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関東出身者が交流した軍隊を持たない国
<上> コスタリカ
軍隊を持たない−。憲法でこう“宣言”している国が、世界には日本のほかにあと二つある。中米のコスタリカとパナマだ。コスタリカはほぼ半世紀、パナマは十一年間戦争をしていない。軍を持たず、どうやって平和を守っているのか。ことし創立四十周年を迎えた青年海外協力隊の隊員ら、両国に住む関東出身者を訪ねて、それぞれの暮らしぶりを見た。
「平和憲法を持つ国に住むことができてうれしい」。コスタリカに通算八年在住している千葉市出身の石橋陽子さん(32)は真剣な面持ちで話した。同じように軍隊の不保持を憲法で定めている日本と比べても「この国は、平和や人権のことを意識する人を育てている」と感じるという。
石橋さんは現在、首都サンホセ市の近郊にコスタリカ人の夫と暮らし、国家リハビリテーション特殊教育審議会で障害者支援をする青年海外協力隊のシニア隊員。
石橋さんとともに障害者支援をする大学教授ロドリコ・ヒメネルさん(44)が「カネがあってもなくても、軍は持つべきでない。外部からの侵略より、軍の横暴の方がよほど怖い」と力説したように、市民の平和憲法への誇りは高いようだ。
コスタリカは一九四九年、内戦で勝利した国民的英雄のホセ・フィゲレスの決断を受け、軍隊の不保持を憲法で明記。予算を軍事費の代わりに教育、医療、福祉に使い、中米では安定した社会を保つことに成功した。
「この国には資源がないから、人が財産。だから教育に力を入れる。日本と似ています」と指摘するのは埼玉県川越市出身の山本美香同国JICA(国際協力機構)事務所長。選挙の投票率は70%を超え、環境問題先進国ともいわれる。「自然が保護され、可能性を持っているという点では、コスタリカの方が(日本より)先をいっているかもしれない。中米のリーダー的存在のコスタリカでわれわれの計画漁業が成功すれば、やがて中米全域に広がると思っています」と、JICAの専門家として、ニコヤ湾の漁業管理プロジェクトに携わる東京都品川区の嶋津靖彦さん(61)は笑顔で語った。
しかし、最近は隣国ニカラグアやコロンビアから不法入国者が増えるなどして、治安は悪化している。昨年十二月には13%もの物価上昇率を記録するなど、政府の経済政策もうまくいかない面があるという。
「この国に来た時、街中で発砲事件があった。軍隊を持たない平和な国だと思ったのに、銃の使用が許されているのに驚いた」。サンホセ市から南東へ約七十キロの山あいにある人口約四百人のプロビデンシャ村で、青年海外協力隊の村落開発普及員として働く酒井和美さん(31)=神奈川県鎌倉市出身=は、平和な国の陰の部分に触れた経験を語ってくれた。
コスタリカでは、軍隊の代わりに機関銃、ロケット砲も装備した一万二千人規模の国家警察隊を持つ。有事の際に米国と中南米諸国が協力して防衛する米州機構(OAS)も存在し、自衛隊や日米安保条約を持つ日本と似た仕組みもあるのが現実だ。
中米和平に道筋をつけた功績で一九八七年にノーベル平和賞を受け、次期大統領として返り咲きを果たすとの呼び声も高いオスカル・アリアス氏の秘書、リンシー・マコーマックさんは「それぞれの国で歴史や事情は違うが、日本には軍を持たない方法で進んでほしいですね。困難な道だとは思いますが、中米全部の国から軍を廃棄させる夢を、われわれはまだ捨てておりません」と力を込めて語った。
◇メモ <コスタリカ共和国>
人口約430万人。面積約5万平方キロ。16世紀にスペインの植民地となり、1848年に独立。大半がカトリック教徒。主な産業は、コーヒー、バナナなどの農業。
<コスタリカ憲法第12条>
常設の軍隊は禁止される。公共の秩序維持のために警察力を置く。協定による場合か国家の防衛のためにのみ、軍隊を組織できる。(1949年公布、要旨)
文と写真・吉岡逸夫
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20050810/mng_____thatu___000.shtml