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終わりなきイラク戦争 占領軍支える戦争請負会社(PMC)
http://www.bund.org/editorial/20050605-1.htm
新政府以降610人が死んだ
4月末にイラク移行政府が発足した。以降、わずか約1カ月で武装勢力の攻撃により、米兵約50人を含めて約610人が犠牲になっている。イラク戦争はますます果てしない泥沼に入り込んでいるのだ。5月8日には、イラク西部で、イギリスの「警備会社」ハートセキュリティ社に所属する日本人・斉藤昭彦さんがイラク武装組織に拘束された。現在イラクでは、斉藤さんのような「現代の傭兵」が約3万人も活動している。この数は、米軍以外の駐留軍の総計2万2000人を上回る数だ。
プライベート・ミリタリー・カンパニー
斉藤さんが所属していたハートセキュリティ社は、1999年7月、英国特殊部隊SASの元将校らによって設立されたPMC(プライベート・ミリタリー・カンパニー)と呼ばれる民間の戦争請負会社だ。PMCは、軍事コンサルタントから物資補給、紛争地での警備まで、物流や人員その他の必要なサービスを幅広く請け負う。要員には斉藤さんのような軍隊出身者が多く、高度な訓練を積み、装甲車両や自動小銃で武装している。日本でイメージする警備会社のガードマンではなく、完全な軍事コマンドなのだ。
斉藤さんの拘束事件が起きたヒートがある北西部のアンバル県では、5月上旬から米軍が「マタドール」と名付けた大規模な掃討作戦を行っていた。5月7日から14日の1週間の米軍の掃討作戦でイラク人125人以上が殺害された(米軍発表)。現地からの報告では、ファルージャ攻撃と同様、病院が襲撃され医療関係者や患者が殺され、空爆と掃討作戦で多数の罪のないイラク人住民が殺戮された。
こうした米軍による掃討作戦のさなかに斉藤さんは、高額の報酬でPMCに雇われ、イラク人スタッフを指揮して米軍関係車両を護衛していた。イラク武装勢力から、米英占領軍と同等の扱いを受けても「自己責任」という以外ない。
昨秋の日本人人質事件のとき、武装勢力との交渉を行ったイスラム聖職者協会も、「占領に協力する者の解放には協力しない」との姿勢を明らかにしている。
戦争の民営化でボロ儲け
現在イラクには、ハートセキュリティ社のようなPMC60社以上が活動しており、イラク米軍は軍用サービスの20〜30%をPMCに依存している。
米軍がPMCに依存する理由は、正規軍を使うよりPMCに委託した方が安上がりだからだ。PMCは、斉藤さんのような特殊部隊出身者を、通常の特殊部隊要員の給与の2〜3倍にあたる日給1000ドル(約10万円)以上で雇う。PMCはこうした高給で雇った軍事専門家に、月給300〜600ドルのイラク人スタッフを指揮・監督させる。彼らはみな臨時雇いの契約社員で、トータルの人件費は非常に安く上がる。
米軍としては、常時給料を支払い福利厚生も保証する必要のある正規の軍人を使うより、PMCを利用することで軍事費を半分に削減することができる。またPMCを使えば、予備役を招集して米軍を増強する必要もなく、米兵と違ってPMC要員が死傷しても米国政府は遺族や国民から批判されることもない。遺族補償もいらない。「戦争の民営化」は米国政府にとって、なんとも都合のいいやり方なのだ。
一方PMCは、米軍や米系企業から、様々な戦争業務を請け負うことで、膨大な利益を上げている。現在のイラクで最大のPMCは、副大統領チェイニーがCEOを勤めていたハリバートンの子会社ケロッグ・ブラウン&ルート社だ。食事から洗濯、ゴミ処理まで米軍の兵站全般を請け負い、その契約額はなんと130億ドル(約1兆4000億円)にも達する。
PMCは、世界全体で100社以上、1000億ドルの市場規模を持つ一大産業分野に成長している。イラクばかりでなくアフリカや中東、南米など世界各地の紛争地域でPMCが活動し、冷戦終結でリストラされた元特殊部隊員などの「戦争のプロ」を戦場に送り込んでいる。
