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5月22日―メディアを創る
拉致問題と核問題
小泉再訪朝から今日で丸一年ということで、各紙は特集記事を一斉に載せている。しかし交渉の行き詰まりを嘆くばかりで、ここまで行き詰らせてしまった小泉首相の責任を検証する記事は一つもない。あたかも小泉批判がタブーのようだ。しかしすべての原因は小泉首相の動機の不純さと小泉首相を誤らせた外務省の無能さにある。ここを糾弾し責任を徹底的に追及しない限り、北朝鮮問題は終わらない。
北朝鮮問題について我々は、常に三年前の小泉首相の突然の訪朝と平壌宣言にさかのぼって検証しなければならない。あの時小泉首相は何をしたかったのか。拉致行方不明者の救済か。北朝鮮の核開発を止めさせる事か。そうではない。日朝国交正常化であった。
拉致行方不明者の救済でないのは、当時の外務官僚が「わずか10名程度の安否の為に国交正常化という大義の実現が妨げられてたまるか」と言う趣旨の事を様々な機会に繰り返して公言していたことから明らかである。更に又平壌宣言の文言の交渉過程で、北朝鮮に反対されて「拉致」という表現をあっさり落としてしまったことからも明らかである。断言する。小泉首相、外務官僚は、北朝鮮が拉致の事実をどのような形にせよ認め、不明者の何人かが生きて帰ってくれば良かったのである。全員を連れ戻そうなどという気は初めからなかった。その証拠に行方不明者の多くが不明な死を遂げたと聞かされても、それに憤りもせず、また検証もせず、あっさり平壌宣言の一字一句変えずに署名して、平然と帰ってきたではないか。何があって平壌宣言に署名し日朝国交正常化を軌道に乗せたかったのだ。
核開発を本気で止めさせようとしていたのか。とんでもない。北朝鮮の核開発に最大の懸念を持っている米国にも十分に連絡せずに突然訪朝し平壌宣言を結んだのである。しかもその中で北朝鮮に核問題について国際約束を遵守することまで書かせている。しかしこの約束がいかにデタラメであったかは、今日の北朝鮮の核開発状況をみれば一目瞭然である。日本はあの時、北朝鮮が核開発についてどのような状況にあり、どのような意図があるかについて、確たる情報も無く、また本気で核開発を断念させる気もなく、筆をなめた作文だけで満足したのだ。初めからそのつもりだったのだ。北朝鮮にとってはこんな楽な交渉は無かったであろう。騙されても文句一ついわずに鵜呑みにする。今でも平壌宣言は生きていると強弁する。そもそも日本が単独で北朝鮮に核開発の断念などさせられるはずはない。核問題は米国のみが北朝鮮に圧力をかけることが出来るのだ。その米国に事前の通報を行わず、北朝鮮の核開発情報も米国から入手せずに交渉に臨み、そして平壌宣言に合意してきたのである。
それでは小泉首相は本気で国交正常化を実現したいと思っていたのか。とんでもない。国交正常化の本質は過去の清算である。それは経済援助をばら撒く事ではない。金で外交を買うことではない。ところが小泉首相の歴史認識を考えて見るがよい。靖国参拝一つをみても明らかであろう。「A級戦犯のどこが悪い」と公言しているのである。そのA級戦犯が合祀されている靖国参拝を中国や韓国がこれほどまでに中止してくれと申し入れても「他国に干渉される筋合いはない」といって突っぱねているのである。こんな人間が本気で国交正常化を願っていたなんて悪い冗談である。彼にだけは国交正常化をしてもらいたくはないと言えるほどに国交正常化を進める資格の無い人間なのだ。要するに小泉首相は多額の経済援助と見返りに「国交正常化」という手柄を自分のものにしたかっただけなのだ。外務官僚は小泉首相のそのようなあさましい個人的自尊心を満たす事によって小泉首相の覚えめでたく出世したいと思っただけなのだ。口では歴史の清算などとかっこいい事を言っていても、魂は全く入っていないのだ。
気の毒なのは拉致不明者の家族たちだ。この三年間に受け続けた精神的苦痛は大変なものだ。しかもその苦痛は拉致交渉が頓挫した今となっては更に大きい。小泉首相や外務官僚を訴えもいいほどの精神的苦痛である。
私が残念に思うのは、その拉致家族の怒りが小泉首相や外務官僚の無責任さに向かうのではなく、経済制裁という形で北朝鮮に向けられていることである。経済制裁では物事は解決しない。経済制裁だけを言っていても世論の大勢を味方につけることは出来ない。我々が言うべきは、小泉首相に訪朝を求め、金正日と直談判して交渉で解決しろということだ。三年前に金正日総書記は小泉首相に拉致問題を認めて謝罪したのだろう。小泉首相は今こそ解決されるまで何度でも訪朝すべきである。「自分しかできないから」と大見得を切って二度も訪朝したのは小泉首相だ。それがもう点数稼ぎにはならないから訪朝しない、拉致問題は関心が無くなったでは、許されない。しかしそのとおりなのだ。もはや拉致問題は点数稼ぎにはならない。そう思ったとたん、手のひらを返したように冷たくなる。世間の話題にしたくなくなる。小泉首相はそういう政治家なのだ。
最後にもう一つ、我々が当たり前のように聞かされていて、それがとんでもない勘違いである6カ国協議について言及したい。6カ国協議の再開が重要だなどと政府は繰り返す。そんな馬鹿なことを惰性にように繰り返すのではなく、日本政府は一日も早く中国、韓国、日本、北朝鮮の4カ国協議を始めるべきなのだ。
そもそも6カ国協議などというのは、北朝鮮の核放棄しか関心のない米国が、北朝鮮との直接交渉を嫌って他の国を巻き込んで圧力をかけようとする戦術に過ぎない。そして今では孤立しているのは米国なのだ。その米国の後をついていくしかない日本なのだ。
そんないかさまに付き合わされる事なく、日本は歴史の清算も含め中国、韓国、北朝鮮と拉致問題について話し合うのだ。核についてもアジアの不拡散、米国も含めた世界的な不拡散について話し合うのだ。しかし小泉首相は自らの靖国参拝で中国、韓国との関係を行き詰らせた。自らの米国絶対追従外交のために米国に物が言えなくなってしまった。米国の参加しない会議には参加できなくなってしまった。こんな事では到底まともな外交ができるはずはない。
北朝鮮問題は、小泉外交の矛盾と外交の不在がもたらしたもっとも困難な問題になってしまった。メディアはそして我々国民は、このことを真剣に考えるべきだ。問題の本質から目をそらしてはいけないのだ。
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