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4月13日(木)
横田めぐみさんの夫が1978年8月に拉致された韓国人(金英南さん)であることがDNA鑑定の結果、判明したことで日本国内では拉致問題解決に向けた「日韓協調」「日韓共闘」への声が上がっています。
北朝鮮による韓国人拉致が初めて立証されたことで韓国メディアは拉致問題の解決を迫らなかったどころか南北関係改善という大儀名分のため「拉致」という言葉さえ避けてきた韓国政府への批判を強めています。
特に、先頃北朝鮮の金剛山で行われた南北離散家族再会の取材の際、「拉致」という言葉を使った韓国のTV関係者が北朝鮮当局から追放処分にあったことに抗議し、韓国側取材陣全員が金剛山から総引き揚するという事件があったばかりなので、韓国マスコミは今回の件については敏感に反応し、大書特筆しています。
今後の関心は、日韓が連帯できるのかどうか、拉致問題で共同歩調が取れるのかどうかにあります。
拉致被害者家族の方々、また拉致問題に関心を持つ団体やNGOなどの組織は当然提携を強めていくものと思われます。また、これを機に双方の警察と司法当局間の情報交換も行われるものと推察されます。
問題は、政府間による「協調体制」です。
ズバリ言って、現状では困難なように思われます。
第一に、協調できるような日韓関係ではないということです。
小泉総理の靖国参拝問題で、両首脳は今も会談できない状態が続いています。
また、教科書問題や歴史認識問題、さらには竹島(独島)問題をめぐって外交摩擦も続いたままです。
北朝鮮の核問題への対応をめぐっても北朝鮮の核(軽水炉)の平和利用をめぐっても日韓の足並みは揃っていません。
このような状況にあって拉致問題での「共闘」は韓国側からすると考えられません。
第二に、拉致問題解決をめぐる手法が異なるということです。
日本は「圧力」(制裁)を手段に用いていますが、韓国は対話一本槍です。
「拉致問題の解決なくして食糧援助も国交正常化もない」という強気な姿勢は、今の韓国政府には取れそうにもありません。
「拉致問題の解決なくして、経済援助はない」とのスタンスに立てば、日本と一枚岩になって北朝鮮にプレッシャーをかけることができるのですが、韓国政府は逆に北朝鮮に経済援助を行い、南北関係を改善することによって解決の道を考えています。
韓国は来年12月に大統領選挙があります。
現状のままだと、野党(ハンナラ党)に政権が交代する可能性が極めて高いです。
今のノ・ムヒョン政権の人気が低落しているのが原因です。
そのため起死回生の手段として、キム・デジュン前大統領の訪朝や2度目の南北首脳会談の開催を画策しています。
キム前大統領の訪朝は早ければ6月に、また南北首脳会談も早ければ10月にも開かれるのではとささやかれています。
こうした現状にあって、韓国政府が日本のように「拉致問題」で毅然たる態度が取れるかどうか甚だ疑問です。
第三に、確実に北朝鮮は日韓に楔を打ち込んできます。
北朝鮮は今回のDNA鑑定結果については想定済みというか、折込済みです。
拉致した当事者ですから、日本から通告されるまでもなく、夫が韓国人であることは他の誰よりも知っています。
むしろ、「やっと気が付いたか」「ついにばれたか」程度の軽い受け止め方でしょう。むしろ、わかってしまった以上は、夫を前面に出して、「拉致ではなく、自らの意思で来た」とか、寺越武志さんのように「遭難していたところを救助され、そのまま留まった」とかなんとか言わすでしょう。
それどころか、夫の口から「妻は本当に自殺した。あの遺骨は本物である」と語らすかもしれません。そして、金英南親子の再会を演じて、幕を引くことにするでしょう。
横田夫妻は娘さんの生存を信じ、辛抱強く日本で待っていますが、おそらく金英南さんの母親や姉は、北朝鮮が英南さんの存在を認め、再会を認めれば、直ぐにでも北朝鮮に飛んでいくでしょう。
それは、79歳の母親が「生きていて良かった。何はともあれ、早く会いたい。
一日でも早く会うことができればありがたい」と言っていることからもわかります。
日韓の間には「拉致」に関する「温度差」があります。
日本と違って、韓国にとって北朝鮮は「外国」ではありません。
国土が繋がっている、同胞が暮らす朝鮮半島の「北半部」なのです。
日本の場合は、外国に拉致され、監禁されている同胞を日本に連れ戻す、即ち「奪還」が最優先事項ですが、韓国民の優先事項は肉親の「再会」です。
北朝鮮には朝鮮戦争を前後して何百万もの韓国出身者が今なお離散家族として暮らしています。
従って、母親からすれば英南さんもそのうちの一人という感覚かもしれません。
韓国の母親が北朝鮮に行って、息子と孫のヘギョンさんと劇的再会を果たせば韓国ではそれでハッピーエンドとなるかもしれません。
英南さんの韓国への帰国(送還)が今の厳しい南北の現状ではとても無理なのは韓国人の誰もが知っているからです。
仮に、英南さんの母親が息子と孫に会いに北朝鮮に行けば、横田夫妻は辛い立場に立たされるかもしれません。
韓国人は「情の民」であることを知っておくべきです。「日韓提携」への楽観論に「警鐘」を鳴らしておきます。