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米国 次の標的? シリア・ルポ (東京新聞)
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投稿者 彗星 日時 2005 年 5 月 23 日 15:20:27: HZN1pv7x5vK0M
 

特報
2005.05.23

米国 次の標的? シリア・ルポ
『第二のイラク』 不安と憤り

 アラブ諸国で最後の対イスラエル強硬派、シリア。イラク戦争中から、米政権内では「次はシリア」が叫ばれてきた。特に今年二月、隣国レバノンのハリリ元首相が暗殺され、シリア黒幕説が流れる中、同国の孤立は一段と深まった。だが、現地では現アサド大統領の人気がカリスマだった父の前大統領をしのぐ勢いだ。現政権の外圧しのぎの開放策は、時間との競争に追われている。 (ダマスカスで、田原拓治)

 歴史的なシリア軍のレバノン全面撤退から、三日後のシリア・首都ダマスカス。中心部のアイスクリーム店やケーキ店が並ぶ一角は夕方、家族連れでにぎわっていた。

 タクシーに乗り、世間話に興じると「カネはいらない」。別の運転手は「ホテルなんか出て、私の家に来い」。その人懐っこさはマッチすら物不足でなかった十九年前と変わらない。

 ただ、五年前に比べるとヒジャーブ(スカーフ)姿の女性が増えた。イスラム化は中東全域の流れとはいえ、一九九〇年代後半のイラクを思い出させる。そこでは、先行きへの不安がイスラム化を促していた。

 「(撤退の)先延ばしゲームの先には、軍事攻撃の選択もあり得る」。レバノン撤退前夜の三月末、フランス高官はシリアに対し、米国の意思をこう伝えた。

 シリアは七〇年に政権を握ったハフェズ・アサド前大統領時代からイスラエルの最も手ごわい敵だった。七九年に米国はシリアを「テロ支援国家」に指定。クリントン前政権時代に対イスラエル和平の機運が高まったが、ブッシュ政権でシリアたたきが再燃した。

 特にネオコンにとって、イラク戦争も「シリア包囲網の一環」だった。その一人、イラク開戦時の国務次官ボルトン氏は二〇〇三年四月、「われわれはイラクだけで十分だと思うほど間抜けではない」と対シリア攻撃の意図を公言した。

 その延長線上で昨年九月に米、フランスはシリア軍のレバノン即時撤退を求めた国連安保理決議一五五九号を主導した。ハリリ元首相暗殺後のレバノン人の反シリアデモが後押しした。

 シリア軍撤退をダマスカス市民はどう感じたのか。「結構なことだ」とイスラム団体職員、ファルーク・アクビク氏は苦笑した。「財政負担も軽くなる」

 だが、憤りが見え隠れする。「レバノンでのシリア軍、情報機関の行き過ぎについては内心、レバノン人に同情していた。だが、レバノン人自身が(内戦抑止のため、シリアに派兵を)頼んだのじゃないかね」

 街ではホテル、官庁に二本の旗が立つ。シリアとパレスチナの国旗だ。市民には、三十年間の「アサド王朝(独裁)」への不満がある。だが、「王朝」が「パレスチナの大義」を一貫して掲げてきた誇りも抱く。レバノンは対イスラエルの最前線でもあった。

 それゆえ、三月のレバノンでの反シリアデモ直後、ダマスカスでは官製レベルを乗り越えた政権支持デモが起きた。車から身を乗り出すアサド大統領と若者たちが握手する。常に暗殺を恐れた前大統領時代には想像できない光景だった。

 「父親の代からさかのぼって、大統領の人気は今が最高ではないか」。「アサド嫌い」を個人的な会話では隠さない政府系紙記者の友人がそう語る。「皮肉なことだが、欧米が押しつけた開放政策が一因だ」

 首都ではこの数年、一気に海外の衛星放送が普及した。公には一九九五年に解禁されたが「約三年前から、受信装置セットが一台百ドルまで下がって、庶民の手に届くようになった」(レストラン従業員)という。

 「そこで人々はイラクやパレスチナの現状を見る。反米感情が当然、わき上がる」(政府系紙記者)。情報流入で独裁政権を弱体化させる欧米のもくろみは、裏目に出たというのだ。

 実際、現大統領の「インフィターハ(開放)政策」による街の変化には目を見張る。それは空港に降り立ってすぐ分かる。かつては厳格を極めた入国手続きが簡易になり、外車が免税商品として置かれていた。

 空港からの道の街路灯は以前、半分が曲がっていたがそんな不具合もない。長らく待たされた情報省の外国人記者部門でも、すんなり取材許可が下りる。独裁のシンボルで、威圧的だった街の大統領の写真もうんと減った。サウジ資本を中心に外資の高級ホテルチェーンも相次いで建設中だ。

 インターネットカフェも現在、首都だけで八十店を超える。殉教者広場で店を開くアイマン・マフムードさんは「利用者は若者が大半。二年前まではホットメールやヤフーのメールが禁じられていたが、いまは大丈夫。ダメなのはイスラエルのサイトだけ」と言う。

 体制を皮肉った演劇もお目見えした。ヒット作「ライラ・スクート・バグダード(バグダッド陥落の夜)」では、懸命に現場から報じる衛星テレビ、アルジャジーラなどの記者の傍ら、欧米の通信社電を棒読みするや、寝てしまうシリア国営放送の記者が登場した。

 もちろん、こんな指摘もある。政府系紙記者は「あの芝居は体制批判のガス抜きだ」という。「それに開放の速度は遅すぎる。外資参入に抵抗する既得権益を握る勢力が強いためだ」

 不満は開放の速度だけではない。大統領の出身母体で、少数宗派イスラム教アラウィ派の権益独占にもある。「携帯電話の独占会社シリテルもアラウィの一族で、利益は大統領と利益を折半という風評だ」(同記者)。二月に代わった統治の要である情報機関長官も大統領の義兄。権力と富の集中の一方で、長期独裁で対抗する野党勢力はない。

 ただ、イラクのフセイン政権とは違い、シリアは外交で冒険的な瀬戸際戦略は採らない。アサド大統領は昨年四月、「イラクの反米武装闘争は抵抗運動」と評したが、二月には亡命中のフセイン元大統領の異父兄弟らをイラクに引き渡した。三月には、米国が求めたハマスなどパレスチナ系イスラム組織のダマスカス事務所閉鎖にも応じた。

 とはいえ、したたかさには定評がある。事務所のあったヤルムーク・パレスチナ難民キャンプの入り口には、現在もハマスの精神的指導者で昨年暗殺されたアハメド・ヤシン師の写真が掲げられていた。「ハマスは宣伝と福祉活動を以前通り続けている。元から軍事基地ではないし、活動家の家があれば事務所はいらない」(住民の一人)

 いら立ちを募らせる米国は最近、米国人も含めて七百人の留学生を抱えるアブ・ヌール寺院など、シリアの穏健スンニ派団体に「テロリストを養成している」と留学生の滞在許可を取り消すよう迫った。だが、これも「何とか免れた」(同寺院関係者)という。

 開放策の推進で「テロ支援国家」非難をかわそうというシリア現政権と、四年の任期中に決着しようと圧力を増す米ブッシュ政権。競争の行方は開放策の速度がかぎになりそうだ。

 市民はその成り行きをじっと見守るが、実際は見守ることしかできない。前出のアクビク氏はいら立ちを隠さず、こう漏らした。

 「米国が攻撃してくるかもしれないと皆が思っている。怖いに決まっている。だからといって、私たちに何ができるというのだ」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050523/mng_____tokuho__000.shtml

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