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http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20060119303.html
Ann Harrison
スイス、バーゼル発――かつて米シスコシステムズ社の社員だったケビン・ハーバート氏(42歳)は、とりわけ難解なプログラミングの問題に直面しているときや、キャリアに関する重要な判断を下そうと熟考しているとき、精神を拡張する強力なツール――『LSD-25』――を使う。
ハーバート氏はこう語る。「脳の内部の情報伝達に関して、何かが変化するに違いない。問題を解決してくれる内的プロセスがどんなものかはわからないが、ふだんとは違ったはたらきをするのだ。あるいは、脳の別の部分が使われるのかもしれない」。ハーバート氏は、とりわけ困難な技術的問題を解決するときには、グレイトフル・デッドのドラムソロを聴いてトリップしたと話す。LSDからひらめきを得たアーティストは多いが、グレイトフル・デッドもその一例だ。
「LSDでトリップしているときに、何かしら純粋なリズムを聴くと、別の世界へ連れて行かれ、脳が別の状態になる。そこでは考えることが停止し、知ることが始まる」と語るハーバート氏は、シスコシステムズ社の技術者を対象とした薬物検査を止めさせる運動をしたこともある。
先週末、カリフォルニア州サンタクルーズ在住のハーバート氏のほか、2000人の研究者、科学者、アーティスト、歴史学者たちがスイスのバーゼルに集まり、1938年にこの地でLSDを発見したスイスの化学者、アルベルト・ホフマン博士(写真)の100歳の誕生日を祝った。ホフマン博士には、誕生日を祝うスイス大統領からの手紙とバラの花束が贈られ、観衆の中から若い女性が進み出て博士にキスをした。
13日から15日にかけて(現地時間)開催された会議『LSD:問題児にして驚異の薬――アルベルト・ホフマン博士の100歳の誕生日を祝う国際シンポジウム』は、いろいろな意味で、LSDにとって科学的な「カミングアウト」パーティーだった。
ホフマン博士はシンポジウムの初日、「LSDは私に何かを伝えたがっていた」と聴衆に語った。「LSDは私に、内なる喜び、心を開くこと、感謝の気持ち、広い視野、創造の奇跡に対する内面的な感受性を与えてくれた」
年のせいで腰が曲がっているものの、今なお饒舌なホフマン博士は、治療目的やスピリチュアルな目的による専門家の監督下でのLSD使用が再び認められるよう、このシンポジウムが後押してくれることを願っていると語った。
LSD(リゼルギン(リゼルグ)酸ジエチルアミド)――麦角菌が生成する麦角アルカロイドから発見されたリゼルギン酸の合成物――は、1960年代の半ばから世界各国で使用が禁止されているが、現在も何かと物議を醸している。ドラッグ使用に反対するサイエントロジー教会の分派は14日、シンポジウム会場近くにピケを張った。
精神を拡張するツールとしてのLSDの歴史は、ホフマン博士がLSD-25を発見した5年後から始まった。ホフマン博士いわく、LSDには「奇妙な予感」と呼ぶものが備わっていて、駆り立てられるように再びこの薬を合成したという。そのとき博士は、意図的に摂取したのではないのだが、どうしたわけか、その効果を体験するほどの量のLSDを偶然吸収してしまったという。2回目の意図的なトリップでは恐ろしい経験をしたが、それはしだいに、再び誕生するような感覚に取って代わったと、博士は振り返る。
1950年代から1960年代にかけて、LSDは精神医学や精神療法の領域で有望なツールとなりうることがわかり、米国の中央情報局(CIA)は強力な自白薬として研究した。だが、実験室から流出したLSDが若者文化によって広く信奉されるようになると、その所持や使用は処罰の対象になった。
ホフマン博士によると、LSDはこれまで数え切れないほどの人々が摂取してきたが、そのうちの一部の人が、まがいもののLSDを摂取してバッドトリップを経験したのだという。博士は、現代に「エレウシス」を蘇えらせることを望んでいる。エレウシスとは、古代ギリシャの地名で、紀元前1500年から2000年間にわたって秘密の儀式が行なわれていた場所だ。今回のLSDシンポジウムで、神話学者のカール・P・ラック氏と化学者のピーター・ウェブスター氏は、この「エレウシスの密儀」で使われたキケオンという飲料の有効成分が麦角製剤だったと示唆する研究を発表した。
