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転載 「グリーンスパンの十八年間とは何だったのか」
http://www.asyura2.com/0510/dispute22/msg/679.html
投稿者 ジャン 日時 2006 年 1 月 29 日 17:50:39: tV9DFzLB7Zpg6
 

経済オンチなので、よくは分からないが、ワーカーズより転載しておく。
引用元 http://www.workers-2001.org/w312.html#w312n


グリーンスパンの十八年間とは何だったのか

十三回目の利上げ

 二00五年一二月一三日、米連銀理事会は、予想されたように一三回目の連続利上げを実施した。これによって、昨年六月に始まった連続利上げで米国の基準金利は、一%から四・二五%にまで引き上げられ、日米両国間の金利差は、基準金利で四・一四%という驚くべき大きさとはなった。そもそもデフレは、世界的な規模で、大量の余裕資金を不断に発生させる。現在の世界不況下において、世界各国で同様に大量の余裕資金が発生し続けているのである。
 世界各国の金融市場では、この巨額の余裕資金を吸収して有利に運用できないため、世界で唯一、いかに巨額の短期資金でも長期資金でも吸収する力を持つ金融センターであるニューヨークに向かって世界中の余裕資金が移動し続けるしかない。これがアメリカの「双子の赤字」の存在を、根本から否定するようなドル買いの大量発生なの原因なのである。
 単純化すれば、世界経済の中で日米両国の経済規模は合計して世界全体の四四%を占める。しかし、両国間の金利差により、日本の資金は、自然にアメリカに流れざるを得ないようになっている。したがって日本の個人金融資産が現在の超低金利を嫌って有利な運用の機会を求めて米国に移動するのは、極めて自然な現象と理解しなければならない。それゆえ円売りドル買いは構造的な資金の移動を反映した為替市場の現象なのである。
 先週一時的に円買いドル売りが出来して一ドル一一五円台の円高とはなったが、この円高は、極めて短期間の一時的な現象と判断しておくべきであろう。端的に言えば、このようにして、一九九0年代、つまり民主党のクリントン政権は、四千億ドルの財政赤字を、八年間に逆に五千億ドルの黒字に転換した。この八年間に実に合計九千億ドルの財政改善を成し遂げたのである。

グリーンスパンの手法

 二00六年一月三一日、米連邦準備制度理事会(FRB)議長グリーンスパンは退任する。一九八八年以来、彼が在任した一八年間は、まさにアメリカ経済の歴史そのものであった。グリーンスパンの手法とは金融政策、つまり低金利高金利を政策的に細かく運用することにあった。そして現実にその金融政策を巧みに使いこなしてクリントン政権末期の不況から脱却させ米経済を繁栄に導いた。グリーンスパンの得意とした金融政策は、日本を始めとした国際資金を金利差を利用して、米国の繁栄を追求する戦略である。
 この得意の金融政策に一層磨きがかかったのは日本のバブル経済の崩壊を彼が研究したことによると噂されていた。0四年二月から三月にかけては、円高ドル安の真っ只中であった。そのため日本政府・日銀は円売り・ドル買い介入を繰り返し膨大な金額で相場を買い支えていた。その半年前頃からグリーンスパンがアメリカに住宅ブームを起こして世帯の資産増とその消費波及効果を狙っていたため、アメリカの不動産市場に大きな影響を与える金融政策をとっている。すなわち0三年末まで急激な利下げ政策をグリーンスパンは採り続け、FF金利(実効金利目標)をなんと一%まで下げた。この一%という数値は、インフレ率を考慮すると、日本が現在も取っているゼロ金利に相当するマイナス金利である。
 このグリーンスパンのマイナス金利政策は、消費市場の拡大に力を与え住宅と車の販売が急速に伸び続けていった。余剰資金は低い金利から高い金利の通貨へ移動するのが経済原則だから、このリスクはアメリカからの資金逃避である。したがって、アメリカから資金が逃避するとなるとアメリカ経済を支える株や不動産価格が下がり、アメリカは不況に陥る危険がある。それゆえグリーンスパンは、低金利下にありながら資金をアメリカへ惹き付ける戦略を考えたのである。
 彼は大量資金保有国である日本を目標に定めた。そのため、グリーンスパンは、G7等の国際的発言の機会を利用して、世界の主要国が「市場原理に従って行動する」ことをしきりに訴えた。つまり、為替介入はすべきでないとも受け取れかねない発言であったが、結果は、アメリカの低金利政策による日米金利差縮小から、国際資金がドルから円へシフトし急激な円高・ドル安相場となった。しかし二00四年三月まで大量の資金を使って為替介入を続けていた日本政府・日銀を非難することをグリーンスパンは、一切無かったのである。
 この結果、0三年から0四年三月まで、日本政府・日銀は、約三四兆円の為替介入を行い、政府はドル買いで得たドルで米国債を買い続けた。アメリカは低金利政策により住宅産業を伸ばすことで消費を増大させる一方、日本の膨大な介入資金を米国債に誘導し、アメリカから逃避する資金を防衛したばかりか、国内住宅ローン資金補給に活用してしまった。こうしてグリーンスパンは、クリントン政権末期の不況の危機を見事に脱し、NYダウを七千七百ドルから一万七百ドル台まで上がるほどの好況へ導いたのである。