PMCにとっては紛争が激化し、危険が高まれば高まるほど請け負う仕事が増え収益が上がる。「死の商人」と呼ばれる軍需産業と同じく、PMCも自ら戦争を生み出す戦争マシーンなのだ。
イリーガルな活動にも従事
PMCのなかには、正規軍が行うのを躊躇するような残虐行為、各国の軍事法体系や国際法に違反するイリーガル(非合法)な軍事活動まで請け負っている企業もある。イラクではPMCは、拘束した捕虜の「取り調べ」までをも請け負っている。昨年起きたアブグレイブ刑務所拷問事件では、発覚した44件のうち16件にタイタン社やCACI社などのPMCの要員が関与していた。アブグレイブ刑務所の拷問事件では、関わった米兵はまがりなりにも処分を受けたが、PMC要員はなんの処罰も受けていない。
アブグレイブだけではない。イラクでは約2万人のPMC要員が2年間活動してきたが、違法行為でただの一人も告発されていない。同じ期間に、何十人もの米軍人が米軍軍事法廷で罰せられているのにだ。
米兵の場合、少なくとも法律上は、彼の犯罪行為は米軍の軍事法体系―軍法会議によって裁かれる。米兵が国際法違反や人道上問題がある行為を行えばアメリカ政府が非難される。ところがPMC要員は民間人であるから、米軍の軍法会議で裁かれることはない。
PMC要員はジュネーブ条約上「非戦闘員」であり、戦闘行為に参加することはできないことになっている。銃器を発砲するなどの戦闘行為を行えば当然、イラクの国内法で裁かれることになる。
ところがイラクの場合、いまだ国内法体系が整備されていない上に、米占領当局はPMC要員に事実上の治外法権を与えており、米英軍と共に武装勢力の掃討作戦にまで参加しているのだ。
軍事評論家の江畑謙介氏は東京新聞(5月12日付け)で「表立ってできない軍事作戦をPMCを通じて行えば、国家として責任を問われないし、PMC側も『特定の国から命じられたわけではない』と言い逃れることができる」と、資金洗浄(マネーロンダリング)にも似たPMCの性格を指摘している。
イラクでは、米英軍の別働隊としてその占領政策を裏側から支えているPMCは、住民の憎悪の的だ。昨年3月ファルージャで「民間人」が殺され、死体が橋につり下げられたと報じられたが、この民間人は自前の武装ヘリコプターまでイラクに持ち込み、占領軍暫定政府のポール・ブレマー文民行政官等の要人警護を請け負っていた大手PMCブラックウオーター社のコマンドだった。
イラクでは、斉藤さんばかりでなくPMC要員を標的とする攻撃や自爆テロが頻発している。03年4月から今年5月初めまで、PMCの死者数は名前が判明した人だけで234人にのぼる(イラク人スタッフを除く)。この死傷者数は、米国陸軍のどの師団の死傷者数よりも多いのだ。
正規軍が行えないイリーガルな活動までをも請け負う「闇の戦争屋」=PMCの存在は、戦闘員と非戦闘員を区別するジュネーブ条約などの国際人道法の規定を有名無実化してしまう。PMCは、その存在自体を国際法によって禁止するべきであり、英米軍はジュネーブ条約違反を承知でPMCを使うべきではない。
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内政干渉? 東京裁判判決を受け入れたのは日本だろう
「靖国」で紛糾する日中関係
5月23日、中国の呉儀副首相は小泉首相との会談直前、スケジュールをキャンセルして帰国した。5月24日、中国外務省の孔泉報道局長は会見で、「日本の指導者の最近の言論によって、会談に必要な雰囲気がなくなったためだ」と、呉儀副首相が帰国した理由に靖国問題をあげた。
小泉首相は16日の衆院予算委員会で、靖国参拝について「どのような追悼の仕方がいいかは他の国が干渉すべきでない。(元首相の)東条英機氏のA級戦犯の話が出るが、『罪を憎んで人を憎まず』は中国の孔子の言葉だ。何ら問題があるとは思っていない」と開き直っている。
