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7月16日―メディアを創る
◇戦争を想像する
16日の毎日新聞、「近聞遠見」で岩見隆夫が次のようなエピソードを紹介していた。さる6月23日、沖縄戦戦没者慰霊祭に参列するため沖縄を訪れた河野洋平衆議院議長は、ホテルの部屋に届けられた「沖縄戦新聞」を見てびっくりした。この「沖縄戦新聞」は、琉球新報社が、戦後60年報道の一環として、昨年7月から毎月一回発行しているもので、河野議長の目にとまったものは1945年6月23日の終戦の惨状を報じたものだった。
「沖縄戦 事実上の終結、牛島司令官ら自決、重傷者に青酸カリ、死ねない兵には銃向ける」などの見出しとともに、野戦病院の負傷者約1000人が命令で命を絶った場面が、看護要員だった女子高生(当時17歳)の証言で再現されている。
「強烈でした。戦争を知らない若い議員に是非とも読ませたい」と言って河野議長は50部買って帰京したという。
このエピソードは何を物語るのか。河野議長でさえ沖縄戦のことを殆ど知らなかった。そして、偶然目にした沖縄戦の光景に驚き、認識をあらたにしたのだ。
戦争体験者が日本から消え去る日も遠くない。しかしそれを危惧するには及ばない。戦争を知ることはいつでも出来るのだ。史実が保存され、それが包み隠さず我々の前に示されれば、そして我々が戦争を知る努力を怠らなければ。
戦争を体験しからといっても、その体験から学ぼうとしない限りその人は戦争を知ることにはならない。戦争の時代を生きたからといって、戦争の実態に関する情報に接しなければ本当の姿はわからないままだ。
3泊した北京のホテルで、毎日「抗日戦争」の記録フィルムがテレビで流されていることを知って驚いた。こんな画像を毎日見ていると、戦争を知らない中国の若い世代が日中戦争を常に念頭に置く事も頷ける。日本の右翼的な言論人たちは、これこそが反日教育であり反日感情の元凶だと言い立てるであろう。しかし果たしてそうであろうか。
私はこの映像を見ながら、史実を知ることの重要性を再認識した。抗日戦争を知らない世代にそれを画像で教える。その結果若い中国人の中に反日感情を持つ者が増えたとしても、それをもって意図的に反日教育を行っていると決め付けていいのか。むしろ日本の教育こそ日中戦争の事実を教えなさすぎるのではないのか。
被害を受けたものが恨みを抱くのは当然の感情だ。悪い事をしたほうがそれを思い出したくないのも当然だ。あるいは自らの誤りを認めたくないという感情を抱くのは当然だ。
しかし重要なことは、戦争の事実を客観的に知ることだ。自虐史観であれ皇国史観であれ、客観的な事実を知れば知るほど戦争の悲惨さ、不条理さに思いをめぐらさざるを得ないであろう。どのような史観にたった歴史教育であれ、戦争の史実を教える時は、残酷な場面を避けてはならない。人が人を殺し、人が人に殺されるということ、それが如何に理不尽であり人間性に反するか、そこから目をそらすような歴史教育は不完全である。そしてそのような事実をこそ、人をして反戦に至らしめる。まともな感性を持った人間であれば、反戦にならないほうがおかしい。
◇ミサイル防衛システムを認めた自衛隊法改正案
15日の東京新聞に重要な記事が出ていた。参議院外交防衛委員会が14日、ミサイル防衛システム(MD)の運用手続きを定める自衛隊法改正案を自民、公明両党の賛成多数で可決したという記事だ。この法案は20日本会議で可決、成立する見通しだという。
これにより、他国がミサイルを発射する明確な兆候がある場合は防衛長官が迎撃を命じることが出来るようになるという。さらに実際にミサイルが発射されれば、現場指揮官の判断だけでミサイルを迎撃できることになるという。
問題は、これほど重大な権限を防衛庁長官、自衛隊制服に与える法改正が、国会でほとんどまともな審議が行われないまま成立するということである。
東京新聞の指摘によれば、防衛庁自身が、さらには自衛隊制服までもが米国の迎撃ミサイルシステムの実像を把握していないらしい。国会審議の過程で満足な答弁が出来ず、法案のほころびが次々と判明したという。それでも法案は成立するのである。
一例として武器輸出三原則に関する防衛庁長官の答弁が指摘されている。昨年末の官房長談話で武器輸出三原則が緩和され、米国向けのMD関連部品に限って、輸出が解禁されたばかりである。それにもかかわらず、14日の参議院外交防衛委員会で大野長官は、「場合によっては第三国への供与があり得る」とあっさりと、官房長談話を拡大した。その答弁を誰も問題としない。
また、MD運用のための米国との情報共有についても、米国が日本の提供する情報を使って攻撃や迎撃を行えば憲法が禁じる武力行使や集団的自衛権に抵触することになりかねないのに、どのような情報提供を日本が米国に行うかについて一切決まっていないが如きである。
