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社説:英同時爆破1週間 「テロとの戦争」の見直しを
英国で7日に起きた同時爆破テロから1週間。英当局が実行犯として特定した4人は、パキスタン系英国人のイスラム教徒が中心とみられている。背後関係には不明な点も多いが、西欧では初めてとされる自爆テロ、それも用意周到な犯行とあって、イスラム過激派の影が欧米を広く覆っていることを改めて感じさせた。
01年の米同時多発テロ、04年のスペイン列車爆破に続く米欧対象のテロに対し、英国で開かれていたサミット(主要国首脳会議)は結束強化を表明した。テロを憎み、テロに備えるのは当然だ。だが、問題は、どうすればテロを防げるか、ということである。
欧州連合(EU)の拡大に伴って国家間の垣根が低くなった欧州は、テロリストの潜伏・移動も比較的容易になった。しかも欧州にはイスラム教徒が多い。米国との良好な関係を維持しつつ、いかに反米イスラム勢力の反感を抑えるか。それがブレア英首相をはじめ欧州首脳の深刻な悩みではないか。英国のテロは、従来の「テロとの戦争」が見直しの時期にあることを改めて示したのである。
もともと軍事力だけでテロは抑え込めない。米同時テロ直後、ブッシュ大統領は「米国のあらゆる力」でテロと戦うと宣言した。だが、その後のアフガニスタン攻撃やイラク戦争の当否は別として、米国の相次ぐ軍事行動が「対テロ戦争とは結局、対イスラム戦争なのか」という疑問をイスラム圏に広げたのは確かである。
「姿なき敵」と戦うには、世界中に味方を増やしてテロ組織を追いつめる必要がある。だが、米国は「テロとの戦争」を通じて逆に孤立を深めた感がある。例えばイラク戦争を支持した主要国は、米英を含めても極めて少ない。それに比べて91年の湾岸戦争ではフランスが軍事行動に参加し、ドイツも米国を支援した。湾岸アラブ諸国やシリア、エジプト、モロッコも米軍と共闘した。イラク戦争との違いは明らかである。
テロを病気に例えれば、悪い部分を取り除く外科手術(軍事行動)だけが治療法ではない。ウイルスや悪性細胞を退治する投薬や体質改善も大事だ。テロの背景に「イスラム蔑視(べっし)」といった不公平感があるなら、それを力ずくで押さえ込むより、アラブ諸国や穏健イスラム教徒との対話を通じてテロの土壌を改めるべきである。イスラム世界の「民主化」にも、こうした対話は有益だろう。
当面問われるのは、パレスチナ和平への努力である。米国がイスラエルへの「無条件の支持」を見直し、公平かつ前向きな仲介に努めれば、イスラム世界の対米感情は大きく改善するだろう。イスラム圏には今の米国への反感とともに、米国文化へのあこがれもある。対テロ戦争のリーダーたる米国は、ハードな軍事力のみに頼らず、米国という国の魅力(ソフトパワー)を生かして対テロ戦線を再構築すべきである。
謙虚に問うところから始めたい。イラク戦争後、世界は本当に「より安全」になったのか、と。
毎日新聞 2005年7月14日 0時23分
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20050714k0000m070174000c.html