★阿修羅♪ > 戦争71 > 967.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
ロンドン同時テロ:アルカイダとは異なる実体なき組織か?
ロンドン同時爆破テロ事件で、国際テロ組織アルカイダ系を名乗る団体がウェブ上に犯行声明を出した。しかし、イスラム過激派サイトをウオッチしている専門家らは「犯行声明を出した組織は実体がない可能性が極めて高い」と分析する。むしろ最近のテロの傾向として問題なのは、「アルカイダ」というブランドを利用するイスラム過激派が世界に拡散していることで、「テロ=アルカイダ」と決めつけ、繰り返されるテロをアルカイダだけの問題にすり替えてしまう恐れだと指摘する声もある。【栗田慎一】
声明を出した団体は、正式には「欧州の聖戦アルカイダ秘密組織」を名乗る。初めて出る組織名だ。
しかし、日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究主幹の保坂修司氏は、「声明が出たのは、アルカイダが従来使ってきた掲示板ではない。犯行組織しか知り得ない秘密の暴露もない。組織名にある『秘密』を使った団体はこれまですべて実体がなかった」と説明する。
中東調査会の研究員、高岡豊氏は「過激派が普段行う『殉教者』への称賛もない」と指摘。この掲示板には、世界のイスラム過激派から「偽物だ」との書き込みが集まっているという。
両氏とも犯行は「イスラム過激派」との見方を強めているが、今後、アルカイダ系組織が実際に犯行声明を出す可能性はあるという。
保坂氏は「『9・11』以降、英国内のイスラム教徒が大量逮捕され、アルカイダでなくてもイスラム教徒の反発は大きい」と指摘。テロの土壌が拡散していることこそが問題だという。
イスラム原理主義に詳しい東京外国語大学の飯塚正人助教授は「昨年のマドリード列車爆破テロは、スペイン軍のイラク撤退を導いた。以降、アルカイダを名乗る組織が急増した」と指摘する。
飯塚氏によると、アルカイダ系を名乗ってイラクで活動するザルカウィ容疑者も、以前はアルカイダ指導者のビンラディン容疑者と対立していた。それが、アルカイダを名乗れば集金力と過激派への影響力が高まることから、関連組織を名乗ったに過ぎないという。
国際ジャーナリストの田中宇氏は「英国は犯行組織を『アルカイダ』とみなし、対立軸を鮮明にした。実際にアルカイダかどうかは別にして、この対立軸はイラク戦争で深まった国際社会の亀裂を修復するのに好都合だが、テロという問題の本質をわい小化する恐れもある」と強調した。
▽欧州のイスラム社会に詳しい内藤正典・一橋大大学院教授の話
移民を中心とした欧州のイスラム教徒は全体としては穏健だが、一般的に低所得層に属しており、その意味では現状に不満を抱いている。一方、英国は70〜80年代に中東の母国を追われた過激なイスラム宗教指導者を人道的な立場から受け入れてきた経緯がある。こうした指導者の説教で、元々穏健だった移民が思想的に影響を受けてしまっている。イスラム過激思想についてのこうした土壌は確かにある。
犯行声明は「アルカイダ」を名乗っているが、実態は不明だ。しかし、今回の事件によるダメージは英米だけではない。声明で名指しされたデンマーク、イタリア以外の他の欧州各国も、イスラム系移民を抱えており、決して人ごとではない。
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050709k0000m040116000c.html