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【社説】2005年06月25日(土曜日)付
イラク駐留 撤退への道すじを描け
米英の占領当局がイラクに主権を移譲して、28日で満1年を迎える。だが、武装勢力による爆弾テロの猛威は続く。家族連れでにぎわうレストランまで標的にした無差別のテロも含め、数十人が毎日のように殺される。
イラク南部のサマワにいる陸上自衛隊の車列が、遠隔操作と見られる爆弾で襲われ、車両が被害を受けた。幸い隊員らにけがはなかったが、一歩間違えば人命にかかわる危ない事件だった。
地元警察は、自衛隊を狙った犯行と見ている。サマワは比較的治安が良く、自衛隊に対する住民感情もいいとされてきただけに、イラク情勢がいっそう厳しさを増していることを裏づける出来事といえるだろう。
米軍の死者は1700人を超えた。それでもブッシュ大統領は「正しい方向に進んでいる」として、14万人にのぼる米軍の駐留を続けるつもりだ。チェイニー副大統領は「武装勢力の抵抗は最後の局面を迎えた」と強気を崩さない。
だが米国の世論にも、駐留への疑問が色濃く漂い始めた。最近の調査だと、イラクからの米軍撤退を支持する声は6割に達した。開戦時には戦争支持が圧倒的だったが、いまや「戦争は誤りだった」と考える人が半数を超えた。
いつになったらイラクから撤退するのか、具体的な日程を示せ。与野党の政治家から出口戦略が見えないことへの不満の声が上がりだした。
政権を揺るがすほどの流れではないが、来秋の中間選挙に向けて圧力が増していくのは確実だ。
ブッシュ政権は出口戦略をこう描く。米軍の掃討作戦で治安は間もなく安定し、同時にイラク人の治安部隊や軍が育ってくるので、それにバトンタッチして引き揚げる。
実情はその通りに進んでいない。治安と並んでイラク国民が切望するのは、水や電気などの生活インフラの復旧と整備、そして雇用だ。この1年、そのどれもがほとんど手つかずのままである。
外国軍が力で反対を押さえつけ、その間に民主的なイラクを造るという戦略の破綻(はたん)がますますはっきりした。イラク人によるイラク再建をもっと優先させることを考えるべきだ。
反米武装勢力の中心と見られるイスラム教スンニ派だけでなく、新政府の中核を担うシーア派の中にも、駐留米軍への反感が強い。駐留はイラク再建の支えというより、障害になっているという認識なのだ。米国は撤退への道筋や日程を示す必要があるのではないか。
人道支援を目的とする自衛隊にしても、当初の給水事業はすでに今年2月で終わった。道路や学校施設の補修といった、宿営地から離れたところでの作業が中心になり、それだけ危険が増す。
国連決議は、正式政府ができる12月末を外国部隊の撤退のめどとしている。日本政府もサマワの状況を見極め、撤退の段取りを真剣に考える時期である。
http://www.asahi.com/paper/editorial20050625.html#syasetu1