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しんぶん赤旗からhttp://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-09-21/2005092101_01_3.htmlより引用
2005年9月21日(水)「しんぶん赤旗」
がれきの下に何人が…
イラク 軍事攻撃とテロ 応酬激化
タルアファル 犠牲は民間人に
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■“米軍帰れ”の声 強まる
【カイロ=小泉大介】イラクでは国づくりの基本となる憲法草案をめぐって、イスラム教シーア派・クルド人勢力とスンニ派勢力との対立が表面化しました。そうしたなかで米軍がスンニ派勢力の影響力が強い町への大規模な軍事作戦を展開、これを口実にしたテロも頻発しています。国民のなかからはテロへの非難と同時に情勢の混迷の背景にある米占領軍の責任を追及する声が高まっています。
■無惨に破壊
「なんでこんなことが起こるんだ」。無惨に破壊された市場で人々が無差別テロに怒りの声を震わせます。首都バグダッドでシーア派住民たちを狙った連続自動車爆弾攻撃で約百四十人が死亡した十四日のことです。
その後、各地で頻発する爆弾テロでのイラク人死者は十九日までに約三百人に達しました。
十四日のテロ直後、ザルカウィ幹部が率いるとされる「イラクの聖戦アルカイダ組織」が、米・イラク軍のイラク北部タルアファルへの攻撃に対する「報復」だとする犯行声明を出しました。
タルアファルへの攻撃とは―。同市在住のジャーナリスト、ナセル・アリ氏は十八日、本紙の電話取材で訴えました。
「米軍の攻撃はいまも続いています。いったいどれだけの住民ががれきの下敷きとなっているかわかりません。地域によっては、通りに犬や猫、鶏などの死がいも散乱しています」
■40万都市で
米軍とイラク軍あわせて約一万人の大部隊が人口約四十万人のタルアファルを包囲し攻撃を開始したのは今月十日でした。国際援助団体の関係者や報道陣の立ち入りを阻止し、「外国人テロリスト掃討」を理由に民家爆撃と徹底した家宅捜索をおこなっています。
女性人権活動家のハナ・イブラヒムさんは「ザルカウィを名乗るテロリストはイラクの混乱のために罪のない民間人を犠牲にしており、許せません。しかし、彼にテロの口実を与えているのは占領軍の存在そのものです。米軍はイラクから出て行くべきです。それがイラク人が安全と平和を回復する唯一の道です」と語りました。
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■宗派間対立あおる軍事攻撃
■シーア派宗教指導者 「米軍の存在がテロ続発の元凶」
人口四十万人を抱えるタルアファルの住民は米軍などによる攻撃開始までに避難したものの、市内には数万人が残っており、いまも爆撃にさらされています。医療関係者や住民の証言によれば、死者は女性や子どもを含む数百人にのぼります。
■スンニ派地域 焼きはらう
米軍はクルド人やシーア派の民兵組織出身のイラク軍部隊を作戦に動員しており、事態をより深刻にしています。住民の圧倒的多数はアラブ人とトルクメン人のイスラム教スンニ派だからです。
同市在住のジャーナリストのアリ氏は「市内で外国人を見たものは誰もいません。米軍の攻撃の目的は明白です。クルド人、シーア派の兵士を伴いスンニ派地域を焼き払い、国民投票など政治過程からスンニ派を排除することです」と語りました。
イラク暫定国民議会は八月二十八日に憲法草案を原則承認、九月十八日に最終修正案を承認しました。同草案は十月十五日に国民投票にかけられます。米軍占領下とはいえ、本来なら主権の回復と国家の再生へ重要なステップとなります。ところが議会で多数を占めるシーア派とクルド人がスンニ派の反対を切り捨てる形で草案を決めてしまいました。
最大の対立点はシーア派の多数とクルド人が主張する連邦制導入が盛り込まれたことです。イラクの国家としての一体性が失われ、国家分裂にもつながりかねないと懸念する声もでています。また、バース党を基盤とした旧フセイン政権残党を排除するためとして、「バース主義」の禁止が盛り込まれました。スンニ派は新体制から自分たちを排除するものだとの懸念を強めています。
■宗派超えた連帯切り裂く
ただイラク人としての一体感が失われたわけではありません。八月末、バグダッドでシーア派の宗教行事に参加していた人々が「テロ攻撃のうわさ」でパニック状態になり橋の上からチグリス川に転落し約千人が死亡する大惨事が起きました。このときスンニ派の青年が川に飛び込みシーア派の人々を救出しながら自らは命を落としました。このエピソードはイラク人としてのきずなを示すものとしてシーア派、スンニ派双方の人々の間で語られています。
人間としてのこんな連帯感を切り裂く暴力。とりわけ占領米軍の横暴と反対勢力への軍事攻撃は、テロ勢力の活動を挑発し、宗派間の対立を助長するものとして一般イラク人の反発を呼んでいます。
スンニ派の憲法起草委員、マシュアン・アルジャブリ氏は本紙に対し、「われわれはシーア派住民を同じイラク人の兄弟とみなしています。彼らを標的としたテロを拒絶し、テロリストが即刻イラクから出ていくことを求めます」とのべたうえでこう語りました。
「米軍によるスンニ派地域での攻撃や拘束はタルアファルだけでなくバグダッドなどでも日常的におこなわれています。米軍の攻撃は宗派間対立を引き起こし、占領に反対するスンニ派を政治プロセスのみならずイラクそのものから排除することを狙ったものです。断じて許せません」
バグダッド大学政治学部のナディア・シュカーラ教授は「シーア派もスンニ派もイラク人です。しかし米軍にとっては違います。かれらはイラクを分断し、テロ活動を活発化させることで駐留長期化を合理化し、その口実を得ようとしているのです。そもそも(テロ集団の指導者である)ザルカウィは米占領とともにイラクにやってきたのです」と指摘しました。
イラクのドレイミ国防相は十日、攻撃の対象をタルアファルからラマディ、サマラ、ラワ、カイムなど中西部のスンニ派地域に拡大すると言明。米軍司令官も十五日、西部のユーフラテス川沿いの都市を攻撃する計画を明らかにしました。イラク軍と米軍は同日、早くもラマディなどへの攻撃を開始しました。
■占領こそが悲劇の原因
米軍の責任を追及する声はテロの標的となっているシーア派の中でも広がっています。シーア派の宗教指導者アリ・ジュブリ師は強調しました。
「米軍は自分たちが撤退すればイラクがテロリストの手に落ちるといいますが、米軍の存在こそ現在のテロ続発の元凶です。イラクの活路は、まず米軍が撤退時期を明らかにすることです。そうしてはじめて、米軍のためではない、イラク人のための治安部隊の養成が可能となり、また、武装勢力も政府を信頼するようになるでしょう」
アラブ世界のメディアでも次のような論調が相次いでいます。
「過去二年にわたり米軍はさまざまな都市で軍事攻撃をおこなってきたが、それがもたらしたのは市民の犠牲だけであった」(サウジアラビアのアルワタン紙)、「米政権はこれまでにもイラクの危機をつくりだしてきたが、とうとう同国の分断に乗り出した」(カタールのアッシャルク紙)、「占領こそイラクの悲劇の真の原因である」(エジプトのアルゴムフリア紙)
■(カイロ=小泉大介)