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http://www.tokyoipo.com/column/m20050629.htm
株式会社リンク・セオリー・ホールディングス 代表取締役社長 佐々木 力氏
5月のある雨の降る日の朝、南青山のリンク・セオリー・ホールディングスを訪問した。
通された社長室のとなりにある応接室は骨董品級のゴルフクラブなどが置かれており、佐々木社長のゴルフ好きは来訪者はお話をお伺いせずとも自然とわかってしまうほどである。東京IPOの編集長として数多くの社長インタビューをしてきたが、ブランド品にほとんど縁のない筆者は少し緊張気味で佐々木社長の登場を待った。
お会いした佐々木社長は少し渋い声で、気さくな感じでインタビューにお答え頂き、私の緊張もしばらくの時間だけで終わって後はいつものように本音の話をお聞きすることが出来た。
まず、佐々木社長について簡単にその略歴をご紹介しておきたい。大学を卒業後、貿易の仕事に就くために名古屋の繊維商社のタキヒョーに入社。2年目の25歳でニューヨーク勤務、3年間の勤務の後に香港に転勤し、OEM製品などの生産管理に携わった後に自らの会社を香港にて設立。その後、総合アパレル大手のワールドから出資を受け同社の香港駐在の取締役を兼務した時期もあった。通算で21年間の海外勤務の後、1998年に帰国し現在の事業の基礎となる会社を立ち上げた。佐々木社長はビジネスキャリアの大半を海外で過ごしたアパレル業界においてはクロスボーダーなビジネスセンスの持ち主だ。 きっと25歳という若さでニューヨーク勤務になったことが、アメリカのコンテンポラリーな感性を理解し、日本の市場に根付かせることができた背景ではないだろうか。
続いて当社の沿革について説明していきたい。当社は設立の翌年の1999年からAndrew Rosen氏が1997年にニューヨークで立ち上げたブランド「theory」の婦人服の輸入販売を開始。2000年には「theory」ブランド婦人服衣料品のライセンス契約を締結し輸入販売からライセンス生産、販売に切り替えた。その後、直営店の経営や「theory」ブランドの紳士衣料品の輸入販売を経て、2003年に米国セオリー社グループを株式会社ファーストリテイリングと共同で買収した。その後、2004年に買収時点の合意に基づき、株式会社ファーストリテイリングの資本出資を受け、同社が保有する米国セオリー社グループ株式を追加取得した結果、米国セオリー社グループの約89%を保有することになった。
当社の扱う婦人服の分野の市場について佐々木社長の話をまとめてみた。日本の市場においては、婦人服のマーケットは低位安定であり決して拡大していく市場ではない。婦人服アパレル産業は勝ち組と負け組がはっきりしてきている。女性にとって衣類とは必需品ではなくむしろ嗜好品であり身近な贅沢品であると分析している。一方で、セオリー社の目指すものは、デザイナーの個性をお客様に押し付けるのではなく、現代社会に生きる女性の個性を生かせることが重要と考えている。顧客層は20〜30才代のキャリア志向の女性でラグジュアリー感を持つ素材そのものがバリューを提供している。筆者もこの週末、東京の丸ビルにある当社のお店を訪れその雰囲気を味わってきた。印象は、「確かに!」の一言だ。佐々木社長のお話をうまくまとめることはできないが、読者の皆さんも一度お店を訪れて欲しい。HPにある佐々木社長の「ご挨拶」に書かれていることに「なるほど、これがコンテンポラリーか」と思うはずである。
さて、続いて、株主価値創造の部分について話を進めていきたい。当社は6月10日に日本国内の直営店について売上推移を発表した。全店ベースでは前年同期比120%超で今期は推移している。確かに足元はしっかりしており、上場承認直後に発表された今期の業績予想の達成は間違いないと見られる。
しかしながら、国内直営店の売上推移の持つ意味はなんだろうか? 筆者はグローバルな市場展開を行う当社においてアナリストなどが望む日本国内直営店のみの前年同期比の数値などあまり意味をもたないと考えている。投資家に安心感を持たせるだけで当社の成長のすべてを語っているとはいえないのでないだろうか。
佐々木社長はグローバルブランドとして成長させるために、米国、日本市場で育ってきたセオリーブランドの成長の為に次は欧州の拠点を充実させていきたいと語る。また、もっとも成長を期待できるのはアジア、その中でも中国はしばらく時間はかかるものの、中期的にはその市場は日米に迫ると考えている。筆者が期待している分野は、グローバルブランドに育った後のブランドライセンスビジネスである。ライセンスビジネスとはセオリーブランドで香水や各種グッズの製造・販売を許可するビジネスである。こちらは製造・販売のリスクはなくライセンス料だけが収入となり非常に粗利の高いビジネスである。
当社のブランドが世に出てからまだ8年目である。佐々木社長は特に競合企業で意識するブランドは無いと言うが、注目するグローバルブランド企業にバッグのCOACHを挙げている。ワンブランドで年商2,800億円まで育ったラルフローレンなどと比較すれば、今期の連結売上350億円はまだまだ発展途上段階といえるだろう。
日本の個人投資家向けには株主優待セールや株主のみのオリジナル商品なども株主優待制度の一環として検討したいそうだ。女性の株主を増やす意味でも今後の成長に合わせて
株式分割などで手ごろな株価水準を意識していただきたいものである。
リンク・セオリー・ホールディングスホームページ: http://www.link-theory.com/
東京IPO編集長 西堀敬 column@tokyoipo.com
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