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とある超有名国立大学キャンパスの近く。マンションの一室に体格のよい、いかにも外国人らしい男達が多数吸い込まれて行く。
その日は金曜。実は男達はムスリムでそしてマンションの一室はモスクなのだ。
30人ほど集まった男達の職業や国籍は様々だ。パキスタン国籍の自動車屋、超有名国立大学の大学院生、名も知れぬ私立大学の留学生、貿易商、分っているだけでもこれくらい。
私は知人のアリに連れられてきた。パンダを見るがごとくムスリムを見たいといった私の希望をかなえてくれたのだ。
今からここで礼拝が始まるという。しかし私は直接彼らの姿を見ることは出来なかった。信仰心がないからだ。
礼拝の最中は、やはり私と同様物珍しさで来たが、イスラムへ帰依などしてもいないタイ人の友人と学食でアリが礼拝から戻るのを待つ。
礼拝後、年長者で信仰心厚い者が聖職者の代わりにイスラムの教えについて一同に熱心に語りかけたとかでアリが戻ってきたのは2時間以上も後の頃だったが。
アリはそのモスクでの知り合たジャﾌｧリという青年を連れてきてくれた。二人とも湾岸諸国出身者のスンナで息投合、まるで兄弟のように親しげに話している。そして私達にもこちらが質問する以上に色々話してくれた。
まずモスクで年長者で信仰心厚い者が何を語ってたのか。
アリ「簡単に言えば、より善を行えということで、かなり抽象的。あまり政治的なことは話してないよ」
なぜ
ジャﾌｧリ「日本人は政治の恐さを知らないよ。日本で余計なことを言って、それが本国に密告でもされたら生きていられなくなるよ。だから本当に信用できる相手とじゃないと政治の話はできないね」
じゃああまり政治的なことは話したくない?
ジャﾌｧリ「話したくないね」
アリ「そんな話したくないよ」
では質問を変えて、日本の生活はどう?
ジャﾌｧリ「日本人本当優しいよ」
アリ「礼儀正しいし、細かいし。あまり細かすぎるのは好きじゃないけどね」
アリ「そうそう 最近さ 日本の警察がうちにきたよ 色々聞いて行ったよ 同居してる友達のこととか でもすごい優しかったよ 」
えっ 警察?
アリ「そう 名刺も貰ったよ」
名刺に何やら怪しげな英語が・・・どこにも警察の文字は無いが・・・
しかし裏に日本語で公安調査庁の何某と書いてある・・・
どうやら公安調査庁は国内のムスリムのお宅訪問を最近仕事にしているようだ。
ジャﾌｧリ「本当 日本の警察優しいよ 国の警察超恐いよ 信じられないくらいよ」
向こうの警察はそんなに恐いのか実感ないから全然わからないが ところで二人と学生だよね?
ジャﾌｧリ「毎日勉強大変よ 日本の女の子可愛いからね でも絶対付き合わないよ 文化が違いすぎるから結婚とか無理でしょ。だから付き合ったら絶対別れるね 心が痛いよ」
あれっ おなじ話アリからも聞いたことあるよ
アリ「そう 本当遊んだら心痛いよ だからね ルーマニア人ダンサーとかそういうのと付き合うわけよ」
ジャﾌｧリ「ルーマニア人本当悪いよ すぐ人騙すよ 誰とでも寝るし。肌は白いけどあそこは真っ黒よ」
ははは なるほど・・・ところで女と遊んでいいの?イスラム的に?
アリ「本当はよくないよ でもジャﾌｧリはビールも大好きだしね」
ジャﾌｧリ「ビール美味しいね」
・・・だけどムスリムなんでしょう
アリ「本当色々日本に来てストレス多かったよ 日本語も全然分らなかったし そんなとき音楽聴いても女と遊んでも心晴れなかった でもコーランの朗読テープ聞くと本当心が落ち着いたよ」
ジャﾌｧリ「その話 長いよ チキンが溶けるよ」
二人ともイスラムの教え通り〆られた鶏やら羊の肉、それにバンｸﾞラディシュ産の長米など色々彼らの口にあう者を礼拝所のすぐ近くの売店で買ってきている。売店がなりたつということはそれだけムスリムの数も多いのだろう。
ところでそんなふざけててもイラクでの米軍の活動には怒っているのでは?
