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こんなん見つけました。
小泉・竹中コンビの金融政策が「大きな政府」に行き着く皮肉
http://www014.upp.so-net.ne.jp/tor-ks/jap/jap13.htm
金融庁官僚と竹中支持派が繰り広げる金融行政めぐる諍いと混乱
(インターナショナル第137号:2003年7月号掲載)
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▼小泉、竹中の支離滅裂
5月17日夜、初めての金融危機対応会議が首相官邸で開かれ、日本で5番目の規模をもつ大手銀行「りそなホールディングス(HD)」に2兆円規模の公的資金を投入し、「特別支援行」とする決定を行った。
金融危機対応会議は、預金保険法102条にもとづいて「金融システムの信用秩序に極めて重大な支障が生じる恐れがあると認められたとき」に議長である首相が招集し、官房長官、金融相、金融庁長官、財務相、日銀総裁の6人で構成される。これは99年に合計8兆6千億円もの公的資金を銀行につぎ込んだ「金融早期健全化法」が01年3月に期限切れになったとき、預金流出や連鎖破綻など「まさかの時の例外的措置」として導入したシステムだと説明されてきた。
こうした会議の趣旨を考えれば、りそなへの公的資金投入の決定は、大手銀行のひとつを事実上「一時国有化」する必要がある「金融危機の恐れ」を政府が認めたことを意味しており、決算期が近づくたびに囁かれてきた銀行の「3月危機」が、8千円台に低迷する株価の影響もあってついに現実となったと受け取られて当然だろう。
ところが政府・金融庁は、「金融危機を起こさせないための措置です。破綻じゃないんです。未然に(危機を)防止するための措置です」(小泉首相)とか「公的資金投入は危機ではない。再生なんです。破綻じゃない」(竹中金融相)などと、未然に防ぐ必要のある危機だったことを認めながら危機を否定する支離滅裂な説明に終始し、さらには昨年暮れに竹中が中心になってまとめた「金融再生プログラム」に盛り込んだ「資産査定の厳格化」がりそなHDの自己資本の劣化を燻り出し、危機を未然に防ぐ対応がとれたのだから「構造改革の成果だ」とまで強弁する始末である。これに対して「実権派」(いわゆる抵抗勢力)は、当然のようにこれを金融失政として小泉批判を強めている。
与党・自民党内の相反する評価は、もちろんポスト小泉をめぐる党内抗争を背景にした総裁選への思惑の反映である。だが政局がらみの恣意的な発言は、「りそな国有化」の意味をあやふやにして評価の混乱を助長し、日本経済と金融行政が抱える問題を覆い隠すことにしかならないだろう。
ではいったいりそなHDの事実上の国有化という事態は日本経済のどんな病巣を明らかにし、小泉・竹中コンビの経済政策の何を暴いたのだろうか。
▼竹中の無謀、新自由主義のドグマ
りそなHDが「国有化」されたのは、自己資本比率が2%台に低下し、銀行の健全性を示すと言われるBIS(国際決済銀行)規制4%を確保できなくなったからだが、それは前述した「金融再生プラン」に盛り込まれた資産査定の厳格化の圧力を受けて、監査法人が繰延税金資産を大幅に減額するよう強く主張した結果だった。これが、「改革派」が竹中改革の成果を強調する根拠である。
だがこれを「成果」と主張するなら、政府と金融庁がりそなHDの危機的な財務状況を事前に把握し、その事実が与える経済的社会的影響を考慮した「備え」を整えていなければならなかったはずである。金融再生プランに資産評価の厳格化が盛り込まれたことを受けて、金融庁が銀行に対する特別検査を実施したのは、この「備え」をするためだったはずではなかったのか。
ところが安全保障問題では「備え」の重要さを繰り返し強調する小泉が、いざ公的資金の投入を決め、りそなを国家管理下に置くために政府が新しい経営者を事実上任命しなければならなくなった時、政府・金融庁の側には何の準備もできていなかったことが暴露されるのである。
JR東日本副社長の細谷が新生りそなの新会長に内定したのは、りそなが公的資金投入を正式に申請する5月30日になってからだったし、金融庁が細谷に打診したのはわずか3日前の27日という慌ただしさだった。新会長の人選さえこうなのだから、お目付役となる6人の社外取締役の「任命」はさらに急ごしらえだったのも当然である。
国民経済に重大な影響を及ぼす政策担当者=金融相が、危機の可能性を予測せずに、あるいは最悪のシナリオに対する十全な備えもなく「痛みの伴う改革」を推進するのは、新自由主義経済学のいう「創造的破壊」というよりは「破壊的破壊」とでも呼ぶべき無謀と言うほかはない。それは大学の講義では通用する無責任だとしても、現実の社会では失政と非難されて当然だ。
