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一見して、愛する人を守ること=祖国を守ることと短絡的に結びつけ、日本の若者を戦争に動員しようとしているかのように見える海上自衛隊全面協力映画「男たちの大和」は実は、朝日新聞系が支援する左翼反戦映画であることは、意外に知られていない。
戦艦大和の元乗組員で俳優の鈴木瑞穂さんは、映画人九条の会のよびかけ人であるが、この映画について何らコメントしていない。
映画人九条の会のメールマガジン「映画人九条の会Mail」 No.8 (2005/09/02)では、しんぶん赤旗に頻繁に執筆している映画評論家の山田和夫氏が以下のように書いている。
8月17日午後、帝国ホテルの大宴会場で「男たちの大和〈YAMATO〉」(東映、監督佐藤純彌)のクランクアップ記者会見が行われた。太平洋戦争末期、3000名余の乗員とともに沖縄への海上特攻に散った戦艦大和。その最後を描く“戦後60年記念”の戦争映画大作だが、それをどう描くのか?ずっと気がかっていたので、記者会見に参加した。
出演した男優たちに、記者たちから質問が飛んだ。「映画の若者たちは愛する人のため、故郷のため、死んでいったとされているけれど、あなたたちは愛する人のために死ねますか」。若い男優たちはちょっと口ごもりながら「死ねます」と答えた。ひとりの年配の司令官役を演じたスターは、「そういうときになれば、私は愛する人のため、国のために戦場にいきます」と力を込めて言い切った。最後に佐藤監督がマイクをにぎった。「違います。本当に愛するものや国を守りたかったら、戦争をしないこと。そのためにいま何をすべきか考えてください」と。
私は佐藤監督の処女作「陸軍残虐物語」(1963年)を思い出した。それは日本軍隊の醜悪さを満身の怒りを込めて糾弾した力作。この「男たちの大和」にその初心が生きていることを願わずにはおれなかった。しかし、この記者会見を報じたテレビやスポーツ紙などは、「愛するもののために戦場へ」の発言だけで、佐藤監督のこの真摯な声は一切排除されていた。ここにも「戦後60年」の現実があった。
http://kenpo-9.net/mail/mail_08.html#h2-5
実は、これと同様の内容が8月30日の日本共産党中央委員会機関紙「しんぶん赤旗」の文化面コラム「朝の風」に掲載されていた。
朝の風/ある映画の記者会見で
「映画の若者たちは愛する人を、家族を、国を守るために死を覚悟して出撃しましたが、あなたは愛する人のために死ねますか?」、壇上の男優たちにこんな質問が飛んだ。戦争末期、沖縄への海上特攻で三千数百人の命とともに、南海に沈んだ戦艦大和を描く戦争映画の大作「男たちの大和〈YAMATO〉」(東映、監督佐藤純弥)の記者会見(十七日)でのことである。
若手俳優はさすがに即答が出来ず、それでも「愛する人のために死ねます」と答えた。一人年配の主演俳優は力を込めて言い切った。「私はそういう状況になったら、家族、国を守るため戦争に行きます」と。私はその場にいてハッとし、「これでいいのだろうか?」と胸がふさがった。
そのあと佐藤監督の番がまわってきた。彼はいった。「違う。家族や国を守りたかったら、戦争をしないことです。いまそのために何をすべきか、ぜひ考えてほしい」。ホッとして、救われた気がした。しかしこの日の記者会見を報じたテレビやスポーツ新聞を見て驚いた。「愛のために戦場へ行きます」という発言だけがクローズアップされ、佐藤監督の真摯(しんし)な正論は一切無視されていた。ここにもう一つの日本の「いま」があった。
映画は仕上げ中、十二月十七日公開、シナリオも読めないが、監督のこの思いがどれだけ実現できるかと、危惧しながら祈りたい気持ちだ。(反)
