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ゆれる平澤（ピョンテク） 駐韓米軍再編（２） 2006/03/20
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警察がショベルカーで田を掘り起こす。農民は我が子のように大切な田が、２m強の深さでえぐられ、立ちすくむ。ある農民の青年は穿たれた穴に入り、警察を見上げながら抗議する。悔しさで涙が溢れ出る。
ハルモニ（おばあさん）たちは田に座り込み、孫のような年の若い警察らを叱りつける。だが、失神、負傷する者が現れるや、ハルモニの声は悲痛に変わっていく。
大学生らはショベルカーに上って立て籠もり、警察が田に穴を掘るのを妨げようとする。だが、警察が一人、また一人と引きずり降ろし連行していく。女子学生はあらん限りの絶叫を挙げる。
ハラボジ（おじいさん）、ハルモニらは、枯れ草を燃やし煙を立て、泥、キムチ、マッコルリ（どぶろく）等を警察に投げつけあらん限りの抵抗をする。
１５日晩、このような平澤市大秋里の様子をインターネット新聞の動画で見て、いても立ってもいられなくなり、翌日、平澤行きの汽車に乗り再び大秋里を訪れた。
待ちに待った田起こし、住民の顔に笑みが
前日に住民・支援団体合わせて３人が負傷し４０人が連行された激しい攻防があったにも関わらず、この日も住民らは村の各所で座り込みを続けていた。肌寒い天気の中、ハルモニらは日本製の使い捨てカイロで身体を温めている。
午後２時。バス２台、トラクターが村にやってき、歓声に包まれる。田起こしの手伝いに訪れた全羅道の農民会である。途中、警察の阻止を振り切ってやってきたという。
一行は大秋里の農民と合流し、意気揚々とファンセウルの広大な田に向かう。田起こしの開始だ。農民出身のカン・ギガプ国会議員（民主労働党）もトラクターを運転し、平澤の農民を激励する。
その夜、ろうそく集会の会場であるビニルハウスは、座る場がないほどに溢れかえった。全国から集まった農民、昨日の出来事を知り集まってきた団体・個人。
「今日は、今まで苦しみの多かったわたしたちのたたかいのなかで、もっともうれしい日」と司会者は開口一番述べ、「今年も農作業をできるか不安の中で、こうして全国から集まった農民のみなさんに支えられ、田起こしができた」と発言した。
その翌日、１７日午前には「生命と平和の地を守る平和の田起こし」と名付けられた行事が始まった。計１５台のトラクターが一斉に米軍基地キャンプハンフリーの前で田起こしをはじめた。
農作業をはじめた住民らに今どんな気持ちかと尋ねまわると、皆口々に、「気分が良いに決まってるさ」「嬉しいね」と語った。
嬉しかったのは現役で農業をしている人だけでない。今は小さな畑だけで静かに暮らしているという老夫婦は、「ソウルに住む息子・娘らがソウルでいっしょに住もうというが、私らは空気のおいしいここが好きだ。今日は村が生き返ったようで何よりも嬉しい」と語った。
１５日に国防部によって田に掘られた穴の中で屈辱の涙を流したソン・テギョンさん（３７）は、「なによりも泣き叫ぶハルモニの姿を見るのが辛かった」と話し、「今年も、これから５月には田植えを終え、１０月に収穫し、いつもどおり農作業をつづけていく。農民としての生を貫き通すことが私たちの闘いだ」と語った。
今年も農業を続ける平澤農民〜国防部の執行に問題はないのか
昨年１２月にすでに土地の所有権は政府に移っている。国防部は現在、国家所有となっている米軍基地拡張予定地に立ち入ることは、国家財産法違反で「７００万ウォン以下の罰金、あるいは２年以内の懲役」に処すと警告している。
さらに、昨年２月、平澤の住民をはじめとする１０３３人は、政府の平澤基地拡張と土地収用計画が、憲法で定められた国民の生存権と侵略戦争の否定を毀損するものだとし、憲法裁判所に違憲立法審査を提起した。だが、憲法裁判所は今年２月２３日、住民の指摘する違憲性と基地拡張計画は、直接的な関係がないとして、住民の違憲立法審査要求を却下した。
それでは政府の土地収用強制執行に問題はないのか。大秋里を訪れた「民主社会のための弁護士会（民弁）」チャン・ギョンウク弁護士は「国防部がこれまで裁判所の令状なしに、住民の農作業を妨げようと農道を破壊し、田に穴を掘ったことは、農地に対する住民の占有権への侵害であり違法だ」と語る。所有権が国に移ったといえど、まだ立ち退きに応じていない住民が農地に対してもつ占有権は存在するという指摘だ。
国防部側は、農業用水を止めてでも今年の農作業を阻止すると公言している。それに対し、住民側は農業用水が遮断される場合に備え、種を直に蒔く農法を検討している。
チャン弁護士は「民弁はこれからも、住民らが不当な執行を受けないか、監視していく」と語った。
「農を営めば、平和がやってくる」
現在、韓国で平澤の農民の運動に対し「たくさん補償を受けたいための運動だ」「住民は反米主義の運動団体に利用されている」と揶揄する書き込みが、韓国のインターネットニュースの掲示板などでよく目にする。韓国では住民運動が起こるたびによく言われることだ。
だが、ある日突然、ここは政府の土地だから出て行きなさい、と言われれば、当惑しない人はいないだろう。
さらに、外部の運動団体にイデオロギーを注入されるほど、半世紀の間、干拓して農地を築き上げてきた農民はやわなのか。慣れ親しんだ共同体が破壊される。それはいくら補償金が積まれても手放すことができないものだ。
田のあぜ道にこしかけ、トラクターが次々と田を起こしていくのを眺めていた。田の一隅に「農を営めば、平和がやってくる」という横断幕が掲げられている。平澤の農民たちにあるのは、農を継続していくことが平和を呼ぶという確信だ。
(兵頭圭児)
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