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11月4日(ブルームバーグ):日銀の金融政策は世界で最も寛大だ。日本経済の足かせとなってきたデフレを終息させるため、短期市場金利を実質ゼロ%に維持し、現金を銀行に強制的に供給している。
そんな日銀が今、コア消費者物価指数(コアCPI、生鮮食品除く)が 2005年度に前年比0.1%の上昇、2006年度には同0.5%もの上昇になるとの見通しに基づき、引き締め政策を開始する準備を整えたようだ。
インフレを警戒することは、中央銀行に必要な資質だろう。ただ今回の場合、警戒すべき根拠は全くない。第3次小泉改造内閣の閣僚が今週、金融政策の軌道修正の性急さに難色を示したことも十分に納得がいく。
財政赤字を削減し、政府債務の対国内総生産(GDP)比を安定させる政府目標の成否は、長年続いたデフレを終息させ、堅調な経済成長ペースを維持できるかどうかにかかっている。金融政策の早まった変更は、この目標の達成を脅かしかねない。
日銀の福井俊彦総裁はこれまで、デフレがインフレに転じるまでは金融政策を変更しない方針を貫いてきた。CPIが過去12カ月間にわたりほぼ横ばいという状況のなかで、インフレへの転換が達成されたことに自信を持てる金融政策決定会合のメンバーは、誰かいるのだろうか。
消費者物価
CPIを算出する際の基準となる年(基準年)は、採用品目を入れ替えるため、5年ごとに変更される。この変更は、CPIの押し下げ要因になる傾向が強い。これは、消費者の購入の対象が、値上がりペースが比較的遅い品目に集まりやすいためだ。
次回の基準年の変更は来年の夏。エコノミストは、この変更により、CPIの伸び率は0.2−0.3ポイント押し下げられるとみている。CPIの上昇ペースは、基準年の変更がなかった場合よりも穏やかになるという訳だ。すでに発表されたCPIが、基準年の変更によって修正されることはない。
また、米国など多くの国では、コアCPIを計算する際、総合指数からエネルギーと全食品が除外される。日本で除かれるのは生鮮食品だけだ。つまり、今年度の日本のコアCPIは、世界的なエネルギー価格上昇の影響を大きく受けることになる。日銀は金融引き締めを検討する際には、このことも胆に銘じるはずだろう。
需給ギャップ
日銀は、今週公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、景気の現状について「前回4月の展望レポートで示した経済・物価情勢の見通しと比べると、上振れて推移している」と指摘。05年度後半から06年度までの経済情勢については「潜在成長率を幾分上回るペースで、息の長い成長を続ける」と予想した。
その上でリポートは「経済全体としての需給ギャップは、緩やかに改善していくとみられる」としている。
日銀は日本の潜在成長率を年1%程度とみているが、この見方が悲観的過ぎた場合はどうなるだろう。
ドイツ証券の松岡幹裕チーフエコノミストは東京でインタビューに答え、日銀は生産性の伸び、そして潜在成長力を過小評価していると指摘。潜在成長率は1%ではなく、2.5%程度かそれを若干上回る水準にあるとの見方を示した。
成長加速
松岡氏によると、これまでは極めて緩慢な経済成長が実質的な生産性の伸びを抑えてきたが、今後は成長ペースが上向くことで、生産性の改善が鮮明になる。
生産性の伸びが日銀予想を上回れば、需給ギャップの規模も日銀の推計より大きくなる。その場合、需給ギャップを埋めるためには、日銀の見通しよりも長い時間を要することになり、成長ペースも予想より速くなるという。
換言すれば、日本経済はインフレ圧力を抑えたまま、長期的な潜在成長率を上回る成長を実現できると同氏は指摘。今後数年間の成長力はかなり強く、日本のデフレ終息は鮮明になるとみている。
その上で同氏は、時期尚早な金融政策引き締めによるデフレ・ショックのリスクは依然として存在すると警告した。(ジョン・ベリー)
(ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Bank of Japan's Course Might Renew Deflation: John M. Berry (抜粋)
{NXTW NSN IPELID076GHT 更新日時 : 2005/11/04 14:16 JST