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東京新聞:核心【天災 米の内面も直撃 ハリケーン被害】
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http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050905/mng_____kakushin000.shtml
核心
天災 米の内面も直撃
ハリケーン被害
米南部を襲った大型ハリケーン「カトリーナ」の直撃で、住居を失うなど甚大な被害に遭った住民の多くが貧困層の黒人だったことから、にわかに「人種」が政治問題化する様相をみせてきた。一方、大きな被害が出たルイジアナ州ニューオーリンズ市では、救出された住民が政府の対応の遅れに怒り、避難先での惨状を訴えている。天災が米国民の内面に深いつめ跡を残したといえそうだ。
チャートフ国土安全保障長官は三日、黒人議員連盟幹部と救援活動をめぐり意見交換。黒人女性として米政府の最も高い地位についたライス国務長官が四日、南部の被災地を視察するなど、黒人の国民感情を和らげようと政府は神経をとがらせている。
被害の大きかったルイジアナなど三州は所得水準が低い黒人の人口比率が高い。ルイジアナ州ニューオーリンズ市は人口四十六万の七割近くが黒人で、貧困層はその約三割に上っており、「(ブッシュ)大統領の初動の遅れは、黒人に対する冷淡さによる」との声も上がる。
チャートフ長官は三日の記者会見で、十万人以上の被災者が救援物資を受け取ったと強調。しかし、黒人議員連盟幹部は会談後、「大統領の(対応)結果に対し、黒人の多くは満足できないと思っている」と大統領の初動の遅れを批判した。
米NBCテレビが二日夜、米東部で生中継した被災者支援のためのコンサートで、人気黒人ミュージシャン、カニエ・ウェストさんは台本にない大統領批判を展開。「政府はできるだけゆっくり貧しい黒人を助けようとしている」と発言し、物議を醸した。
ライス長官は自らの出身地でもあるアラバマ州を訪問。国務長官の被災地視察は異例で、黒人長官の視察で批判を和らげる狙いがある。
これとは別に、ラムズフェルド国防長官も四日にルイジアナ、ミシシッピ両州を訪れ、救援活動に当たる軍や州兵を慰問する。
(ワシントン・小栗康之)
■混乱、避難先も悲劇
ルイジアナ州ニューオーリンズ市に冠水で閉じこめられ、一週間ぶりに避難先から救出された住民らは三日、対応が遅れた政府への怒りをあらわにし、避難先での惨状を語った。
同市郊外のルイ・アームストロング空港には同日、救出住民を乗せたバスが次々に到着。ロビーは、飛行機による移送を待つ人々であふれかえった。一角ではヘリで搬送されてきた重症者が、救急医療チームの手当てを受けていた。
市内のコンベンションセンターから来たダーマニク・マギーさん(33)は「水や食料もない上、暑さでお年寄りや赤ちゃんが死んでいった。レイプまで起きた。何かが間違っている。これは殺人だ。人が死のうとしているのに、助けを求められた警官は見て見ぬふりをした」と嘆いた。
マギーさんによると、少なくとも、十八人は死亡したという。
けんかが頻発。パイプで殴られ、重傷を負った人もいたという。ロイター通信によると、トイレで少女がレイプされ、犯人を見つけた人々が男を殴り殺した。
また、レイプされる女性の悲鳴を聞き、助けを求めようと外に飛び出した男性が、州兵の車を止めようとしてフロントガラスに飛びつき、間違って射殺される悲劇も起きた。
空港に到着した住民らは冷房に歓声を上げ、配給されるサンドイッチに手を伸ばした。衣服などわずかな所持品を入れたごみ袋を引きずり、テキサス州へ飛ぶ飛行機への搭乗を待ったが、疲労が極度に達しているのか表情は暗い。
ブッシュ大統領がカトリーナ上陸から四日が経過した二日になって現地視察したことに、マギーさんは「どうして、もっと早く来てくれなかったのか」とやりきれぬ思いを吐露。「なぜギャングは街を燃やすのか。悲しいことばかりだ」とも話した。
(ニューオーリンズ・石川保典)
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