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http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/news/20060314ddm007030099000c.html
◇米←微妙に依存→中/米←連携・すき間→台/中→柔軟・主張←台
96年3月の台湾初の総統直接選挙直前に中国がミサイル演習で威嚇、米国が空母2隻を急派した台湾海峡危機から10年を迎えた。14日には中国が台湾への武力行使の法的根拠となる「反国家分裂法」を制定して1年になる。変化を続ける米中台の「三角関係」の現状を分析する。
◇米−−陳政権の独立志向、制御できずに困惑
米国の台湾海峡政策は「一つの中国」支持、「一方的な現状変更」反対で揺るぎはない。しかし、米中間の距離が急速に狭まる一方、独立志向の強い陳水扁総統の台湾と米国との距離が広がっている。
外交関係者の間で最近、「米国は将来も台湾をコントロールできるのか」との懸念が強まった。陳総統の国家統一綱領「廃止」の衝撃だ。2月に国家安全保障会議の幹部らを台北に派遣して廃止を思いとどまるよう説得していただけに、米政府の怒りも大きい。
米ブルッキングス研究所のジン・ファン上級研究員は「陳総統は内政的思惑だけで挑発的行動をしないという米国との約束に背いた」と説明する。米国には、台湾が武器購入の約束を果たさないことへのいら立ちも強い。
一方、対中関係では昨夏に定期高官協議が始まるなど信頼醸成の努力が進む。特筆すべきは、米国は北朝鮮核問題で中国の影響力を、中国は対台湾で米国の影響力をそれぞれ必要とし、微妙な依存関係が成立していることだ。
ある外交筋は「6カ国協議で米中接触の頻度が増した結果、米国は徐々に中国への信頼感を持ち始めている」と指摘する。ただ、台湾が独立色を強めれば、中国から米国への圧力が高まる。このため、米台関係をいかに修復するかが、米国にとって対中関係の上でも重要な課題となっている。【ワシントン笠原敏彦】
◇中−−「強硬」懲り、国民党政権期待
「両岸(中台)交流を促し、台湾人民に希望を託す方針を貫徹する」。中国共産党の序列4位で党台湾工作小組副組長の賈慶林・人民政治協商会議主席は8日、全国人民代表大会(全人代=国会)の台湾代表団の討議に出席し、約束した。
10日の新華社通信によると、党中央統一戦線工作部などは中国に定住した台湾出身者のうち、介護が必要だったり、経済的に困難な人々を支援する「通知」を公布した。
胡錦濤指導部の最近の柔軟路線の背景には10年前の「教訓」があるようだ。台湾周辺での軍事演習は台湾有権者の反発を招き、総統選での李登輝氏圧勝という江沢民指導部(当時)にとって最悪の結果になった。李氏は「中国離れ」を進め、00年総統選で陳水扁氏の当選、台湾初の政権交代へとつながった。
一方で、中国の存在感は日増しに高まる。胡錦濤指導部は江沢民時代の「早期統一」から「現状維持」に方針を転換した。陳総統の国家統一綱領の「廃止」にも「下心ある挑発」(賈慶林主席)と、拳を振り上げることを避けている。
中国の中期的目標は08年の総統選で、国民党を軸にした野党の政権奪還を側面支援することだ。4月の胡錦濤国家主席の訪米、ブッシュ大統領との首脳会談でも「台湾独立反対」で協調を演出し、陳政権包囲網を狭める戦略を進めるだろう。【北京・飯田和郎】
◇台−−国家統一綱領廃止 野党、猛反発
「武力行使の意図がない限りという前提があった」。台湾の陳水扁総統は2月27日、00年の就任時に廃止しないと公約していた「国家統一綱領」の事実上の廃止を決め、公約破りではないと釈明した。中国の「武力行使の意図」の例として挙げたのは台湾に向けて配備されているミサイルだ。