『エレウシスへの道』(The Road To Eleusis)という著書があるラック氏は「ホフマン博士は、LSDという化学物質を合成したとき、4000年前の秘密も偶然発見していたのだ」と語った。
ホフマン博士は、1958年にはメキシコの幻覚キノコの一種(psilocybe mexicana)からシロシビン(サイロシビン)とサイロシンという向精神物質を初めて抽出した。世界では、恍惚とした霊的体験に導く目的で、さまざまな植物が使われ、神聖視されているが、この幻覚キノコもその一種だ。
米国の連邦最高裁判所は現在、宗教団体『ウニアン・ド・ベジェタル』(UDV)のニューメキシコ支部による上告を審理している。UDVは、米国の法律で禁止されている植物、アヤワスカから作った飲み物を儀式に使っており、意識を変容させる宗教儀式の先例としてエレウシスの密儀を引き合いに出している。
シンポジウムでは、エレクトロニック・トランス・ミュージックの演奏や画家のアレックス・グレイ氏によるサイケデリック・アートが、参加者たち――とくに、変性意識の状態にある人々――の中に瞑想的でスピリチュアルな反応を生み出していた。
現代版のスピリチュアルなLSD体験を言葉で表現したい参加者は、ウェブサイト『エロウィド』にある薬物の体験談を集めたライブラリーに投稿するよう呼びかけられた。このサイトを運営しているアース・エロウィド氏とファイアー・エロウィド氏はシンポジウムで、寄せられたコメントの例を紹介し、また、LSDに関連づけられている数件の死亡事故について報告した。
ドイツのケルンからシンポジウムに足を運んだゲリ・バイルさんは、2000年の元日にインドの海辺で経験した、恍惚としたLSD体験を思い出す。「幸福感と、私を創造してくれた両親への感謝に満たされ、私は泣いていた。この体験はずっと消えずに残っている。絶えず私に影響を与えてきた」と、バイルさんは話した。
(1/20に続く) [日本語版:福井 誠/高森郁哉]
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20060120306.html
Ann Harrison
(1/19から続く)
ハーバート氏と同じように、多くの科学者や技術者も、LSDを使うと創造性が高まると報告している。ホフマン博士は13日に行なわれた記者会見で、ノーベル賞受賞化学者のキャリー・マリス博士から、LSDの助けによって、特定のDNA配列を増幅させるポリメラーゼ連鎖反応法を開発できたと明かされたという話を披露した。
「自然科学、創造の奇跡を研究する人が神秘主義者にならないとすれば、その人は自然科学者ではない」とホフマン博士。
画家のグレイ氏はシンポジウムで、DNAの二重らせん構造を発見してノーベル医学・生理学賞を受賞したフランシス・クリック博士についての報道に言及した。クリック博士も、LSDに触発されて研究の着想を得たことを友人たちに語っていたという。
シンポジウムのある討論会では、初期のコンピューター開発の先駆者たちがどのようにLSDを使ってひらめきを得ていたかが話題となった。例えば、マウスを発明したダグラス・エンゲルバート氏や、米アンペックス社の元技術者で今回のシンポジウムにも参加しているLSD研究者のマイロン・ストラロフ氏、米アップルコンピュータ社の共同創立者であるスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)などの人々だ。『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者、ジョン・マーコフ氏は2005年の著書『眠りネズミが言ったこと』(What the Dormouse Said)の中で、ジョブズCEOが自身のLSD体験を「人生で実行したとりわけ重要な2つか3つの事柄のうちの1つ」と評した言葉を引用している。
だがシンポジウムは、LSDを使用した著名人の単なる調査発表ではなかった。参加した心理療法士や精神科医たちは、幻覚剤の治療的な有用性の研究について論じた。
サウスカロライナ州チャールストンで開業している精神科医、マイケル・ミソファー氏は、研究の予備的調査結果を発表した。ミソファー氏は、犯罪や戦争による心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状に苦しむ人の治療に、MDMA(メチレンジオキシメタンフェタミン、エクスタシー)が有効かどうかを研究している(日本語版記事)。