実際に竹中は、監査法人が資産査定を厳格化した場合の金融危機の可能性を事前に把握することさえ、自ら拒絶してきたと言っても過言ではない。それを象徴するのが、りそなへの公的資金投入を決めた金融危機対応会議の直前、5月12日に開かれた金融相(竹中)直属の金融作業部会である。
奥山・日本公認会計士協会長は、この会議で「銀行監査の方針について相談したい」気持ちを滲ませる発言を繰り返したという。だがこれに対して竹中は「いまは事前相談はしません。すべて事後チェックだ」と突っぱねたというのである(朝日新聞:5/18)。「痛み」つまり民衆の犠牲をいとわず政策を遂行しようとするなら、それ相応の覚悟と準備は不可欠である。少なくとも竹中は奥山の報告に耳を傾けた上で「政府として万全の対策を講じるので、貴方は自らの職責を全とうしてください」と応ずるのが責任ある態度だろうし、その後は直ちに「りそな危機」のシュミレーションを行い対応策の準備を指示するのが職務上の責務というものだ。
新自由主義経済学の信奉者を自認する竹中にすれば、市場原理に全てを委ねグローバルスタンダードに則った会計と監査を厳格に実施することが金融改革だというドグマに忠実だったのか、あるいは後述する金融庁官僚との抗争や談合政治への批判を強く意識していたのかも知れない。
だが実物経済に重大な影響が出るであろう政策を推進しながら、それに危機感を深める現場(=監査法人)の評価や困惑に耳を傾けようとしないなら、危機に対応する準備は不可能である。竹中の対応は、現実を正確に掌握するために必要な対話と官僚的談合行政を主観的に混同し、子どもじみた堅くなさを貫いただけである。だがその陰では、経営破綻の引き金役を〃丸投げ〃された朝日監査法人のりそな担当の会計士が、37歳の若さで自殺するという悲劇(週刊エコノミスト:5/27)が起きて、朝日監査法人はりそな監査を辞退するに至っていた。
こうして政府・金融庁は「りそな危機」に不意を打たれ、「例外的措置」を発動するはめに追い込まれたのだ。
▼金融庁と金融相の確執
では竹中の失政を非難する「実権派」、正確には「実権派を頼みとする国家官僚たち」は、こうした危機にどう対応しようとしたのだろうか。実はこちらも、背筋が寒くなるほどお粗末な対応に終始していた。
それは6月4日、衆院財務金融委員会で民主党の仙谷議員が内部告発で入手したという金融庁とりそな銀行の会合の内容を記した文書(5月10日付け)を提示し、金融庁が新日本監査法人の繰延税金資産の査定に不満を表明、監査法人を説得するようにりそな側に「命じた」のではないかと追求したことで露呈することになる。査定に手心を加えるよう監査法人に圧力をかけたのではないか、との疑惑が浮上したのである。
金融庁は10日の会合は認めたが内容については頑なに説明を拒み、竹中もまた金融担当大臣として「詠み人知らず」の文書だと追求をかわそうとした。だが6月10日になってりそな側は、「金融庁から受けた説明を当方でまとめた」と金融庁との「面談メモ」の作成をあっさりと認め、金融庁の担当課長が新日本監査法人の査定に対して「理論的ではないと思う」と批判したことが事実として確認されることになる。少なくとも金融庁は、自己資本比率が2%台に転落するような新日本監査法人の査定に不満をもち、これを変更させようと画策した可能性は否定できないことが明らかになった。
つまり金融庁の官僚たちは竹中の「査定の厳格化」方針に隠然と抵抗し、灰色債権と呼ばれるボーダーライン上の不良債権は、取引先企業の再生を後押しする「地域貢献」とのバランスを考慮しつつ処理する路線に固執しつづけていたのだ。それは自らが策定した地方銀行の「集中改善期間」の破産を隠蔽し、債務超過の疑いさえあるりそなHDの財務状況を「健全だ」と言い繕おうとしていたと疑わせるに十分である。
95年にニューヨーク支店で発覚した巨額損失隠匿事件をきっかけにして海外事業から撤退し、その後「スーパー・リージョナル・バンク」(大型地域金融機関)へと転換した旧大和銀行を母体とするりそなHDの債権の約7割が、関西を中心とする中小企業向け債権であることも、中小企業の支援と地域経済の活性化を大義名分にして「りそな防衛」を正当化したい金融庁官僚にとっては格好の材料であった。だが「不良債権処理の促進」と「地域貢献」という相反する目標を掲げた地方銀行の「集中改善期間」は、01年8月に金融庁が発表した楽観的な予測にもとづいて策定されたものであり、その予測はすでに事実によって裏切られている。
当時の金融庁の予測では、01年から03年の不良債権処理損は年間3兆円前後で、03年から07年にはさらに年6千億から1兆円程度に抑えることができると考えられていた。だが現実の01年度の処理損は8兆円にまで膨れ上がり、その後の内閣改造で柳沢金融相が更迭される伏線ともなったのである。
