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●突然のユダヤ人スパイ事件
モハマド・ハタミ大統領のもとで、イランがかつてない動きをしていた時に、“ユダヤ人スパイ”のスキャンダルが、国内で突然持ち上がった。
イランは、外交・政治・経済の分野で、近隣のアラブ諸国と、西ヨーロッパ諸国と結びつきを深めようとしており、アメリカ政府からも、重要な交渉を開始する話が出ていたところだった。イランにとっては、このスキャンダルは晴天の霹靂だったが、二つの陣営が、このスキャンダルを派手に盛り上げたのである。
一つは、反ハタミを掲げるイラン国内の過激派であり、もう一方は、すでに任期切れを待つ身となっている“レバノンの殺し屋”アリエル・シャロンと、ブナイ・ブリスのユダヤ名誉毀損防止連盟(ADL)などの国際“ユダヤ”組織、そしてイスラエルの過激派である。
6月の最初の週に、イランの国営報道機関は、ファールス地方シーラーズにある情報局長官が、次のように語ったと報道した。
「シオニスト(イスラエル)のために働いていた、13名のスパイが逮捕された。身元が判明し、逮捕されたそのスパイは、スパイネットワークの中で重要な役割を果たしていた。この逮捕は、裁判所の命令によるものである。」
その報道の中では、その他のイラン政府当局者の言った内容が引用されていたが、その容疑者の一部あるいは全部がユダヤ人だと言っていた人は、誰もいなかった。しかし、その逮捕者の一部はイランのユダヤ人であり、シーラーズのラビ長もその中にいるかもしれないことが後に明らかになった。
調査はまだ終わっていないので、このイラン人たちが告発された事件の真相は、まだわかってはいない。
イランの過激派分子は、「スパイは処刑すべきだ」と要求しており、ADL、シャロン、その他のイギリス寄りのシオニスト・ロビーは、「欧米の政府はイランに圧力をかけて、そのユダヤ人容疑者たちを釈放させるべきだ」と要求している。イラン国民は、「これは内政問題だ」という反応を示している。
また、その容疑者の一部にユダヤ人が入っているからといって、外国のためにスパイ活動をしたかもしれないイラン国民を、イランが裁判にかけるという主権がなくなるわけではない。この事件の核心は、この事件が原因となって、イスラエル・アメリカと、イランの間で深刻な争いが起こるかもしれないということである。
ハタミ政権は、内部からの宣伝活動と、外部からの悪意のある宣伝活動との間にはさまれている。容疑者の逮捕が発表されるや否や、アメリカのADLとシオニスト・ロビーは、その問題に関する攻撃を始めた。
ADL会長エイブ・フォックスマンは、6月9日の『エルサレム・ポスト』で、次のように述べている。
「イランは、小さいユダヤ人社会を、イラン国民として、ユダヤ人らしく生活させてきた。しかし、イランは、古典的な方法でユダヤ人を突然スケープゴートにした。それは、『イランは変わっていない』と表明しているようなものである。」
主要ユダヤ人団体リーダー会議は、ADLと一緒になって、イラン政府がそのイラン国民のユダヤ人容疑者を釈放するように要求した(“主要ユダヤ人団体リーダー会議”の会長は、大手化粧品会社の跡継ぎ、ロナルド・ローダーである。ローダーは、任期終了間近となっているイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフの資金提供者である)。
まず最初に、その逮捕は、3月から4月にかけての間に行われたという事実を覚えておく必要がある。このことは公表されていないが、アメリカとイスラエルを含むある諸政府は、4月にその事実を知っている。
聞くところでは、イランと友好的な欧米の政府と、有名な宗教人の助けによって、外交ルートが開かれたそうである。それは、この事件を解決するのが目的だが、この事件がイラン叩きを始めるための口実として使われないようにするためでもある。イランは特に、ハタミ大統領の巨大な業績が叩かれることを避けたいのである。
調査がまだ終わっていないうちに、公式の要求をイランに突きつけるのは、容疑者の利益にもならないし、イランと欧米社会の共同の利益にもならない。
イランは主権国家であり、イランは、過去において、ユダヤ人や他の宗教的少数派の人々を差別したことはないのである。たとえ善意から出たものであっても、外国がこのような形で干渉することは、事態をもっとややこしくするだけである。
●スキャンダルのタイミング
“スパイ・スキャンダル”が発表されたのと同じ週に、アメリカ政府と主要8ヶ国(G8)は、イランにある興味深い提言を行った。最も重要なのは、G8の外相が、6月10日にケルンで発表した共同声明で、次のように述べていることである。
「我々は、イランともっと親しい関係を持つことを望んでおり、イラン政府が、中東和平プロセスにもっと積極的なアプローチを行うことを強く勧めたい。」
その声明は、さらに次のように述べている。
「最近、イランでは最初の地方選挙が行われるなど、イランの政治に発展が見られるのは喜ばしいことである。」
G8外相は、イランが国民全体の人権のためにもっと尽力するように強く促し、またあらゆる形態のテロを非難し続けるように強く勧めている。
一方、クリントン政権は、イラン、スーダン、リビアに課した制裁措置がマイナスの影響を与えているとして、それを打ち消すような法律を施行する決定を行った。また、それらの国に、穀物などの食料品を売る手助けをするという決定も行った。
経済・事業問題担当国務次官スチュアート・アイゼンスタットは、「その法律は、月末までには、施行される予定である」と言った。アイゼンスタットは、下院農業委員会で、次のように述べた。
「大統領の基本的な決断は、『飢餓は、対外政策の問題であってはならない』というものである。」
「行政府は、競争相手の活動を監視する予定である。それは、イランと他の2ヶ国に販売を行う際に、アメリカが貸付を行う必要があるかどうかを確認するためである。」
ロイターによれば、アメリカのニキ・トレーディング社は、イランの政府貿易社から、アメリカの農産物を355トン買いたいという注文を受けているが、アメリカ政府の承認を待っていて、6ヶ月以上も販売を控えているそうである。
一方、クリントンの近東問題上級顧問で、国家安全保障会議の中東問題主任を務めているブルース・リーデルは、アラブの日刊新聞『アル・シャーク・アル・アウサット』の6月10日号で、次のように述べている。
「アメリカは、サウジアラビアとイランの関係が改善されつつあることに、勇気づけられている。我々は、この重要な発展を心から歓迎する。我々は、この発展は湾岸地域の緊張を減らすために、前向きで重要なステップだと考えている。」
この戦略的に重要な発展は、主として、イランが重要な役割を果たせるかどうかにかかっている。イランが、近隣諸国や欧米諸国と良い関係を持ち続けることは、中東と中央アジアの安定にとって、必要不可欠である。
今回の事件が、これらの関係にとって大きな危機となるかどうか、あるいは、この事件に対して賢明な対処がなされるかどうかは、まだ見守っている必要がある。