自民党の武部勤幹事長も、21日の北京での中国共産党対外連絡部の王家瑞部長との会談で、小泉首相の靖国神社参拝に対する非難を「内政干渉だという人もいる」と指摘した。これに対し王氏は「それは(内政不干渉の原則を確認している日中平和友好条約の)新しい解釈なのか」と激しく反論。靖国神社にA級戦犯が合祀されていることを念頭に、「(A級戦犯という)国際的に決着したことを内政干渉の範囲に入れる解釈を、与党の幹事長がするのか」と詰め寄った。
こうした小泉首相らの言動に対しては、自民党の福田康夫前官房長官すらが16日の国会で「首脳会談ができないのは、異常な状態だ」「首相が国際社会との協調を重視するというのであれば、足元の東アジアの中国、韓国との関係は早急に改善しておく必要がある」と苦言を呈している。24日には、来日中の金大中(キム・デジュン)・韓国前大統領が、「A級戦犯を他の場所に移すべきだ。戦犯がまつられる場所への参拝は侵略戦争の肯定になる」「日本の(小泉)首相が01年『誰もがわだかまりなく参拝できる新たな施設を検討する』と約束した」と強い不満を表明した。
中国が言うとおり、A級戦犯の戦争責任は、日本がサンフランシスコ講和条約で東京裁判の判決を受け入れたことで、「国際的に決着した」問題だ。A級戦犯を戦争犯罪人として断罪することに文句があるのなら、小泉首相や自民党の「ネオコン」は、東京裁判を主導した米国にこそ文句を言うべきだろう。アメリカ一辺倒の外交オンチに小泉のせいで、東北アジアでの日本の孤立は深まるばかりだ。
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東海地震おそれるトヨタ、生産拠点を三河から九州へシフト
東海地震発生―浜岡原発震災という未曾有の危機を誤魔化し続けようとする国・電力会社。この現実下、敏感に反応したのがトヨタ自動車だ。トヨタは、東海地震発生時には「震度6弱」の揺れに襲われるとされる三河地域に、本社も含めて11もの工場を保有し、国内の83%の車を生産している。
トヨタは、系列の部品メーカーも含め、震度6弱にもちこたえる耐震工事を完了してきた。しかし、「想定外」の大地震に対して、これ以上耐震性を高めるのは無理と判断、急遽「脱三河依存」という方針を打ち出した。
トヨタは昨年11月の中越地震直後、福岡県苅田町に三河地域以外では初のエンジン工場建設を発表した。来年1月には生産を開始し、将来的には主力工場の移設に等しい年間40万基のエンジンを生産する。さらに、福岡県宮田町にある100%子会社・トヨタ自動車九州の生産能力を倍増させ、系列メーカーにも九州進出や増設を促している。
明らかにトヨタは、「三河トヨタ村」を移設した「九州トヨタ村」形成に動き出している。営利第一の現実主義を貫く「世界のトヨタ」は、東海地震―浜岡原発震災から生き残るべく生産拠点の九州シフトというリスク分散化に乗り出したというわけだ。
毎日新聞は「原発震災『想定外』への備え」という連載の5月24日付け記事で、「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)制定に当たって原発で大事故が起きた場合の被害想定を行っていながら、今日の原発防災対策にはまったく反映させていないと告発した。 科学技術省が59年日本原子力産業会議に委託した「大型原子炉(50万kW)の事故の論理的可能性及び公衆損害額に関する試算」では、9万9000人が緊急避難、1760万人が長期間の待避や移住を強いられる。
全国の4割の15万平方キロで1年間農業ができなくなり、損害額は3兆7300億円(当時の国の一般会計予算の倍以上)にもおよぶ。最大で720人が死亡、5000人に障害が残り、130万人が「要観察」となるとしている。
この試算は59年と時代が古く、京大の小出裕章さんによるチェルノブイリ事故をふまえた最新の試算では、浜岡2号炉(84万kW)で大事故が起こった場合、急性死に加え晩発性のガンなどで95万人〜176万人が死亡する。
東海地震発生が秒読みとなった今、浜岡原発を一刻も早く止めることこそ、日本全体にとっての最大のリスク対策だろう。
(2005年6月5日発行 『SENKI』 1180号1面から)
http://www.bund.org/editorial/20050605-1.htm