アリ「また 政治 好きだね ジャﾌｧリはねフセイン大統領を好きだったよ フセインが捕まった時は俺ジャﾌｧリのこと凄い笑い者にしてやったよ」
ジャﾌｧリ「フセインは本当は名前に勇敢な者という意味があるよ。実際本当に勇敢に戦ったけど睡眠薬剤で米軍に捕まったよ。フセインが自分から投降したとか米軍の発表はデタラメだよ」
アリ「なにが本当かわからないけどね でも一番悪いのは米軍じゃなくてアラブの大統領よ。本当みんな悪いやつばっかりよ。見て イラク あんな武器がなくて人も少ないのに米軍に勝ってるよ ムスリムが。アラブが一つになれば一瞬で米軍は壊滅するよ
それなのになに アラブの大統領 本当みんな悪い奴ばっかりよ」
えっ でも 亡くなったアラファトとかリビアのカダフィとかどうなの あれも悪いの?
ジャﾌｧリ「あの二人が一番悪いよ みてアラファト アラブ人が渡した何百億ドルどこにいったの
死んだアラファトは高級別荘何戸も持ってたよ。 カダフィも評判本当悪いよ」
さっきからアラブって連発するけどそれぞれ国が違うでしょ?
アリ「あんまり関係ないよ」「うちの部族は3カ国にまたがって生活してるよ。国とか日本の県みたいなものだよ」
ジャﾌｧリ「アラブ語の言葉になまりがあるけどね それぞれの国で」
へーそうなんだ ところでさ やっぱり米国人とか嫌いなの
アリ「変な質問ばっかだなあ 悪いのはどの国も大統領よ 米国の軍人でも下の人は関係ないよ」
へーそうなんだ じゃあさ アルカイダとか入って戦うのはダメ?
ジャﾌｧリ「そんな勇気無いよ」
アリ 「そうそう ジャﾌｧリの友達で本当悪いのがいてさ 日本の花火大会の日に花火の下でアラビアのお母さんに電話かけてさ お母さん 戦争だ 死ぬかもしれないって騙した奴 あまりのブラックジョークで笑えないよ というか親不孝もいいとこだよ」
ジャﾌｧリ「そういやさ この前知り合いから俺の友達がジハードで殉教したって聞いて 本当みんな泣いたよ いい奴だったって そしたら死んだはずの本人が目の前に現れて・・・知り合いのブラックジョークだったと・・・」
なんか聞いてる限りでは凄い面白いんだけど・・・そのブラックジョーク
ところでジハードと言えばイラクの自衛隊とかどう思ってるの
アリ「イラク本当に危ないよ 俺は金貰っても絶対いかない。早く帰った方が良いよ」
ジャﾌｧリ「自衛隊が通るクェートでも報道されてないけどムスリムのテロがあったよ 最近危ないよ」
へー そうなんだ クェートでもテロか ところで今日は今から何するの?宗教の勉強とかあるの?
アリ「ｳｸﾗｲﾅ人のお店に行ってくるよ」
・・・
そうして長い間我々を待たせていたかれらはあっというまにネオン街へと消えて行った。
日本人の青年と少しも変わらない遊び好きな彼ら。
しかし日本人の青年とは何かが違う。戒律を破りに破っていても決してムスリムであることを彼らは否定しようとはしない。多少はぶれても「アッラーの他に神は無し。ムハンマドの後に預言者無し」という本筋からは絶対に外れない。
欧米そして日本がイスラムの地を汚し続けるのであれば、いつしか遊び好きな彼らの心さえも憎しみの炎がともる日が来るかもしれないと私としては少し不安になったのであった。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。