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日本人とは何?…中国で「菊と刀」ベストセラーに
【北京=藤野彰】米国の文化人類学者ルース・ベネディクトが書いた、日本文化論の古典的名著「菊と刀」が、中国でベストセラーになっている。
中国で翻訳が出版されてから16年近くになるが、05年は例年にないペースで増刷が続き、異例の計7万部を発行。
背景には、靖国神社参拝など歴史問題を巡って日中関係が冷え込む中、「日本(人)とは何なのか」という関心の高まりがあるようだ。
「菊と刀」の中国語版は北京の老舗出版社、商務印書館が1990年6月に初版を発行。2004年まで毎年数千〜1万部の増刷を重ねてきたが、05年に入ってから売れ行きが加速し、2、5月に各1万部、6月にさらに5万部増刷した。発行数は累計で計14刷約12万4000部に達している。
版元経営の北京の大型書店では、12月末現在、「菊と刀」は同社発行書のベストセラー・ランキングの第4位。新渡戸稲造の「武士道」など他の日本問題関連書もよく売れているが、「菊と刀」は売り場の一等席に数十冊平積みされ、別格の扱いを受けている。
同書の出版に携わった元商務印書館編集者、陳応年さん(69)は、好調な売れ行きについて「こんなに売れているとは驚きだ。日中関係が良くないため、多くの人がこの問題を考え、理解を深めたいと思っている。そんな社会的欲求を反映したものだろう。05年が抗日戦争勝利60周年に当たり、若者たちが日中戦争に関心を抱いたという事情もある」と分析する。
また、訳者の呂万和・元天津社会科学院日本研究所長(80)は「中国では日本についてわかりやすく書いた本は多くない」と指摘した上で、「『菊と刀』ブームは(歴史問題を巡る)日本政府の言動や保守勢力の台頭と関係がある。人々は日本の社会意識について知りたがっている」と話している。
(2005年12月31日18時49分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20051231it11.htm