2005.08.30 しんぶん赤旗・日刊紙 9頁
末尾の書名「(反)」は、山田氏のことである。
もともと「戦艦大和」は、戦後、反戦の象徴であった。
吉田満氏の「戦艦大和ノ最期」は、戦争に対する嫌悪感が満ち満ちている書物である。
1953年6月15日に公開された映画「戦艦大和」は、後に共産党員の監督・今井正の「海軍特別年少兵」(1972年・東宝)を製作することになる望月利雄氏と、1931年に日本プロレタリア映画同盟が製作した反戦映画「奴隷戦争」の撮影を担当した篠勝三氏が製作を担当。一時ソ連の国歌でもあった労働歌「インターナショナル」を日本語訳した佐々木孝丸が出演、戦後の左翼映画「民衆の敵」のシナリオライター・八住利雄氏が脚本を書き、戦後の反核平和の音楽運動をリードした作曲家・芥川也寸志氏が音楽を担当した。
映画は、まったく勇ましくなく悲壮感に溢れていた。
昨年、「大和の最期、それから 吉田満戦後の航跡」を書いた千早耿一郎氏は、憲法九条を守る詩人の集まりのメンバーであり、 鬼内仙次氏の「島の墓標 私の「戦艦大和」」を原作とした劇団民藝の芝居「わたしは春がきらいです」の演出を担当した 若杉光夫氏は、日本共産党の支持者であり、マスコミ九条の会のメンバーでもある。
佐藤純彌監督も、前述のように反戦映画人としてデビュー。その後監督した1975年の「新幹線大爆破」は、日本共産党員作家・小林多喜二を演じることになる山本圭氏がテロリスト役を演じ、山田和夫氏の著書では、民主的な映画人が結集してつくりあげた映画として絶賛され、昨年の韓国・ソウルで開催された日本映画祭「愛と青春1965-1998」でも上映された。
右翼団体とヤクザの繋がりと、それを左翼への暴力的威嚇に利用する政府・自民党の戦略を暴露した1967年の「組織暴力」は、今でも秀作として語り継がれている。さらに、1976年の「君よ噴怒の河を渉れ」は、中国で大ヒット。映画「小林多喜二」で多喜二の恋人役を演じることになる中野良子を一躍国際的スターにした。
海上自衛隊全面協力映画「男たちの大和」は、教育基本法改悪を狙う民間教育臨調の委員である作家・辺見じゃんが原作、1993年麻薬取締法違反・関税法違反・業務上横領容疑で千葉県警により逮捕され、1億円の保釈金で保釈、2001年に収監、2004年仮釈放中の角川春樹が製作を発表したといういわくつきの映画である。
前科者の映画になぜ防衛庁が協力したのか、いまだに謎である。
海上自衛隊内で麻薬事件が多発していることを見ても、海上自衛隊は麻薬犯罪に対する姿勢が甘いようだ。
海上自衛隊全面協力映画「男たちの大和」には、このほど後援会のパーティー券の政治資金収支報告過少申告で逮捕者を出した藤田雄山氏が知事をつとめている広島県、創価学会主催のイベントに公式出席していた小笠原臣也氏が呉市、靖国神社公式参拝を求める自民党の集票組織「日本遺族会」関連施設の職員であった戸高一成氏が館長をつとめる大和ミュージアムのほか、日本共産党が与党という尾道市が協力。
右翼団体やネット右翼が嫌悪しつづける、朝日新聞社とその系列のテレビ朝日と地方の系列各局(朝日放送・広島ホームテレビ・九州朝日放送・北海道テレビ・長崎文化放送・鹿児島放送)が出資している。
憲法改正・首相の靖国神社公式参拝を掲げる右翼団体の(財)水交会も関与。
日本共産党系の映演労連傘下の全東映労働組合の拠点である「東映京都撮影所」が製作した。
海上自衛隊全面協力映画「男たちの大和」は、いわば、右翼と左翼の合作の括弧つきの反戦映画なのである。
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