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ミサイル防衛運用穴だらけ
ミサイル防衛(MD)システムを運用する手続きを定める自衛隊法改正案などが十四日、衆院を通過した。北朝鮮から弾道ミサイルが発射されればわずか十分程度で日本に着弾するため、迅速に迎撃するのが狙い。だが国会審議では、システムの運用や技術的な問題点が次々と表面化し、「MDで国民を守れるのか」という根本的な疑問は深まるばかりだ。 (社会部・半田滋、政治部・梶雅一)
●PAC3配備
政府の対応の遅れが際だったのは、地上から発射する地対空ミサイル(PAC3)の運用だ。
既に埼玉・入間基地など首都圏にある四カ所の基地への配備が決定。有効な迎撃には五十キロ間隔で発射機を並べることになるため、適地が民有地であれば確保する必要が出てくる。民間航空機を誤射する危険を避けるには、首都圏上空に飛行禁止区域の設定も不可欠になる。
PAC3を基地の外に展開する手続きについて、防衛庁の飯原一樹防衛局長は「法案成立後に具体的に検討しなければいけない」と答弁し、検討不足を率直に認めた。
飯原氏は飛行禁止区域について「法律で制限する必要はない」としながらも、「飛行機が飛んでいる状況で、ミサイルを発射することは極めて難しい」と、PAC3の使用は事実上不可能との見通しまで示した。
また地上から弾道ミサイルを探知するレーダーの問題点も表面化。強い電磁波を発するため、さまざまな面で市民生活に影響が出るのは必至とみられている。
防衛庁の大井篤参事官は「(レーダーの)前方百二十メートルと、作動角度範囲内には立ち入らない措置を講ずる」と立ち入り禁止区域を設ける可能性を述べたが、PAC3の運用自体を「法律成立後の検討事項」(飯原氏)と答弁しているため、国民生活への影響は不明のままだった。
さらにPAC3の配備地域についても疑問は解消されていない。
防衛庁は入間を含む高射部隊の半数に配備することを決めているが、それ以外の地域に配備の予定はない。
同庁はPAC3が移動式であることを理由に「穴のない防空体制」を強調するが、同法で規定した緊急手続きが必要な場面では手遅れになるのは確実だ。「PAC3に守られない国民」の問題についても、国会の議論は煮詰まっていない。
●チェック機能
今回の自衛隊法改正は、迅速な迎撃を行うため、安全保障会議や閣議を経て防衛出動を発令する、従来の重層的な手続きを簡素化するのが狙い。
このため、(1)他国にミサイル発射の兆候がある場合は、首相の事前承認を得て迎撃(2)兆候が察知できずいきなりミサイルが飛来した場合は、事前に策定された「緊急対処要領」に基づいて防衛庁長官が迎撃命令―とし、兆候の有無によって異なる手続きを定めた。
与野党から質問が集中したのは、兆候の有無を判断する条件だ。
防衛庁は北朝鮮を念頭に「兆候が察知できないことは考えにくい」として、迎撃手続きは(1)を基本にすると説明。一方で(2)の規定は「他国のミサイル発射の動きが、日本を標的としたものでないと想定してイージス艦を出動したら、日本に向けてミサイルが飛来した場合」などとした。
野党議員からは「防衛庁は、現場指揮官の裁量が大きい(2)の規定で活動したい意向がにじむ」との批判も根強い。与党からも「手続きは複雑すぎて部外者のチェックが不可能」との不満がある。
今回の手続きの変更で現場指揮官の裁量が拡大し、ひいてはシビリアンコントロール(文民統制)が形がい化していく印象はぬぐえない。
◇メモ <ミサイル防衛(MD)システム>
弾道ミサイルを高性能レーダー網で追尾し、迎撃ミサイルで撃ち落とす多層防衛システム。日本では大気圏外で撃墜するイージス艦発射型迎撃ミサイル(SM3)と、撃ち漏らしたミサイルを落下直前に撃墜する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の2段階で防御。2006年度末にPAC3、07年度末にSM3配備を開始する予定。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050615/mng_____kakushin000.shtml