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健康帝国ナチス(煙草の議論は本筋からはなれるのだが・・・)
http://www.asyura2.com/0510/dispute22/msg/153.html
投稿者 へなちょこ 日時 2005 年 10 月 12 日 05:34:32: Ll6.QZOjNOr.w
 

(回答先: 146年前の一大健康ブーム 投稿者 kokopon 日時 2005 年 10 月 11 日 20:10:34)

http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/kenkou/plus/364750 のキャッシュ

 人類の宿敵“がん”を撲滅するため、世界各国はいま対策に追われている。有害化学物質の使用を禁じ、排気ガスを規制、身のまわりからもタバコや食品添加物を排除しようとやっきになっている。ところが、既に70年前にそれを実行し、国をあげて熱烈にがん撲滅に取り組んでいた国がある。ナチス・ドイツだ。

 驚くべきことに当時のドイツでは、既にがんの原因として放射性物質、タール煤煙、アスベスト、アニリン染料などを突き止めていた。タバコが肺がんの主因であることを世界で初めて証明したのも、ドイツの疫学者たちだ。

 世界有数の合成染料生産国だったため、アニリン染料による膀胱がんが多発し、タールやアスベスト、ラジウムを扱う職場でもがんが増えていたので、既にがんは職業病だとの認識もあった。

 世界に先駆けて国立の「がん研究・がん撲滅中央委員会」ができたのはナチス政権樹立の前だが、国の重要な産業を脅かすがんは、「健康は義務である」を国家スローガンにし、優秀なゲルマン民族の繁栄を願ったナチス政府にとっても「国家最大の敵」だった。従って、ナチス政府のがん撲滅運動は徹底しており、1930年代には早くも各地で集団検診を実施して、早期発見の大キャンペーンを行っている。特に優秀な子孫を産むべき女性の検診には力を入れ、がんの精密検診を受ける女性は年間何十万人にも上った。

 また肺がんの原因とみなされたタバコについては、世界で類をみないタバコ撲滅運動を展開し、反アルコール、食生活改善の運動も国が音頭をとった。ナチス党員のパン屋は全粒パンを焼くことを義務づけられたし、バターに使われていた食用色素“ジメチルアミノアゾベンゼン”の使用も禁止された。

 ナチスの指導者たち自身の健康志向も強かった。ヒトラーの菜食主義は有名だが、親衛隊長官ヒムラー、副総統ヘスもベジタリアンで、当時のドイツでは菜食主義は一大流行だった。チャーチルやスターリンは愛煙家だったが、ヒトラーはアルコールもタバコもたしなまず、愛人エファー・ブラウンがタバコを吸うのを許さなかったといわれる。

 この徹底した国民健康向上計画は、ナチス・ドイツというファシズム国家だからこそ国家プロジェクトとして強力に推し進めることができたといえる。そして第三帝国下でのドイツは、ナチス指導者たちの夢をのせて健康ユートピア実現のための壮大な実験の場となった。だがユートピア構想が、いつの間にか純血主義というパラノイアへとつながっていく。がんという異物の排除が、「社会の異物」ユダヤ人の排除へとつながっていくレトリックは狂気としかいいようがない。
 その結果もたらされた集団殺りく、人体実験、断種といった暴挙の衝撃があまりに大きすぎたため、1つの国が国をあげてがんと戦ってきた事実が語られないまま、長い時間が過ぎてしまった。この本で明らかにされる先駆的で壮大ながんとの闘いは驚異的でさえあるが、ファシズムの暴虐と結びついたものについて、私たちはあえて目をそらしていたのではないだろうか。
 
ナチスというファシズムにもいろいろな側面がある。ホロコーストの残虐性と、壮大ながん戦争を推し進めて国民を救おうという使命感は共存できるのである。当時のドイツの医学だってナチスのためにあったのではないが、もちろん無関係でもなかった。科学史を専門とする著者は、常に「時の社会情勢や政治体制と切り離された科学研究はありえない」とする視点でテーマを見てきた。歴史や物事にはいろいろな側面があり、それから目をそらさないことの意味も教えられる本だ。
(松田 博市)
書名:健康帝国ナチス
著者:ロバート・N.プロクター
訳者:宮崎 尊
出版:草思社
税込価格:¥2310(本体:¥2200)
サイズ:四六判/355ページ
ISBN:4-7942-1226-7
発行年月:2003年9月
■「nikkeibp.jp健康」3月17日号

・・・こんな記事は木村愛二さんにも怒られそう



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