だが、10年前の危機後に政権が交代した台湾では対中認識を巡って与野党の見解が真っ向から対立する。野党・国民党の馬英九主席は同日、陳総統の発言について「台湾海峡を緊張させ、人々を危険にさらしている」と批判した。
陳政権はブッシュ米大統領が01年に台湾への売却を承認したディーゼル潜水艦などの米国製武器導入を目指すが、立法院(国会に相当)で多数を占める野党の反対で、特別予算案が否決される事態が続いている。
与野党対立の背景にあるのは、強まる中台間の経済的な結びつきだ。台湾側の統計では、中台間の貿易総額は96年の238億米ドルから04年の616億米ドルへと2倍以上も増加した。台湾の全輸出比率の4分の1以上を占める。
さらに、米政府が武器購入では陳政権を後押しする一方、国家統一綱領の「廃止」には懸念を示すなど、与野党双方と緊密な関係を築けずにいることも台湾内政に反映している。米政府が陳総統と馬氏のどちらに安心感を抱くかも米中台関係に微妙な影響を与えそうだ。【台北・庄司哲也】
◇台湾軍元参謀「衝突の可能性低かった」
1996年当時、台湾軍参謀本部の作戦担当中将だった国民党の帥化民・立法委員(国会議員に相当)に、当時の状況を聞いた。【台北・庄司哲也】
−−台湾海峡危機の背景は。
初の総統直接選挙などを中国側が台湾独立の傾向と受け止めたことが主な要因だ。中国側は軍事的抑圧で、台湾に戦争か平和かの選択を迫った。ソ連という北方の脅威が消失したことも理由の一つだ。
−−軍事衝突の可能性はあったのか。
当初、台湾軍内部は「準戦争的な行為」と位置づけた。だが、中国から得た情報などから衝突の可能性は高くないと判断した。
−−日本は何らかの役割を果たしたか。
日本は数多くのP3C哨戒機を保有しており、台湾にも情報交換によって、日本が得た情報がもたらされた。
◇中国がミサイル試射 米、艦隊派遣で対抗
95年6月に米国のクリントン政権(当時)が台湾の李登輝総統(同)の非公式訪米を受け入れたことを発端に、米中、中台関係が悪化した。翌96年3月に台湾では初の総統直接選挙が行われたが、中国はこの前後に台湾の対岸にある福建省などで軍事演習を実施した。中国軍はこの間、沖縄県与那国島にも近い台湾北部の海域と、南部の高雄沖に計4発のミサイルを試射した。
米政府はインディペンデンスとニミッツの2隻の空母を中心とする機動部隊を台湾近海に派遣し、中国側をけん制した。中国の李鵬首相(当時)は米の空母派遣について「もし外国の艦艇が台湾海峡に入るなら、状況はさらに複雑になる」と警告し、台湾海峡の緊張が高まった。中国の演習目的について当時のペリー米国防長官は「総統選への脅し」との見方を示した。3月23日に投開票された総統選では当時、国民党だった李総統が54%の得票で圧勝した。
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●台湾海峡危機後の主な米中台関係●
95・6 台湾の李登輝総統が非公式訪米
96・3 中国が台湾周辺で大規模軍事演習。米国が空母2隻を急派。台湾初の直接総統選挙で李総統が再選
97・7 香港が中国に返還
98・6 クリントン米大統領が訪中。台湾独立を支持しないなど「三つのノー」に言及
99・6 李総統が中国と台湾を特殊な国と国の関係とする「二国論」を提起
00・3 台湾総統選で民進党の陳水扁氏が当選し、台湾初の政権交代
02・2 ブッシュ米大統領が初訪中。戦略対話の強化などに合意
8 陳総統が中台を「一辺一国」(それぞれ別の国)と表現
03・3 中国で江沢民氏に代わって胡錦濤氏が国家主席に就任
04・3 陳総統再選
05・3 中国が「反国家分裂法」を制定
4 台湾・国民党の連戦主席が中国訪問。胡主席と60年ぶりに国共トップ会談
06・4 胡主席が米国訪問(予定)
毎日新聞 2006年3月14日 東京朝刊