一転高金利に切り替えたグリーンスパン

 このように、0四年まで、アメリカの消費は順調に伸び、雇用増大も続き、さらに新築住宅数は年間二百万戸を超えて、アメリカに活況感に満ちるとグリーンスパンは一転してインフレを警戒し始めた。0四年初頭からグリーンスパンは、何もしないままでは必ず来年はインフレになると判断した。このグリーンスパンの危機感は、日本の為替介入を明確に批判する行動を取ることになる。
 このことは日本政府・日銀が、会合直後一兆円の逆介入(ドルが上がっているのにドル買い実施)をした時点で、グリーンスパンが日銀の介入を激しく非難することによって説明できた。それ以後、従順な日本政府・日銀はいかなる円高に際しても為替介入をしてはいない。
 グリーンスパンの言葉は両義的である。0四年三月までのグリーンスパンの「市場に従え」は、実は「円高・ドル安期待」であり、三月以降の「市場に従え」は、日本に対する「介入するな」との政治的メッセージだった。そして六月になると、NYダウは一万一円五百ドルの水準まで高騰して、いよいよインフレの危機は迫ってきた。ここにおいて、グリーンスパンはインフレ抑制のための利上げ政策に転換したのである。
 六月から隔月の小刻みで実に0・二五%ずつFF金利を上げ続けた結果、日米金利差拡大から、為替相場はドル高・円安が基調になり、0四年までの政府介入資金をはるかに上回る資金が0五年にかけて、日本の民間金融機関や個人投資家から米債や米国住宅抵当債券を求めてアメリカへ移動した。しかし、このインフレ阻止のための断続的利上げにより、米債券市場への過剰な資金流入は、インフレとはならなかった。グリーンスパンといえども金融操作が可能なのは短期金利だけだ。グリーンスパン自身この事を謎とした。このように長期金利は市場のように人知を越えた世界なのである。
 幸いなことに、この膨大な資金が米長期金利を利上げ開始当時(0四年六月)より低い水準に抑える働きをしたから、短期高金利政策下の長期金利安となり、米住宅ブームは続行し、消費を支え続けたのであった。まさにグリーンスパンは引退の花道を驀進中だ。
 こうして今に至るまで、米経済はインフレを抑えながら繁栄を継続しているのである。

バーナンキの登場と戦略転換

 グリーンスパンは0六年一月末の退任前に、国際的過剰資金に依拠したアメリカ経済を立て直し、その自立力を強化しようと画策している。ブッシュ政権はグリーンスパンの意向を受けて「雇用促進法」(約八千億ドルの米企業海外所得を、0五年末までに、米国に送金し雇用促進のための設備投資に投下することを条件にして、本来三五%の事業税を五・二五%に減免する)を立法化した。これは、海外のアメリカの自己資金の帰還を促進させることにより、利上げ政策終焉後、アメリカから国際資金が流出するのを防衛しながら、設備投資増と雇用増大により一層の経済成長を狙おうとする戦略である。もちろんこれは希望的観測だ。
 このように0六年初旬でアメリカの利上げ政策は終わると予想されている。そして、日銀の量的緩和政策も解除に向かうと予想されている。量的緩和政策の終了を巡る日本政府と日銀との闘いも実に熾烈を極めていると伝えられている。かくして、日米金利差が一段と縮小するから、現在の為替相場は、逆転して円高・ドル安が基調になるであろう。
 ドル安による米製品の国際競争力の増大で、住宅ブーム減速による国内消費の減少を補おうというのがインフレ・ターゲット論者のバーナンキの戦略である。
 0五年一一月一六日、バーナンキ次期連邦準備制度理事会(FRB)議長は、米議会で「アメリカのドル資産状況は公私を問わず全海外投資家にとって好ましい状況にある」と証言した。この発言はグリーンスパン現議長が「謎」と言った「高金利政策下の長期金利安」の継続への期待をバーナンキ自身が表明したことを意味する。つまり彼自身も世界の機関投資家達等に一層の米国債投資を期待しているのである。
 しかし、バーナンキ自身も日本の三0年代とバブル経済破綻の研究者として知られている。歴史的にも連邦準備制度理事会(FRB)議長の人気が切り替わる時、何かが起きることが知られている。税務・財政の専門家ハバートが次期議長になる競争で敗退したことからも知られるように、アメリカ政府自身が、公式見解である希望的観測とは別のシナリオを持っていることは、今回の人事で明確になっているのである。
 アメリカはドルの覇権が揺らぐこと、もしくはドル暴落が始まること阻止しようと必至だ。わが日本はアメリカの衰退が始まろうという中で、脳天気にも、靖国参拝問題で周辺諸国との関係悪化を拡大していく一方で、何の反省もしていないかである。
 一時代の区切りが画せそうな時代が始まろうとしている。時代を切り開けるのは労働者階級だけである。ともに闘っていこうではないか。 (直記彬)

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