こんないい加減な国会審議があってよいのか。ここまで国会の安保審議を空洞化させたのは、野党第一党である民主党が日米安保協力に積極的であるからだ。憲法9条改正に積極的であるからである。自民、民主の2大政党下では、安保政策の歯止めがまったく利かなくなってしまったようだ。
◇テロ送金対策強化
テロ対策といえば何でも出来るといわんばかりだ。16日の産経新聞が一面で金融庁による送金規制の新方針を報じた。
すなわち金融庁は来年早々の通常国会に関連法案を提出し、これまで200万円超の送金の際に必要な本人確認について、10万円以上にまで対象額を大幅に引き下げるという。さらにまたテロ資金供与の疑いのある取引を当局に届けるよう、公認会計士や弁護士に義務づけることにするという。
そもそも現在の本人確認制度は、2001年9月11日の米国多発テロを受けて平成15年1月から施行された本人確認法に基づいたものであるという。それがわずか2年後に200万円から10万円へと一気に送金額が引き下げられようとしている。
ロンドンでの同時テロを受けて、テロ資金を根絶するための対策強化の一環であるという。米・英への協調政策なのであろう。これからもテロ対策の名の下にどんどんと規制が進むであろう。テロに狙われる米・英にとってテロ対策は死活問題である。そしてどんなに策を講じても米・英はテロの脅威から逃れる事ができないのだ。
米・英がテロに狙われるのには明確な理由がある。それは彼らの中東政策がアラブ過激派の恨みをかっているからだ。単なる貧困や差別からくる無差別なテロではない。米・英軍が行ってきた宗教的敵意やアラブ人に対する攻撃、虐待、差別などに対する報復である。それらの恨みは日本とっては本来まったく無関係のものだ。
米・英の中東政策が正しくないからこそアラブの反感を買うのだ。百歩譲って米・英の中東政策が間違っていると言わないまでも、日本は彼らの中東政策を支持する必要性はない。彼らの中東政策から距離を置くべきなのだ。
それにも関わらず、彼らの中東政策を支持し、自衛隊を派遣して米・英のイラク攻撃に協力するものだから、アラブのテロ組織に敵視されるのである。
本当に狙われる前に日本は「テロとの戦い」から中立になるべきだ。
◇誰も書かないことが多すぎる
時事通信が15日にまとめた7月の世論調査では、小泉内閣の支持率は前月比2・4ポイント減の38・0%となった。一方不支持率は38・3%である。不支持率が支持率を上回ったということは大きなニュースである。しかしこの記事を載せたのは東京新聞だけである。大手新聞は小泉首相に不利になることは見事に自粛しているようだ。
来年度の予算編成作業が小泉首相の鶴の一声で遅らされたという。16日の各紙がこれを一斉に報じている。例年7月中に閣議了解しているにもかかわらず何故遅らせたのか。
表向きは参議院での郵政民営化法案の審議に全力を傾けたいということらしい。しかし本当の理由は06年度の予算案が05年度の予算に比べて、一層厳しいものにならざるを得ないからだ。そんな予算原案を郵政民営化の審議中に閣議了解しては、ますます国会審議が苦しいものになる。郵政民営化法案の参院審議に悪影響を及ぼす。そこで小泉首相の一声で後回しにさせられたのだ。
それにしても郵政民営化をめぐる参議院での国会審議はお粗末である。聞くほうも答える方も、中味の議論は一切無い。たまたま聞いていた江田五月の質問にはあきれ果てた。私もあなたも二世議員です。参議院は良識の府であり衆議院の判断をチェックするところです。私は衆議院議員と参議院議員を行ったりきたりしました・・・郵政民営化法案は死に体法案だ・・・こんなことを長々と質問で喋っているのである。
答える小泉首相も相当な答弁だ。「法案が生きているからこそここで答弁しているのです・・・」
民主党の大塚耕平氏が「首相は法案のどの部分に詳しいのか」と質問されると、待ってましたとばかり官僚が用意した答弁を下を向いて読み上げる、
「郵政改革の五原則にのっとり国民の為になる民営化法案を考えた。五原則を読み上げます。経済活性化原則、利便性原則・・・」、郵政族に気配りを見せて、「郵便局のシンボルマークは愛着がありますよね。あれは変えなくていいのです」、「子供の頃は本当に切手を集めるのが楽しみでした。さまざまな大きさ、形、図柄を眺めてよく楽しんだものです・・・」
こんなやりとりが一日何億円もかけて延長した国会の審議なのか。
小泉首相は国会終了後、例によって若い記者を相手に行う記者会見でこう答えている。
「今日の答弁は丁寧だったでしょう?わかりやすかったでしょう?そう思わない?」そしてこれが茶の間のテレビで流れる。
日本の政治家は楽な商売だとつくづく思う。
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