不良債権処理の過程で地方銀行などの地域金融業界の恣意的な再編成を意図し、その目的のためには経営不振に陥った地銀の資産査定を甘くして危機的事態を過小評価してきた金融行政のツケと言ってしまえばそれまでだが、膨張しつづける不良債権という厳しい現実にさえ背を向けて体面を取り繕おうとする金融庁官僚の対応は、竹中に勝るとも劣らぬ無責任ぶりである。
▼改革の混乱が招き寄せた危機
りそなの「国有化」によって図らずも暴かれることになった金融担当相・竹中と金融庁官僚の根深い対立は、実は小泉の構造改革路線が当初から抱えてきた欠陥、すなわち「総合戦略なき総花的改革」がもたらす混乱を浮き彫りにするものである。
例えば竹中の金融改革プランは、りそな国有化の引き金にもなった繰延税金資産の急増が、実は不良債権処理の加速を銀行に迫った結果もたらされたことを認識して策定されたとはとうてい考えられない。
というのも貸倒引当金の無税化を考慮するでもなく、自己資本にカウントされるので資本増強にも有効な一般引当金ではなく、特定の債権に〃有税の〃引当金を積み増しさせれば、税金の割り戻しを想定した繰延税金資産が膨張するのは当然だったからだ。しかも繰延税金資産は将来の企業収益力に大きく左右される資産だが、将来の収益力を客観的に判断するのは事実上不可能なので、直近の過去の実績にもとづいて将来の収益力を予測・算定する以外にない。ところが深刻化する不況が企業収益の実績を一段と落ち込ませ、その分だけ将来の収益予測も悪化し、繰延税金資産の回収可能性も数値的には低下せざるを得ない悪循環が起きているのだ。
この悪循環は、10年に及ぶデフレ・スパイラルで消耗した金融資本が新たに直面する大問題であり、りそなをめぐる繰延税金資産の評価の問題は単なる決算と財務諸表の信頼性の問題ではなく、歯止めなき資産デフレという日本経済の病巣を象徴している。
ところが竹中は、繰延税金資産が将来の収益力に左右されるリスクの高い不安定な資産であることだけを問題視し、その不安定さを一掃しようと資産査定の厳格化という「個別改革」を推進はするが、その結果生じる企業収益悪化の悪循環といったマクロの総合的対応は文字通り市場原理に委ねて顧みないのである。そして片や金融庁の対処方針は、相も変わらず利害調整を優先して危機を隠蔽して先送りするだけである。
こうした総合戦略なき金融改革が引き起こす混乱は、口舌の徒・竹中の個人的資質もさることながら、小泉の「構造改革」自身が総合戦略をもたないことに本質的要因がある。それはひとつの課題をめぐる相対立する対応策を統合・統制できない小泉政権の実情であり、「りそな危機」は「金融改革」をめぐって対立する「無責任な改革派」と「旧態依然の国家官僚」が互いの足を引っ張り合い、日本長期信用銀行の破綻(98年10月)以来沈静化していた「大手銀行破綻の危機」を招き寄せた事態と言って過言ではない。
▼「大きな政府」に向かう小泉改革
みずほ、UFJ、三井住友、東京三菱など再編後の大手銀行が海外業務に必要なBIS規制=自己資本比率8%を維持したのに対し、りそなHDの母体となった旧大和銀行は、国内業務に限定される自己資本比率4%を選択し、以降は関西を中心に経営不振の地方銀行(地銀)を次々と吸収・合併して規模の拡大をはかり、ついには自分よりも規模の大きな旧あさひ銀行を飲み込み(子会社化)、経営不振にあえぐ地方銀行再編の「受け皿」として脚光を浴びてきた。
だがりそなの急成長の背景には、経営不信の地銀を相次いでりそなに吸収・合併させ、それによって恣意的な地方金融業界の再編をすすめたい金融庁の隠然たる支援があったのは疑いない。「国有化」によって退任に追い込まれたりそなHD社長・勝田の政治的手腕とは、金融庁の意向を汲んで過大な合併や経営統合をすすめることだったのだ。
国家官僚機構によるかかる方策が危機の隠蔽と先送りにしかならないとすれば、竹中の不良債権処理の加速と厳格化は、一体どこに行き着くのだろうか。
皮肉なことに竹中の金融改革は、小泉改革が掲げた「小さな政府」の看板に反して、大手銀行国有化による「大きな政府」を実現することになりかねない。日本で5番目の規模をもつりそなHDを破綻処理できなかった以上、それ以上の規模をもつ4大メガバンクが破綻処理される可能性はほぼ無くなった。結局竹中は「大きすぎて潰せない」銀行を延命させるために、小出しにだが巨額の公的資金を次々と投じ、国家財政で金融資本を下支えするはめに追い込まれるだろう。
もっとも大手銀行を破綻させない「金融改革」なら、手法は違っても、政府金融による民間金融の支援という金融庁官僚の思惑と変わらない。竹中の新自由主義的改革は、「実権派」が立脚する日本的保守基盤に足を取られ、「破壊的破壊」の混乱を撒き散らすだけに終わる様相を呈してきた。
(7/29:さとう・ひでみ)
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