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(写真は、ニューオルリンズに展開する米軍:IAR-Noticiasより)
http://gblx.cache.el-mundo.net/fotografia/2005/09/albumes_katrina/saqueos/img/RTW18D_KATRINA-WEATHER_0830.jpg
ブッシュは「法と秩序の回復」のために被災地を軍事化(エル・ペリオディコ):格好の『実験場』だ!
私は、ハリケーンとそのブッシュ政権の対応に関して、今まで阿修羅に投稿されてきた方々の視点とはやや異なる角度から、これをとらえるかもしれません。
●スペイン・カタルーニャの新聞エル・ペリオディコは9月4日付の記事で次のように報道しています。最初の部分だけですが和訳します。
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http://www.elperiodico.com/default.asp?idpublicacio_PK=5&idioma=CAS&idnoticia_PK=239602&idseccio_PK=4&h=050904
Bush militariza la zona afectada para "restaurar la ley y el orden"
ブッシュは「法と秩序の回復」のために被災地を軍事化
メルセデス・エラベス ニューヨーク特派員
ハリケーン・カトリーナによる大規模な人的・経済的カタストロフィを前に、その遅く冷淡な反応に対して一気に集まる批判にせきたてられて、米国大統領ジョージ・ブッシュは昨日、7千名の兵士を被災地であるルイジアナ州の州都ニューオルリンズに追加派遣した。それは「法と秩序を回復させる緊急性」のためであり、付け加えて「救済と避難の必要な者を助ける」ことである。それから2時間もしないうちに、ペンタゴンは1万人のナショナル・ガードを派遣すると通達した。この3日以内に被災地には1万7千名もの武装兵士が到着することになるだろう。
「米国では我々は困難な状況にある国民を見捨てることはしない」と大統領は明言した。同時に、ハリケーンによる災害に対する政府の非能率な行動は「受け入れられない」という土曜日にラジオの放送での発言を再確認した。
【以下、略】
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●上の記事中にある『政府の非能率な行動は「受け入れられない」という土曜日にラジオの放送での発言』とは次のようなことです。(Yahooニュース9月2日:スペイン語より)
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http://mx.news.yahoo.com/050903/8/1i2ld.html
【前略】
ニューオルリンズでブッシュは、略奪と暴力を止めることおよび都市の需要に対する援助で、彼の政府が失敗したことを認めた。
「この結果は十分なものではない」とブッシュは金曜日に、民主党と共に共和党からも多くの避難の声が上がる中で、言い放った。
【後略】
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●ブッシュにとっては、「第一が市民の救済」ではなく、「第一は法と秩序」となります。
9月2日付のIAR-Noticiasは次のような記事を載せています。始めのまとめの部分を和訳します。掲載されている写真には、武装兵士たちの姿と同時に、自宅の前でライフルやスタンガンを持って自衛する中産市民の姿が写っています。
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http://iarnoticias.com/ultimo_momento/norteamerica/0631_pandillas_armadas_02sept05.html
Tropas y pobladores "tiran a matar" contra las pandillas de saqueadores
軍と住民は略奪者の集団を「撃ち殺す」
野戦用のM−16で武装した帝国の特殊部隊である軍とナショナル・ガードが、救助と医療活動を妨害する武装略奪集団と麻薬使用者集団の行動を抑えるためにこの地域に展開している。同時に、中産階層と上流階層の者たちは、彼らの「私有財産」の保持を防衛するためにすでに自ら武装している。
【後略】
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●私はこれを見たときに、ベネズエラで「自分の財産を狙う貧乏人のならず者ども」に対して防御を固める中産市民たちの姿を思い出しました。上流階級の連中はさっさと米国に財産の多くを移動させており、外国に確保している別荘地に移ってしまえば済むことですが、そこまで行かない階層の者たちは本当に死に物狂いなのです。
このような階層の者たち(大多数が欧州系の血筋を守っている)が「反チャベス」謀略を陰に日に支えているわけです。ベネズエラだけではなく、ブラジルなどのラテンアメリカ諸国ではこれが日常で、ブラジルには典型的な中流階層の親戚や知り合いがかなりいますが、彼らの態度は国境を越えて共通しています。「貧乏人のならず者たち」が自分たちの築き上げた財産を強奪するために自分たちを殺しに来る(実際にそれはしばしば起こること)、という恐怖感は、理屈を超えています。
一方で極端な貧困と飢餓と混乱、一方で中流〜高級住宅地の広がるラテンアメリカでは、これが通常の姿であり、中流の市民たちは「法と秩序」維持のための軍や警察を強く求めることになります。ブッシュが誰のために何をしようとしているのか、これでもうお解りでしょう。
●スペインの新聞やTVは、先日来、「米国が第3世界の都市(una ciudad del tercer mundo)を自らのうちに抱えた」という論調を繰り返し流しています。スペイン人がいう「第3世界の都市」というイメージは、当然ですが以上のようなものです。
スペイン国内でもそうなのですが、米国でも、普段は下層市民(米国では黒人を中心にしたマイノリティー、スペインでもアフリカ人、アラブ系、インド・パキスタン系、中南米人などの外国人がその中心)たちの多くがギリギリでも何とか生活を維持できており、「第3世界の都市」にならずに済んでいるのですが、もしも自然災害や戦争、あるいは極端に進行する経済不安などの中で、いつ何時、「第3世界の都市」になるか、わからないのです。ロンドンやパリでもそうでしょうが、マドリッドやバルセロナのような都市に住んでいると、もしも都市機能がストップし、あるいは都市全体の経済力が20%でも落ちたならば、いつでも「第3世界」化するだろう、という思いが常にしています。
●ブッシュ政権にとって、今回のニューオルリンズ(スペイン語でNueva Orleansヌエバ・オルレアンズ、つまり「新オルレアン」)は、格好の『巨大な実験場』なのかもしれません。米国内の都市が「第3世界」化していく際にどのような対応できるのか、という『実験』です。ひょっとすると、そのために意図的に対応を遅れさせたのではないのか、という気すらします。
最初にあげたエル・ペリオディコの記事からは、米国政府は、ニューオルリンズの黒人下層市民たちに対する物的援助を第一に考える姿勢を持たないことが、伝わってきます。
(こんなことを言っていると、日本人の間では「またあのヒネクレ者が」といわれるかもしれませんが。)