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石油の異常高騰が生産に打撃
山口県各漁協の油代調査
県漁連のピンハネも加算 2005年10月15日付
http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/sekiyunoijyoukoutougaseisannnidageki.htm
魚価が低迷する夏場をとおり過ぎ、稼ぎどきの年末を控えて浜の漁業者には気合いがみなぎる。だが、近年稀にみる油代の高騰に直面して、生産意欲にも否応なしにブレーキがかかっている。今年に入って何度値上げがあったことだろうか。漁協から値上げの「お知らせ」が配られるたびに、大きなため息が漏れる。魚価安も相変わらずで、スラ(空振り)だった場合のリスクが大きいので出漁控えも深刻なものになっている。原油の国際価格が乱暴な高騰を見せているのがもっとも大きな原因だ。加えて漁業者が頭にきているのは、ほうっておいても高いなかで、山口県漁連やほとんどの漁協が公表できないほど手数料をぬいており、民間石油会社よりも他県の漁業者よりも高額の油を購入させられているという事情がある。生産活動の「生命線」を握っている油だけに、うなぎ登りするほど生産者には致命的な痛手になっている。本紙は昨年にひきつづいて、各海域の油代の聞きとり調査をおこなった。
沖に出られぬ漁民
「漁業者にとって油は血液みたいなもの。高すぎると貧血状態になってしまう」と角島のベテラン漁師はたとえた。山口県でも有数の漁業地帯である角島では、季節ごとにイカ釣り漁、潜り、棒受け網漁などさまざまな漁種をおこなう。働き盛りの若手漁業者に聞くと、年間200万〜300万円は油代で経費がかかるといった。
主力のイカ釣りでも、20マイルほど沖合の漁場まで走る。好漁場で操業するためには人よりも早く到着したいのが心境。だが、エンジンをフル回転させたら、それだけ油をたくことになるので、早めに出港して減速してむかったりもしている。
漁協関係者の一人は「どうにかならないものかね……」と弱りきった表情を見せる。例年なら、この時期は棒受け網漁の最盛期で、萩市・見島の沖合までウルメイワシをとりに行く人もいる。ところが40〜50マイル走ると油代は5万〜6万円はかかる。
当たりと外れがハッキリしている棒受け網漁は、とれれば30万とか40万〜50万円の水揚げにもつながる。空振りだったら油代と疲労だけがかぶさる。そのリスクを換算して、今年は近海でカタクチイワシをとる人がふえる傾向なのだと説明する。水揚げは4万〜5万円程度なので10倍もの差になる。イカ釣りにしても同様で、「弊害が大きすぎる」と語るのだった。
下関市伊崎町の漁業者が利用した近年の油代の価格推移を見てみると、値上がり幅はすさまじいことがわかる。1998〜2002年は43〜47円台を安定して推移していた。それが03年に50円台に突入し、とりわけ昨年半ばから急騰している。価格差はあるものの、どこの浜でもほぼ同様の推移だ。
漁連と漁協の手数料で異なる油代
山口県下の漁業者が使用する油は、地域によって価格が異なる【図参照】。この油代には生産保護のために免税措置があって、軽油税32円10銭は引かれる。A重油にしてもしかり。ところが、信漁連の欠損金穴埋めに必死な山口県漁連が法外な手数料をかけ、各漁協も運営費をまかなうために手数料を上乗せする。民間石油会社の利益分もふくめると、手数料の三重どりとなって高額になるシカケがある。「イラク情勢」だけではない。
漁連経由の浜は軽油が67〜70円前後が主流なのにたいして、民間と直接取引する浜の油代は5円程度安い。A重油が安いことで有名な浜でも、漁連をとおさずに石油会社との直接取引で57円と、よそより5円程度安い。生産者のために安さを追求する漁協の努力にほかならないが、上部団体にマージンを納めないといって悪者あつかいもされ、圧力覚悟の行動になる。
昨年、法外な油代負担にがまんならない漁業者らが各地でスタンドと個人的契約を結びはじめ、飛び上がった漁連が事態収拾でしめつけを強めた。山口県の各海域のスタンドにたいしては、「漁業者が使用する油については県漁連を経由するように」のおふれが申し伝えられたと業者はいう。“自由市場経済”などというが、実質は統制経済なのだった。
周防大島町の旧東和町漁協では、今年3月から漁協をつうじての取引が義務付けられた。9月時点で76円/gだった軽油は、10月から2円値上がりして78円/gになった。消費税が加算されると82円/gにもなる。一方、同じ部落の農協に行くと、74円/gで販売しているので、半農半漁の人人は、車にポリタンクを2つ3つ積みこんで購入する人までいる。どれだけの手数料を漁協がぬいているのかは漁業者にも絶対機密事項で公表されない。
異常さ際立つ祝島漁協
異常さが際立っているのが山戸貞夫組合長の祝島漁協。昨年から今年にかけてどの浜でも10〜17円もの値上げ幅を見せていたなかで、4円しか値上げしなかったのは、昨年来の油代騒動に若干遠慮した形にもなった。だが依然として県下でもダントツの高値で、もともとの販売価格が高すぎること、法外な手数料を漁協が巻きあげている構造を示した。
九月末、祝島では『漁協だより』が配られた。10月3日からの燃油の値上げを通知するもので、「イラク戦争の泥沼化とアメリカのハリケーンによる石油施設の被害などの影響で、さらに仕入れ価格が値上がりしています」「仕入れ値の値上げ分を原則に、値上げに踏み切らざるをえなくなりました」というものだった。A重油は据え置きで75円、軽油は3円値上げして79円となり、灯油は一缶が1650円になった。それに消費税が加算される。全県の漁協関係者に伝えると「とりすぎだろ!」とみんなぶったまげている。
