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広島・長崎から60年
崩壊するNPT体制
米は地中貫通型核での地下施設攻撃を準備
http://www.bund.org/editorial/20050515-1.htm
5月2日から27日までニューヨークの国連本部で、5年に一度核拡散防止条約(NPT)の運用状況を点検する「再検討」会議が開催されている。圧倒的な核軍事力の護持を至上命題化して核軍縮を拒み続ける米国、次々と核保有を宣言する国々、後を絶たない核兵器開発疑惑。広島・長崎への原爆投下から60年、米国は再び核戦争という開けてはならない「パンドラの箱」を開けようとしている。
米国、「使える核」開発
NPTは、核兵器保有国を米ロ英仏中5か国以上に増やさないため、非保有国の核兵器製造・取得を禁止するかわりに、保有国には核軍縮を求める条約だ。加盟国数は「脱退宣言」した北朝鮮を含めて189か国。今回の会議では5年前に合意した「包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効」や「兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約交渉の5年以内妥結」など、核兵器廃絶にむけた13項目の進捗状況について話し合われる予定だ。
しかしブッシュ政権はCTBT批准を拒否、新たな核兵器開発に向けた野望を隠そうともしていない。NPT再検討会議直前の4月27日、ラムズフェルド国防長官は、上院歳出委員会で証言し、地下深くへの攻撃を想定した特殊貫通弾(バンカーバスター)用の新型核兵器「強力地中貫通型核」の研究・開発などの核兵器関連予算を2006会計年度(05年10月〜06年9月)に盛り込むよう求めた。
ブッシュ政権は発足以来、新型核兵器の研究・開発を進めてきた。だが、去年は、「核の拡散を招きかねない」と野党民主党に加え与党共和党の一部の議員も新型核兵器開発に反対。今年度予算では新型核兵器研究予算は削られ、現在、研究は中断した状態になっている。ラムズフェルドは、「地下施設の建設こそが大量破壊兵器の拡散につながる」と改めて指摘することで、2006年度の予算に新型核兵器の研究・開発費を復活させようというのだ。
5月1日には、先制核攻撃を戦略化する「最新の米軍文書」の存在も明らかになっている。同日付けの共同通信によると、米軍統合参謀本部は、「ならず者国家」やテロ組織による米国や日本などの同盟国への攻撃の恐れが迫った場合を想定。在日米軍を傘下に置く太平洋軍など各地域統合軍の司令官は、ブッシュ大統領に戦術核兵器の使用許可を要請できるとの方針を策定している。
「使える核兵器」開発によってブッシュ政権は、朝鮮半島あるいは中東で広島・長崎に続いて3回目の核攻撃―それも今度は先制核攻撃を準備している。そのとき、在日米軍基地は米軍による先制核攻撃の出撃基地となる。
止まらぬ核開発の悪循環
今回のNPT再検討会議でも米国は、開発中の新型核兵器を「大量破壊兵器の破壊のため」と正当化し、前回会議で合意した核軍縮にむけた13項目のすべてを「過去の議論」として切り捨てようとしている。今回の再検討会議で米代表を率いるラドメーカー国務次官補は4月28日、米下院公聴会で「北朝鮮の言語道断の行為を非難すべきだ」「イランは核兵器開発の意図を放棄していない」と強調した。要するに米国は今回の再検討会議を、核軍縮ではく、「ならずもの国家」による核開発阻止の国際会議にしようとしているのだ。
確かにNPTは、「非保有国の核兵器製造、取得の禁止」を定めている。だがその一方でNPTは、核保有国に対しては「核軍縮」を義務づけている。核軍縮どころか、「使える核」開発や先制核攻撃を公言してはばからない米国こそがNPT体制を破壊している張本人だ。
米ソ冷戦が終結した時、これで人類は核戦争の恐怖から解放されるのではないかと世界中の人々が期待した。だが現実は全く逆だった。圧倒的な核軍事力による一元的な世界支配をもくろむ「アメリカ帝国」の出現によって、世界中の国々は、いつ米国によって「ならずもの国家」だとか「悪の枢軸」だとかと敵国規定され、先制(核)攻撃の恫喝にさらされかねない状況に直面することになった。
