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11月2日(ブルームバーグ):今年の日本株市場では東証1部の1日の売買高、外国人による月間買い越し額など“バブル相場”と呼ばれた時期の記録を更新するケースが相次いでいる。8月以降に上昇ペースを加速する日経平均株価も1万2000円、1万3000円という節目をクリアし、次の節である1万4000 円が今や、目前に迫っている。
だが、次の節抜けはこれまでとやや事情が異なりそうだ。というのは、その少し先には、バブル崩壊ショックからの本当の立ち直りを示し得る“ベルリンの壁”が横たわっているからだ。
日経平均の終値が8月10日に1万2000円に乗せたのは為替の円高が進んだ 2004年4月以来、約1年4カ月ぶり。9月20日に1万3000円を回復したのは小泉純一郎政権の誕生や米国の同時多発テロがあった年の01年6月以来、4年3カ月ぶりのことだった。
いずれも現在の相場の力強さを確認させる分岐点になった。だが、次の1万4000円乗せが示す意味合いはこれまで以上に大きい。テクニカル分析に詳しい水戸証券の阿部進投資情報部長も「1万4000円半ばは重要なポイント」と受け止めている。終値で、92年8月の1万4309円、95年7月の1万4485円、98年1月の1万4664円などの存在があるためだ。まさに日本株はいま、歴史的にもテクニカル的にも正念場を迎えているといえる。
失われた10年と1万4000円割れ
思えば89年12月、日経平均は史上最高値の3万8915円を付けた。日本はバブル経済真っ盛りで、日本から溢れ出したマネーはニューヨークの代表的スポット、ロックフェラーセンターを買収するなど海外にも向かった。しかし、公定歩合の引き上げや不動産関連融資の総量規制導入など、金余りを封殺する政策の相次ぐ実施で、翌90年に株式市場における“泡”ははじけた。
実態以上に肥大化した経済を急激に締め上げた後遺症は大きく、日経平均は90年に年間で1万5067円(39%)下げ、91年も864円(3.6%)安、92年も6058 円(26%)安と3年連続で下落。その後、毎年の経済対策の実施で93年、94年と反発傾向を強めたが、それに先立つ急反落過程での「一番底」を付けたのが 92年8月だった。
阪神・淡路大震災の発生、史上初の1ドル=80円割れという歴史的な円高進行が警戒され、一時2万円台まで戻した日経平均が「二番底」を付けたのが 95年7月。事実上の「三番底」となった98年1月の安値は、今振り返れば、5年後に待ち受けていた悲劇のトンネルに入る最初の入り口だったとも言える。
前年のアジア通貨危機、三洋証券や北海道拓殖銀行、山一証券の経営破たん続発をきっかけに高まった金融システム不安は、それまで5年近く維持してきた1万4000円台の“底”割れを引き起こし、98年10月の1万2879円から2001 年9月の9504円、03年4月の7607円まで徐々に下値を切り下げていく。
小泉政権の誕生とともに始まった
政治的な観点からも、1万4000円という数字は興味深い。2000年のIT(情報技術)バブル相場の崩壊後、戻り高値を付けたのが01年5月7日の1万4529 円。この日は「小泉首相が就任し、最初の所信表明演説をした日」(水戸証の阿部氏)だ。不良債権処理の早期解決を前面に押し出し、痛みを伴う構造改革の推進に大きく舵を切ったのが小泉政権であり、荒療治の副作用は03年4月の 8000円割れという形で表面化した。
日本銀行が9月に発表した8月の「貸出・資金吸収動向」によると、銀行の貸出平均残高は前年同月比0.1%増(確報値)と、同統計を98年10月から取り始めて以来、初めてプラスに転じた。不良債権処理が一巡した銀行の経営環境は大きく変化しており、大手銀行の株価も年初来高値を連日更新する動きを見せている。
1つの公約を果たした小泉首相は、政権の最重要課題としてきた郵政民営化にも道筋を付け、10月31日に行われた内閣改造で、来年9月の任期切れに向けた着陸態勢に入った。
日経平均の場合、2000年4月に当時の値がさハイテク株が大量に採用される大幅な銘柄入れ替えが実施されており、その後のハイテク株の急落で、現在水準は過少評価されているとの見方が少なくない。しかし裏返せば、こうしたハンディを乗り越えての回復であり、01年5月の1万4529円を抜けることは素直に小泉政権の誕生とともに始まった底割れの時代に終止符を打ち、失った90 年代を取り戻すスタートラインに立つとも読める。
倒産、再生そして増配へ
「まずは1万4000円を付けてから。外資ファンドの決算期が重なる11月は安いというジンクスなど、相場にはアヤがあるものの、当面の上値めどである1万4500円を付ける可能性は高い」。こう見るのは、ウツミ屋証券の藤田勝義取締役。藤田氏は、現在の日本を「4年間ゼロ金利が続いていることは、企業で言えば無配、倒産の状況。今ようやく復配し、これから増配の動きが出てくるところ」と受け止めている。
日本銀行が10月31日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、政策委員の多くが06年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率をプラス0.4%から0.6%の範囲と予想。この見通しの実現を前提に、「現在の金融政策の枠組みを変更する可能性は、06年度にかけて高まっていく」と指摘した。
金融の量的緩和の解除、政策金利の引き上げという流れが見えてくる中で、これまで国内債券中心の運用を展開し、2004年度まで10年連続、4年連続で株式の保有比率を引き下げてきた長銀・都銀・地銀、生保・損保の動きは気掛かりだ。日本株転落の歴史の中で、1万4000円台に次々と置かれた一里塚を超えてきた時、10年続いた国内金融機関の運用姿勢にも本当の変化が訪れる可能性がある。
記事についての記者への問い合わせ先:
東京 院去 信太郎 Shintaro Inkyo sinkyo@bloomberg.net
更新日時 : 2005/11/02 15:06 JST
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=atGEDW5IPDWo&refer=jp_japan