ハーバード大学のジョン・ハルパーン博士は、MDMAを使ってガン患者の不安を和らげる研究計画(日本語版記事)――現在、米麻薬取締局(DEA)の承認待ち――について話をした。
フロリダ州にある幻覚剤学際研究学会(MAPS)は、薬物依存症患者の治療におけるイボガイン[アフリカ産キョウチクトウ科の植物から抽出される幻覚誘発剤]の利用を検討するカナダの研究調査を支援している。
ロサンゼルスにあるハーバーUCLA医療センターの研究――へフター研究所が支援している――は、シロシビンが末期ガン患者の不安緩和に有効かどうかを調べるものだ。同センターの精神科医、チャールズ・グロブ博士は、研究チームは必要な12人の被験者のうち6人まで見つけており、さらに多くの被験者を求めていると話した。
グロブ博士はセミナーの参加者に向けて、データの分析はまだだが、研究に参加してくれたすべての被験者が有望な反応を見せていると語り、国際的なシンポジウムでデータを共有する機会が持てたことを喜んだ。
「非常に博識な人々を含め、これほど多くの人々が集まった中で共通の展望が共有されているのを見ると、とても勇気づけられる。共通の展望とは、こうした化合物に、とくに既存の治療法では効果が上がらなかった領域での治療を進める途方もない可能性があるというものだ」と、グロブ博士は語る。「こうした化合物は、世界各地で数千年にわたって、先住民たちによって治療に使われてきた。現代に生きるわれわれが先住民たちから学ぶことはたくさんある」
MAPSを設立したリック・ドブリン氏は、幻覚剤を処方薬にすることが目標だと語るが、治療目的のLSD研究がまだ行なわれていないと嘆く。「われわれは、自分の幻覚剤体験に大きく影響されてきた。それゆえ、世界中どこを探しても、人間のLSD摂取に関する合法的な研究が1つもないことに、耐えがたい思いがする。隠れた場所で使われるようになったものを、合法的な場に呼び戻す必要がある」と、ドブリン氏は述べた。
だがドブリン氏は、LSDが群発頭痛を緩和すると主張する集団がネット上で組織を結成し、ハーバード大学にLSDを使った治療の可能性を調査するよう要請していることも指摘した。もしハーバード大学がMDMAの研究を承認すれば、同大学のLSD研究――ティモシー・リアリー博士が在職中に中止された――の復活という象徴的な意義を持つ展開につながるかもしれないと、ドブリン氏は語る。同氏の目標は、ホフマン博士の101回目の誕生日までに、LSD研究を確実に再開させることだという。
ハーバード大学医学部のリチャード・アンドルー・シューエル博士(神経学・精神医学)――アルコールと薬物の乱用を研究している――によると、LSDにまつわる大半の問題は、危険な状態を避けうる専門家が監督することなく、管理されていない状況下で、使用者が不快に感じるほどの量を摂取した場合に発生するという。
「LSDによるフラッシュバックはよく知られた現象だが、症例は比較的まれで、メディアに信じ込まされているほどのひどい問題とはならないようだ」と、シューエル博士はシンポジウムで語った。
精神障害を持つ人は、症状が悪化する可能性があるので、LSDを摂取すべきではないとシューエル博士は言う。「すべての強力な薬物と同じように、LSDを不適切に使用すると、益よりも害のほうが大きくなる。LSDは、危険をもたらす可能性を秘めた薬物であり、医師の管理下で使用すべきだ」
「LSDが脳に永続的な損傷を与えるという証拠は一切ない――逆に、損傷を与えないという証拠はかなりたくさんある。幸運なことに、1950年代および1960年代に執筆された、1000以上の論文が閲覧できる。当時、非常に多くの被験者にLSDが投与されたので、LSDが何をして何をしないかについて、われわれは現時点でもかなりはっきりと把握しているのだ」とシューエル博士は述べた。
ホフマン博士は、世界はあなたの発明を必要としているのだろうかと質問され、社会の中にLSDの適切な居場所ができるよう、このバーゼルでのLSDシンポジウムが役立つことを期待すると答えた。
「人類の進化において、LSDというこの物質を持つことが今ほど必要とされたことはこれまでなかった。LSDこそが、われわれをしかるべき状態に変えてくれるツールなのだ」と、ホフマン博士は語った。
[日本語版:福井 誠/高森郁哉]
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