今や世界では、テロと戦争の悪循環と同様、対抗的核軍拡の悪循環が進行している。イスラエルの核保有は今や公然の事実だが、インドとパキスタンは相次いで核実験を強行。北朝鮮やイランによる核兵器開発や、旧ソ連や南アフリカなどからの「核流出」も危惧されている。
イラク先制攻撃―侵略戦争強行に続いてブッシュの米国は、先制核攻撃戦略によって国連憲章・国際法体系およびNPT体制を根底から破壊しようとしている。
核先制不使用の条約化
こうした核開発の悪循環に対し、多くの非核保有国は、米国に核兵器の先制不使用を公約・条約化するよう求めている。マレーシアやインドネシアが率いる非同盟諸国と、メキシコ・ニュージーランドなど7か国で作る「新アジェンダ連合」は、前回会議の最終文書に盛り込まれた「核兵器廃絶への明確な約束」が議論の出発点だと主張している。
今回の会議は、広島・長崎への原爆投下から60年めの節目に開かれたこともあり、日本から1000人規模の被爆者団体やNGOがニューヨーク入りしている。5月4日、午後には再検討会議で、秋葉忠利・広島市長と伊藤一長・長崎市長が演説し、各国代表に核兵器の廃絶を訴えた。
秋葉市長は2020年までの核兵器廃絶を求め、核保有国の姿勢を「『特権』に安住し、新しい方向を本気で考えていない」と厳しく非難。黒く変形した被爆者の手のつめのレプリカを持参した秋葉市長は、「被爆者の60年間の苦しみを表している」と訴えた。両市長の発言を、再検討会議の議長を務めるブラジルのドゥアルテ軍縮・核不拡散担当大使は高く評価。国連のアナン事務総長も会議冒頭の演説で広島、長崎の原爆被害に触れ、「核の脅威は依然存在する」と指摘した。
だが、原爆を投下した当事国・米国では、いまだに広島・長崎への原爆投下を、「戦争を早期終結させ、戦死者を減らした」と支持する見方が根強い。95年にスミソニアン航空宇宙博物館で開催が予定されていた「原爆展」は、退役軍人の反対にあって中止。今年の2月には、ラスベガスに「核実験博物館」が娯楽施設としてオープンし、核実験の瞬間を映像や振動によって疑似体験できるコーナーが設けられた。キノコ雲をあしらったカップやTシャツまで土産物として売られている。
小泉・自民党政権の政治家たちは、「元寇で高麗(朝鮮)は日本を侵略した」だとか「和冦は日本人中心ではなかった」などと韓中両政府に意見する前に、原爆の悲劇を米国民にきちんと教えるべきだとブッシュ政権に抗議し、米国の「原爆認識」をこそ正すべきだ。
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米国、日本だけ再処理を容認
世界は日本を核保有国と見なすだろう
5月2日から始まったNPT再検討会議を前に、ブッシュ政権の新たな「核拡散防止策」が明らかとなった。米ロ中英仏の核兵器保有5か国以外に、日本・オランダ・ドイツ・ブラジル・アルゼンチンの5か国を「ウラン濃縮をできる国」と規定。それ以外の国々にはウラン濃縮の技術取得を禁止するというのだ。さらに、プルトニウム再処理については核保有5か国以外に日本だけを例外的に認めるという。これは、米国が青森県六ケ所村で濃縮・再処理事業に取り組む日本政府に配慮したものだとされる。
米国は、戦後60年たった今も日本を約5万人の在日米軍によって占領し続け、日本軍=自衛隊を完全にそのコントロール下におき続けている。核不拡散=核独占を国家戦略とする米国が、世界で日本にだけプルトニウムの再処理を認めたのは、日本が米国言いなりの事実上の属国であり、米国のコントロールを離れて独自の核武装化を行うことなどありえないという「自信」のあらわれに他ならない。
世界の国々は、こうした事態をどう見るだろうか。すでに昨年10月、駐日韓国大使館は「日本、プルトニウム40t以上保有」という資料を韓国国会に提出している。洪準杓(ホン・ジュンピョ)ハンナラ党議員が公開した資料によると、日本が保有しているプルトニウムは国内5475s、海外3万5168s。一方、北朝鮮が保有しているとされるプルトニウムは24s程度。洪議員は「(日本は)このプルトニウムで核弾頭を製造すれば540個も作ることができる」と日本の核武装化を憂慮する会見を行っている。
世界で日本にだけプルトニウム再処理が認められるようなことになれば、世界の人々は日本を事実上の核保有国と見なすだろう。青森県六ケ所村での濃縮・再処理事業は世界中の注目の的となりつつある。
http://www.bund.org/editorial/20050515-1.htm