★阿修羅♪ > アジア3 > 580.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/column/0601/17.html
中国は1月1日から農業税を全廃した。農業税は不公平税制と批判され、農業生産意欲を減退させ、農村の貧困の原因の一つといわれてきた。鉱工業製品の輸出を中心に、高度経済成長を続ける中国は、都市と農村の所得格差が拡大し、農民暴動なども伝えられており、不満が渦巻いている。今回の措置は、社会安定対策の色合いが強く、農民の負担軽減には依然として大きな問題を抱えている。
中国の農家と都市住民の所得格差は、統計上3.2倍だが、実質は6倍もの差があるといわれる。農村、農業、農民が貧困に苦しむ「三農問題」は、繁栄を続ける中国社会のアキレスけんと指摘され、中国にとって重要な政策課題だ。胡錦濤政権は持続的発展のため、調和型社会を目指し、これまでの都市部を優遇する政策から、農家の利益を公平に重視する政策へ転換しようとしている。その象徴的なものが、農業税だ。
農業税は中国共産党政権の発足後、1958年の第一期全人代常務委員会で採択され導入された。もともとの原型は紀元前594年に、魯の国(現在の山東省付近)で制度化されて以来、歴代王朝に引き継がれ、今日まで2600年の歴史がある。農地を使用している農家は、必ず納付しなければならない年貢のような制度。税率は地方によって異なるが、生産量と収入を基準に平均15%程度、最高限度は30%。都市部の勤労者は年収が800元(約1万1千円)未満なら課税の対象にならないが、農家は収入がない場合でも、課税される。
中国政府は農業税を2004年から5年間で段階的に廃止するとしてきた。31省・地域のうち、すでに28の省・直轄市・自治区で廃止されている。今回の決定は、計画を早めて廃止したものだ。農業税は一時期、中国の税収の4割を占めたが、その後縮小し、現在は1%を占めるだけだ。財政状況は安定しており、廃止しても大幅な税収減にはならないとみられている。
今回の措置で農業の課税がなくなったわけではない。都市と農村の税制度を一本化することが目的だ。農業は他の産業と同様に、農産物販売などの所得によって税金が徴収される。つまり、農家も年収が800元以上になれば、税金を徴収される。
中国の農村部では、行政機関の資金不足などから、正規の税以外に農民に負担を求める例が後を絶たず、どこまで実質的な負担軽減が進むか、不透明なところがある。農業税以外にも村や郷で徴収するものが多い。例えば、村の幹部の手当や、先生の給料などの教育費、民兵訓練費、橋や道路のインフラ整備費などである。これらの負担をどこまで軽減できるかが今後の課題だ。今回の撤廃は、農民の負担軽減の第一歩だ。目標達成には、なお多くの課題があり、この先も道のりは長いと見るべきだ。
日本農業新聞 論説 [2006年01月17日付]