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英同時テロ イスラム社会に影
英国社会を震撼(しんかん)させたロンドンの同時爆破テロ発生後、英国内ではイスラム教徒やモスクが襲撃の対象となる事件が起きている。今回の爆破テロは、英国全体で約百六十万人いるイスラム教徒のうち、約六十万人が住むロンドンのイスラム社会に、ひときわ暗い影を落としている。(ロンドン 黒沢潤)
「イスラム教徒と結婚した英国人は数多くおり、英国人とわれわれとの間に亀裂が生じるわけがない」
イスラム教徒が経営するケバブ料理店や果物屋などが集まるロンドン中部のエッジウエア通り。カフェに来ていたイスラム教徒のエンジニア、ファーレス・アルターキさん(32)=イラク出身=はこう、まくしたてた。
アルターキさんの言葉とは裏腹に、英国のムスリム協議会には爆破テロ後、三万件を超える嫌がらせのメールが来ているほか、イスラム教徒一人が襲われ重傷を負った。また、英国内のモスクも数件攻撃されている。
「英国人とイスラム教徒の間には、昔も今も『壁』がある。これから生まれてくる子供たちはかわいそうだ。英国社会からさらに厳しい目を向けられながら幼少期を過ごすのだから…」。ロンドン最大の「中央モスク」に来ていたバングラデシュ出身の女性は、大きなおなかをさすりながら語った。
英国には、大英帝国時代の名残でパキスタンやバングラデシュ、中東諸国からの移民が多い。なかでもロンドンはイスラム過激派の巣窟(そうくつ)ともいわれ、「アルカーイダ駐英大使」の異名をとるイスラム聖職者、アブ・カタダ師(今年三月に自宅軟禁)の拠点もある。「英国政府は母国を追放された反体制派やテロリストへの支持者に寛容だった」(米ワシントン・ポスト紙)との指摘さえある。
今回のテロがイスラム過激派の犯行でないとしても、英国社会が彼らに向ける視線は厳しくなっている。九日付の英紙デーリー・テレグラフの世論調査によると、「イスラム教徒が欧米の民主主義に重大な脅威となる」と回答した英国人は、米中枢同時テロ直後の10%から19%に上昇した。
中央モスクの聖職者、アンワル・マディ師(31)は「われわれは、英国人から悪い扱いを受けても辛抱し、テロリストとわれわれは異なるのだということを地道に主張するしか状況を改善できる道はない」という。
また、爆破テロは、イスラム社会のビジネスにも影響を与えている。
エッジウエア通りにある中東式水たばこ屋「アンデロス」には以前、一日約百人を超える客が来た。しかし、事件後は五人前後に激減。サラー・ワヒム副店長(38)は「毎日、朝と昼の二回来てくれた英国人の知人も来なくなった。テロリストは平和を愛するわれわれの宗教に泥を塗っただけでなく、ビジネスをも破壊した」と憤る。
「『死の時期』に突入してしまった」。旅行代理店「ワンダー・トラベル」経営のユセフ・アブデルアジズさんも、中東地域からの旅行客が、ロンドン滞在をここ数日間で十三件もキャンセルしたため、悲嘆に暮れる。
書店を経営する一方でフォトジャーナリストでもあるムハンマド・ボントクさん(53)=エジプト出身=は「英国は今回の事態を乗り越えられるはず。二十五年間、ここに住んでいる私は悲観していない」と語った。イスラム社会自体が今後、テロにどれだけ毅然(きぜん)とした姿勢を示せるか、乗り越えるべき現実は厳しい。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/12iti002.htm