★阿修羅♪ > 国家破産43 > 233.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
10月31日(ブルームバーグ):日本銀行は31日午後、経済・物価情勢の展望(展望リポート)を公表した。06年度の消費者物価指数(除く生鮮食品=コアCPI)前年比上昇率の「政策委員の大勢見通し」はプラス0.4%−プラス 0.6%、「中央値」はプラス0.5%。05年度の「大勢見通し」は0.0%−プラス 0.1%、「中央値」はプラス0.1%だった。
展望リポートは金融政策運営については「今回の展望レポートの経済・物価見通しが実現することを前提とすると、現在の金融政策の枠組みを変更する可能性は、06年度にかけて高まっていくとみられる」と指摘。枠組み変更後のプロセスについては「極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済・物価情勢に見合った金利水準に調整していくという準備をたどることになる」としている。
展望リポートはまた、枠組みの変更について「日銀当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減し、金融市場調節の主たる操作目標を当座預金残高から短期金利に変更することを意味する」と指摘。そのうえで「当座預金残高の削減にあたっては、長期にわたって量的緩和政策が続けられてきただけに、金融市場の状況を十分に点検しながら行う必要がある」としている。
「余裕をもって対応」が可能
展望リポートはさらに「物価見通しの好転とともに、量的緩和政策の効果は次第に短期金利がゼロであることによる効果が中心になってきていることを踏まえると、政策の枠組みの変更自体は、政策効果について非連続的な変化を伴うものではない」と指摘。
そのうえで「こうした枠組みの変更やその後の短期金利の水準・時間的経路については、言うまでもなく先行きの経済・物価の展開や金融情勢に大きく依存する。日銀としては、経済がバランスのとれた持続的な成長経路をたどるなかにあって物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、全体として、余裕をもって対応を進められる可能性が高い」としている。
展望リポートは4月、10月の年2回の公表で、先行きの経済・物価の標準シナリオとリスクシナリオが示される。実質国内総生産(GDP)伸び率、コアCPIと国内企業物価指数の前年比伸び率について、政策委員(9人)の見通しから最大値と最小値を1個ずつ除いた「大勢見通し」と、高低順に並べた見通しの「中央値」を示す。1月と7月の決定会合で、標準シナリオに比べて上振れ、あるいは下振れが生じてないかを点検し、金融経済月報で公表する。
「息の長い回復続ける」
実質GDPは06年度の「大勢見通し」がプラス1.6%−プラス2.2%、「中央値」はプラス1.8%。05年度の「大勢見通し」はプラス2.2%−プラス 2.5%、「中央値」はプラス2.2%。国内企業物価指数は06年度の「大勢見通し」がプラス0.5%−プラス0.8%、「中央値」はプラス0.6%。05年度の「大勢見通し」はプラス1.6%−プラス1.8%、「中央値」はプラス1.7%だった。
展望リポートは景気の現状について「昨年後半以降続いてきた景気の踊り場を脱し、回復を続けている。前回4月の展望レポートで示した経済・物価情勢の見通しと比べると、輸出が幾分下振れたが、国内民間需要がそれ以上に上振れており、全体としては、上振れて推移している。踊り場のきっかけとなったIT関連分野における生産・在庫調整は、ほぼ終了したとみられる」と指摘。
05年度後半から06年度までの経済情勢については「潜在成長率を幾分上回るペースで、息の長い成長を続ける」と予想。その背景として、1)海外経済は引き続き拡大し、そのもとで輸出は増加を続ける、2)設備投資は引き続き増加していく、3)企業部門の好調は家計部門にも波及しつつあり、個人消費は着実な回復を続ける、4)金融機関の貸出態度は積極化し、資金調達ルートも多様化しているもとで、企業の資金繰りは大幅に緩和している――と指摘した。
物価をめぐる情勢も改善
