いた。
これには公務員だけでなく、公社、公団、政府系金融機関の職員や役所で働くアルバイトらも含まれるが、この数字が公務員数で見た官の大きさを示す実態に近いとみられる。
四百万人とされる水準の二倍を超す。
政府は郵政民営化など官のスリム化に取り組んできた。
経済財政諮問会議は国家公務員の定員を五年で五%以上純減することも打ち出した。
ただ市場化テストなどで官の仕事を大胆に減らす仕組みが根付かなければ大幅な人員削減は進まない。
法律、10年で1割増
作成数で官僚評価
日本の法律の数は、実体がないものの残さざるを得ない法律を引いた実質ベースでみると、千八百二十二本ある。
これに政令や省令を合わせた法令数でみると実に七千本以上もある。
この数字を他の主要国と比べると「それほど多いとはいえない」と内閣法制局参事官から衆院議員になった平岡秀夫氏は解説する。
「法制局が既存の法律との整合性を考え、法律の増加を抑えている」という。
だが、法律は年を追うごとに増えている。五十年前の一九五五年には約千二百本だったが、八五年には千五百七本、九五年には千六百五十五本になった。
十年で一割、五十年で五割、増加している。
「やはり法律をつくることが官僚にとって省内で評価される最も重要な基準であることは変わっていない」とある人事院の幹部は指摘する。
では官の権限はどの程度大きいのか。
日本総合研究所主席研究員の藤井英彦氏は公的資金の流れから官に依存した経済規模を推定した。
政府の財政投融資残高と政府系金融機関の貸出残高を合計した数字は約四百七十兆円ある。
国内の製造業など企業部門の負債残高の二割に相当する。
こうした公的資金は補助金や政策金融などを通じて民間企業を支えている。
「おおざっぱに言って日本経済の二割が官に頼る計算だ」という。
民の甘えが官の権限拡大につながっている。
私はこう見る
積水化学工業 大久保尚武社長
労働三権認め大なたを
国が財政危機になれば、企業は主要な投資先を海外に移してしまい、産業が空洞化する恐れがある。
だから官のスリム化を断行し、歳出を大幅に減らす必要がある。
国がやるべき仕事は安全保障や治安維持、外交、税制など大きな枠組みとしてのルール設定に限るべきだ。
他の仕事の多くは民間でもできる。
市場化テストなどを通じて民間に委ねたらよい。
例えば教育。優れた私立学校が増え、義務教育を全国一律的に手掛けることには疑問がある。
政府の仕事を本当に必要なものだけに絞るのが理想だが、公務員の雇用が問題になる。
公務員に労働三権を認めておらず、本人の意に反した解雇はしにくいとされる。これでは民間企業のようなリストラはできない。
公務員も民間企業の社員と同じ労働条件にすべきだ。
労働三権を与えた上で民間企業がやってきたような厳しいリストラを可能にする環境を整える。転職・転身支援の仕組みをつくり、民への円滑な人材移動を進めるのも一案だ。
一時的に経費がかかるのはやむを得ない。官僚組織の活性化のためには年功序列にこだわらず優秀な若手を重要なポストに抜てきする人事を考えてはどうか。
積水化学では、各事業の営業利益率が三%を下回ると撤退の検討対象となる。官の事業も何か明確な撤退基準をつくれないか。国民的な議論が必要だ。
国際基督教大 八代尚宏教授
規制削減へ事後点検型に
日本の政府は独立行政法人や第三セクターなど「半官半民」組織を多く抱えている。
いずれも国からの補助金に依存する体質から抜けきれていない。非効率かつ無駄な業務が多く、小さな政府の実現に向けて排除する必要がある。
威力を発揮するのが市場化テストだ。不透明だった官のコスト構造に入札を通じてメスが入る。実は数十億円規模の補助金が付いていたといったことも改めて分かる。
医療、教育、介護など社会保障関連を中心とする半官半民の業務すべてに市場化テストを適用し民間に事業を移すべきだ。そうすれば市場の発展も見込める。
民間からの税収増につながり、デフレを招かずに財政再建を進めることも期待できる。
規制改革のさらなる推進も欠かせない。日本は海外に比べて規制が多すぎる。
民間が新規事業に参入したくても、様々な規制の壁が立ちはだかる。
米国は事後チェック型だ。
日本もまずは民間に業務を試させ、その後、競争環境の整備に必要な規制を作るべきだ。
官による規制を最小限にして、民間活力を引き出すような仕掛けが重要だ。
官は今後、国際関係にも重点を置くべきだ。日本の外交はあまりに弱い。
各省庁の公務員を無駄な業務から解き放し、米国やアジアとの協調体制を磨く。
そうすれば外の経済をもっと日本に呼び込める。
【図・写真】諮問会議に臨む民間議員(右側)ら=27日、首相官邸