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【国際面】2005年06月17日(金曜日)付
テロ対策か人権か 米グアンタナモ基地 存廃問題で揺れる政権
【ワシントン=石合力】米同時多発テロ事件以後、アルカイダ戦闘員らの収容所として使われてきたキューバの米グアンタナモ基地の存続をめぐり、ブッシュ政権高官の発言が二転三転している。相次ぐ虐待報道や国際人権団体の批判を受け、イスラム圏の反米感情を引き起こす象徴的存在になっている半面、閉鎖した場合の代替策が見あたらないためだ。テロ対策と人権との間のジレンマに直面している。
「いままでずいぶん議論を重ねてきた」
ゴンザレス米司法長官は15日、滞在先の英国で記者団に対し、ブッシュ政権がグアンタナモ基地の存続問題を以前から検討してきたことを認めた。閉鎖を検討したことはないとするラムズフェルド国防長官やチェイニー副大統領らの発言を修正するものだ。
●裁判経ず長期に
ゴンザレス長官は「閉鎖する時は来る。究極的には最高司令官(大統領)が決断することになる」とも語った。
ラムズフェルド長官らは、裁判手続きを経ないまま長期拘束している収容者について、過去に釈放した数人が再び戦場に戻った事例などを挙げ、拘束を正当化してきた。
この問題は15日に開かれた上院司法委員会の公聴会でも取り上げられた。野党民主党のバイデン議員が「いつをもって紛争の終結になるか定義したことがあるのか」とただしたのに対し、司法省側の答えは「定義したことはない」。同省の担当弁護士は「法的には永遠に拘束できるというのが我々の立場だ」と言い切った。
ブッシュ政権は、アルカイダ戦闘員らについて、戦時ルールに従わず、制服も着ていないなどとしてジュネーブ条約の保護を受ける「戦時捕虜」ではなく「敵性戦闘員」として管理。独自に人権上の配慮をしていると説明してきた。
しかし、公聴会で証言した人権弁護士は担当したオーストラリア籍の男性収容者がアフガニスタンではなく、パキスタン国内で拘束されたと指摘。カイロに一時移送され首まで水につけられる拷問を受けて、白紙の調書に署名させられたなどと証言。「これは米国の司法制度ではない。我々の恥だ」と厳しく批判した。
●「コーラン」で火
同基地内の収容者取り扱いをめぐっては、5月初めに米誌ニューズウィークがコーランを便器に流したとする「コーラン冒涜(ぼうとく)報道」(後に撤回)で火がつき、国防総省は内部調査でコーランを踏みつけるなどの「不備」が判明したと発表。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは5月下旬に発表した年次報告書で同基地を「現代の強制労働収容所」と批判した。対テロ戦争とイスラム社会の対米世論という「二つの戦争」(バイデン議員)をどう戦うかについて、米国内での議論はまだ定まっていない。司法委員会のスペクター委員長は、「拘束者の法的な権利などについて法制化する必要がある」との姿勢を示しているほか、民主党側は人権侵害などに関する独立の調査委員会の創設を要請。問題点を浮き彫りにしたい考えだ。
◇ ◇
◆グアンタナモ基地をめぐる米高官の発言
●ブッシュ大統領
「米国を守る最善の方法について、あらゆる代替策を探っている」(8日)
●ラムズフェルド国防長官
「米政府内で閉鎖を検討したことはない」(8日)
●チェイニー副大統領
「基地の閉鎖を求める人々はいずれにしても我々の政策に同意しない連中だ」(13日)
●ラムズフェルド長官
「大統領と見解は常に同じだ」
「これだけの人々を収容する適切な基盤を備えた施設はほかにはない」(14日)
http://www.asahi.com/paper/international.html