展望リポートは物価をめぐる背景について「経済全体としての需給ギャップは、緩やかに改善していくとみられる。企業の設備や雇用人員に関する判断は、過去十数年のなかで最も不足方向に変化してきている。単位当たり労働コスト(ULC)の動きをみると、生産性の上昇による押し下げが続く一方、賃金が上昇に転じてきているため、その低下幅は縮小していくと予想される。この間、企業や家計の物価見通しも徐々に上振れてきている」と指摘。
そのうえで、物価の先行きについて、国内企業物価は「原油価格をはじめ、内外の商品市況にも左右されるが、05年度はやや大幅な上昇となり、06年度は、そのテンポが鈍化するものの、上昇を続けるとみられる」、消費者物価(全国、除く生鮮食品)については「今後年末にかけてこれら(コメ価格の下落や電気・電話料金の引き下げといった)特殊要因がはく落していく過程で、消費者物価の前年比はゼロ%ないし若干のプラスに転じていくと予想される」と指摘した。
展望リポートはさらに、消費者物価(全国、除く生鮮食品)について「その後も、需給ギャップが緩やかな改善を続け、単位当たり労働コスト(ULC)からの下押し圧力が減じていくもとで、前年比のプラス基調が定着していくと考えられる。このような動きを受けて、2005年度の前年比はゼロ%近傍、2006年度はプラスとなるとみられる」としている。
リスク要因
展望リポートは、企業が「設備投資などストックの積み上げに対し大枠としてなお慎重な態度を維持している」ことや、「売上げや生産の増加に対応して在庫や設備のストックを大幅に積み上げることには、なお慎重であるようにうかがわれる」と指摘。そのうえで「こうした企業行動の結果として、景気回復のペースは緩やかなものとなるが、半面、ストック面での過剰な積み上がりが回避されることを通じて、息の長い回復が続いていくことが期待できる」としている。
先行きの経済に対する下振れのリスク要因としては、1)原油価格の動向、2)米国をはじめとする海外経済の動向――の2点を指摘。「海外経済の想定外の減速など大きな外的ショックが発生した場合、国内民間需要が堅調に推移しているわが国経済も、景気の減速を余儀なくされる可能性がある」としている。
上振れ要因としては「国内民間需要の動向」を上げたうえで、「景気回復が続く中で金利面からの刺激効果は強まる方向にあり、この先、企業が先行きに対して自信を深める場合には、投資行動をより積極化させる可能性があるほか、雇用者所得や配当の増加等を通じて企業から家計への所得波及が強まっていけば、家計の支出行動も積極化し、経済の回復テンポがより強まる」と指摘した。
物価についても「経済活動が物価に与える影響については、近年、その関係が弱まっているが、需給の改善が長く続いていくなかで、インフレ心理が予想以上に高まる可能性がある。そうした場合には、企業がこれまでのコスト上昇分も含めて販売価格に転嫁する動きが強まることも考えられ、物価の先行きに対して上振れ要因となりうる」と指摘。一方で「規制緩和の影響などによって企業間競争が一段と強まる場合には、物価に対する下振れ要因となりうる」としている。
見通しは次の通り(対前年度比)。先行きの金融政策運営は「不変」が前提。
【政策委員の『大勢』の見通し】
実質GDP 国内企業物価指数 コアCPI
【2005年度】 +2.2%〜+2.5% +1.6%〜+1.8% 0.0%〜+0.1%
『中央値』 +2.2% +1.7% +0.1%
【2006年度】 +1.6%〜+2.2% +0.5%〜+0.8% +0.4%〜+0.6%
『中央値』 +1.8% +0.6% +0.5%
【政策委員の『全員』の見通し】
実質GDP 国内企業物価指数 コアCPI
【2005年度】 +2.0%〜+2.7% +1.6%〜+2.0% 0.0%〜+0.1%
【2006年度】 +1.3%〜+2.4% +0.4%〜+1.0% +0.4%〜+0.6%
記事に関する記者への問い合わせ先:
東京 日高正裕 Masahiro Hidaka mhidaka@bloomberg.net
更新日時 : 2005/10/31 16:49 JST
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=axHEqAAGKOjE&refer=jp_news_index