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軍事用語に「糧道を断つ」という言葉がある。敵が食糧を確保するための使っている道を断ち、兵糧攻めをすることである。籠城が長引けば、敵陣地に餓死者まで出てくる。その末に、敵城を陥落させる戦術である。
しかし、いまの日本は、食糧に恵まれ「飽食状態」にありながら、その多くを海外からの輸入に依存し、農業の自給率は、「36%」にまで落ちている。戦後まもなくのころは、「80%」であったので、いまや輸入が途絶える事態にでもなれば、たちまちのうちに、「糧道」が断たれたのと同じような状態に陥る。
油が途絶えることを「油断」と言い、情報が途絶えるのを「情断」と呼ぶ。食糧が途絶えるのであるから、「糧断」というわけである。
アメリカで「BSE(狂牛病)」にかかった牛が発見され、日本政府は、アメリカからの牛肉の輸入を停止した。このため、「牛丼」の材料であるアメリカ産牛肉の在庫が底をつき、「吉野屋」などが、「牛丼」の販売停止に追い込まれた。これは、外食産業が、牛丼の材料をアメリカ一国に依存していたのが、災いしたのである。 この「牛丼」騒ぎにより、アメリカから日本にもたらされている食材が途絶えた場合、途端に「糧道を断たれる状態」に陥ってしまう危険があることを多くの日本人が思い知らされた。
国の安全保障は、軍事のみではない。海外から侵入してくるウィルスに対する防疫も立派な安全保障である。同様に、食糧安全保障も重要である。
だが、これまで日本人は、「糧断」に対してあまりにも無関心だった。「食糧の自給率」が「40%」を割り込んでいることにも鈍感だった。
そればかりではない。「食糧の自給率」がこれほどまでに低下したのかという事の本質に対しても、無関心でいた。
ズバリ、その本質を突けば、日本が「アメリカの穀物戦略」の的にされ、日本人の「胃袋」が、「国際穀物メジャー」に占領された結果であるということに行き着く。
戦後59年の歴史を振り返ってみると、アメリカが、明確な戦略目標を持って日本の台所を中心に食材を送り込み、ついに日本人の胃袋に対する「占領政策」繰り広げ、かつ継続してきたかに気づかされる。
まずは、粉乳である。次いで、「小麦戦略」で迫り、日本人の主食を「コメからパンへ」と転換させた。さらに、アメリカ産の牛肉を食材とする「ハンバーガー」を全国に普及させるため、「マクドナルド社」が日本に上陸する。日本マクドナルド社の藤田田・前社長がその先兵となり、日本人を子どものころから「ハンバーガー」に慣れさせ、「胃袋」を占領したのである。その先端に「吉野屋」などの外食産業の企業によって「牛丼店」が全国に展開された。
このアメリカの対日食糧戦略を遂行してきたのは、世界最大の穀物商社と言われる「カーギル社」をはじめとする穀物商社数社であった。これらの穀物商社は、とうモロコシを生産し、それを牛に食べてさせ、成長した牛の肉を日本に輸出している。日本人の胃袋は、これらの国際穀物メジャーに占領されていると言っても過言ではない。
これらの穀物メジャー間の競争は、1980年代から「種子戦争」に突入し、アメリカなどの農薬会社、医化学会社などとも提携を強め、「ハイブリッド」の種子の開発に取り組み、「特許」まで取得し、さらに世界中の種子を独占する勢いを示している。
国際穀物メジャーは、遺伝子組み換え技術によって「虫も嫌うトウモロコシ」を大量生産し、それを牛の飼料にしており、また、アメリカ政府が最近、「放射線」による殺菌を認める動きを示し、日本国内では、すでに「食の安全性」の観点から危険視する声が上がりつつある。
われわれ日本人は、アメリカで発生した「BSE」問題を契機に、アメリカの国際穀物メジャーに占領された日本人の胃袋の現状を徹底的に解明し、いまや中国に次いで、北朝鮮への進出の準備
にも余念がない国際穀物メジャーの世界戦略の実態に肉薄しつつ、日本の「食糧安全保障」のあり方を提示しなくてはならない。
〔2〕国際穀物メジャー
@米国最大の穀物商社「カーギル社」(本社・ミネソタ州ミネアポリス、未上場)米国の穀物輸出の半分を占める
Aカーギル社の世界戦略は、アジア
B日本は、成熟市場で世界でも有数の安定した消費地
〔3〕国際穀物メジャーの対日穀物戦略の推移
@粉ミルク援助
A昭和30年代より小麦戦略−−−−主食の争奪「コメから小麦へ」=「米食からパン食へ」
学校給食の普及−−−−−子供時代からの胃袋支配
B昭和40年代末より牛肉戦略−−−マクドナルド社の日本進出(日本マクドナルド社の藤田田社長)ハンバーガーの普及−−−子供時代からの胃袋支配
C平成4年以降より中国・北朝鮮に進出−−−−中国・北朝鮮で 飼育・生産する牛肉を日本に輸出
中国・北朝鮮を通じての日本人の胃袋支配へ
〔4〕糧断への警鐘
@米国牛肉の「BSE(狂牛病)」発覚による日本政府の輸入禁止措置−−−→「吉野屋」など外食産業にダメージ
A鳥インフルエンザの猛威−→タイ、ベトナム、中国から日本へ伝染−→養鶏経営者夫妻の自殺
B天候異変によるコメの不作
〔5〕世界的な食糧危機が2010年ごろから始まる
@世界の人口増(56億人−−→60億人へ)
A中国は、2010年ごろに1億トンの食糧不足、2030年ごろ10億人分、約3億トン不足へ
Bアジア全体では、2020年ごろに、約18億人分に当たる5億トン不足へ。
C日本も2010年ごろから、食糧危機に襲われる
【食糧危機の要因】
@緑の革命の失敗−→1950年代から化学肥料・農薬使用の農業 →地力の劣化→農地の減少
A牧草地の減少−−→アマゾンなどの熱帯雨林の開拓と放牧地−− →土地の荒廃
B地球の砂漠化−−→灌漑農業→下流や農地での水の枯渇−−−− →農地の減少
C都市化・開発−−→農地減少
Dオゾン層の破壊−→有害紫外線Bが植物の成長にも悪影響−→食 糧不足−→陸上生物全体の危機
有害紫外線Bが海中プランクトンを減少−→海の植物連鎖破壊−→漁獲料減少E森林破壊−−−−→農業に必要な土の減少−−− −−−−→食糧の減少
F地球の温暖化−−→農作物の収穫に大きな悪影響
G「第2の緑の革命」−→遺伝子組替え技術・クローン技術などのバイオテクノロジーは未だ不安定で安全に食糧増産に不安あり。
〔7〕日本の食糧政策と対策
@農林省の農政−−−−減反政策の失敗−−−農業の株式会社
AJAの国際穀物メジャーへの対抗策
B「地産地消」(福井農協など)
C「食の安全」政策の強化(遺伝子組替え技術への警戒)
D小泉首相による「食育」の提唱
(明治の教育以来の言葉:「5育」=「食育・知育・体育・才育・徳育」)