数年まえに県が3000万円、地元が800万円を負担して、重油と軽油の備蓄タンクをつくった祝島であるが、漁連あつかいに切りかえただけでなく、なお高利貸のごとく島民からピンハネしていることが浮き彫りになっている。
去年の秋には水揚げ賦金も10%に上がった。漁協の共同出荷に出したら、市場の手数料として6%、出荷費用などに10%とられ、合計すると26%が水揚げから引かれる。漁業者がとってきた一本釣りのアジは`160円、チダイも`160円にしかならず、目と鼻の先の大分県・姫島であつかわれるスズキが`3000円といわれるのに、祝島では`260円なのだと漁業者はいう。コウイカを漁協におさめたら`180〜200円で買いとられるのに、婦人部に1000円で売りつけているという指摘もある。
それほどの巻きあげをやっているのに近年では急に赤字経営に転落。山戸組合長の給料はそれでも毎月30万円と、組合長のなかでもトップクラス。原発に反対するのは漁業を振興するためだと思っていたら、一番漁業を圧迫しているのである。基幹産業である漁業に依存した島民の暮らしへの弊害は大きく、原発問題が浮上した23年まえの人口は1333人いたのが、10年まえには870人になり、現在587人にまでへったこととけっして無縁ではないと見られている。漁業ができなくなることは、原発に抵抗する要素をそぐことにつながる。
「協同組合にいて、なぜわざわざ高い油を買わないといけないのか」。がまんならない思いが沿岸に充満しており、各海域で異なる手数料の利率・価格について「明らかにせよ」の声は強まっている。とりわけ「殿様商売」の漁連にきびしい目がむけられている。
県漁連が年間4000万円(実際にはそれどころでないと指摘される)の利益を信漁連再建費用として流してきたことがいわれているが、油や漁業資材購入にかかるかくれた負担で、これまでも巻きあげてきた。合併による年間1万5000円の負担金なんて、これまでにしぼられた総額に比べたら愛嬌程度なのだ。
8月に合併して発足した山口県漁協では、旧漁協の最終決算がまとまり、マンモス漁協ほど赤字を噴出する傾向を見せた。今後の計画では4月に信漁連・県漁連と包括承継して巨額の欠損金が持ちこまれ、年間3億数千万円ずつ利益を上げて消していくことになる。ピンハネ構図はよけいにでも拍車がかかるとみられている。
米国の投機に最大要因
しかし、なによりも石油高騰の根源であり、漁連などとは比較にならないほどの「寄生虫」はアメリカ金融資本が牛耳る石油支配であり、市場原理による略奪的な先物取引の激化だ。
13日早朝、ニューヨーク市場の原油相場は1バレル当り1j70kも上昇して64jの値をつけた。県内の石油卸売会社の幹部の一人は、「この1、2週間は61〜62j台で推移していたのに。想像をこえる動きになっている。今年に入ってとくに乱高下が激しい」という。数年まえまでは1バレル数十kで動くのが常識だった。それが昨今は一朝夜にしてj単位の動きを見せる。先日もいっきに4j上がったことがあった。
「仕入れ価格に響くから毎日ニューヨーク原油の動きを見ている。アメリカの専門家などは70jまで上昇するのは当然という見方をしている。なかには100jまでいくという者までいる。テレビにむかって“バカ野郎”と叫んでしまう」という。
日本に輸入される原油は中東に大部分が依存しているが、ニューヨーク原油の動向に縛られて中東原油の価格が動き、国内市場が乱高下する性質をもっている。「生命線を握っているのはアメリカですよ」と仕組みを語った。
原油相場は連日のニュースで「過去最高を更新」と連呼。実需を無視したヘッジファンドを中心とする機関投資家の資金が流入し、投機的な先物取引・利ざや稼ぎがエスカレートして高騰をひき起こしている。「割安な現物を在庫に回し割高な先物で売り注文を出しておけば、価格差分の利益が得られる」からだ。この連中が、世界中から油代の値上げでしぼりとっているのだ。
漁業とのからみでは、全漁連は昭和末期まで国内石油会社に供給を依存していた。それが直接に海外から製品輸入をするように備蓄基地も建設し、独自の調達をはじめた経緯がある。しかし原油を輸入して国内で精製するメーカーに比べて、精製施設がなく軽油、ガソリン、重油などの製品輸入に頼る全漁連は、直接国際価格の影響を被る。それが最近のような乱暴な国際価格に振り回されて、メーカーよりも高い油になる由縁ともいわれる。
狂暴な市場原理がますますのさばり、流通も大激変していくさなか、山口県では漁業協同組合を解体した。束になってこそわが身と仲間の身を守り、漁村を守ってきた協同組合であるが、一人一人の零細な生産者がバラバラなことほど無力なものはなく、ますますその機能の本来はたすべき役割が求められている。油代一つとっても組合の結束が強い漁協ほど安く、「高利貸」のようなやり口に身体をはっているのが特徴になっている。
なお、国は国家備蓄をたくわえている。国内生産活動の危機的な状況にたいして、少しでも安い油を提供するのが役割であり、無政府的な高騰の野放しは許されない。価格上昇はまだまだつづくとみられている。ガソリンは130円台に突入したなかで、ガソリン税はそのうち53円。漁業にかぎらず、燃料税・消費税を下げるなり、生産保護・国民生活保護で動かないことの異常さこそ際立っている。
http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/sekiyunoijyoukoutougaseisannnidageki.htm