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□ニューメキシコ州アルバカーキ:男は独り、今日も路上に立ち続ける [暗いニュースリンク]
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2005/05/post_b04d.html
05/20/2005
ニューメキシコ州アルバカーキ:男は独り、今日も路上に立ち続ける
Intervention Magazine2005/04/22付記事を以下に全文翻訳して掲載。(強調・記事中リンクの一部は訳者による)
或る男の孤独な抵抗(One Man's Lone Stand)
アルバカーキで、より良いアメリカを目指し、毎日路上に立ち続ける男が居る。(There is a man in Albuquerque who stands every day for a better America.)
by スチュアート・ナスバウアー:Intervention Magazine2005/04/22付け記事
http://www.interventionmag.com/cms/modules.php?op=modload&name=News&file=article&sid=1060
ニューメキシコ州アルバカーキ---ニューメキシコ大学への入り口そばの道路で、路上に立つ彼の姿を毎日見ていた。彼は看板を手にしていて、そこに書かれた数字は毎日書き換えられるが、言葉はずっと同じ。今日の看板にはこう書いてある:『1,737人:何人なら多過ぎると?"(1,737 How Many’s Too Many?)"』看板はもうひとつあって、それは舗道の街灯柱にテープで固定されている。『平和のためにクラクションを鳴らそう"(Honk For Peace.)"』前を通り過ぎる度に、私は毎日クラクションを鳴らす。しかし、今日は、停車する決心をしてみた。
明るい日差しの下で少なくなった白髪を覗かせている長身のジェス・アンレインは、たった独りの反戦活動を昨年の9月11日から始めたという。「やらなきゃならん。メディアは俺達のためには働いてくれんからな」
彼の話し振りは慎重で、真剣そのものだ。ジェスは軽々しく行動するタイプではない。私は、メディアによる戦争報道は、人々を学習へと導くようには行われていないという彼の意見に同意する。
実際、世界が崩壊へと向かっているこの時期に、最近のメディアが執心していることといえば、ローマ法王の死と新法王を巡る乱痴気騒ぎをするばかりで、私自身も深刻に事態を考えるようになっている。メディアが人々の人生にとって大切な話題、例えばクリントンのジッパー問題とかに焦点を当てるのは理解するが、もしも世界の出来事が本当に重要ならば、メディアは世界中の疑惑を執拗に追及すべく、途方もない取材をしているはずだ。そして、国民から選ばれたはずの代表者たちは、もっと多くの審理で声を荒げ、世界を弾劾しているはずなのだ。しかし、崩壊へと向かう世界は白いシミを残す代わりに、赤い血で満たされた大きな川を生み出してしまった。
私が本当によく出来てると思った政治標語のひとつは、『クリントンの嘘では誰も死ななかった"(Nobody Died When Clinton Lied!)"』というやつだ。自分でも、あれぐらい少ない言葉で思い切り主張できたらいいのに。
1台のSUV車が猛スピードで通り過ぎながら、少なくとも3秒くらいクラクションを鳴らしていった。そのすぐ後には、赤いピックアップトラックが、短く2回クラクションを鳴らす。
「それにしても、これで何か効果があるんだろうか?」私は聞いてみた。
「うーむ・・・」ジェスは躊躇した。「俺も常に確信してるわけではないんだ」そして言葉を続けた。「でも、俺は連中の為にやってるわけじゃない。自分の為にやるのさ。それに、殺されちまった全ての友人達の為にもやってる。俺にもそういう親友が3人いたよ」そこでふいに言葉を止め、目を伏せた。「3人ともベトナムで死んだがね」
1台のダンプカーが轟音を立てて走りながら、クラクションを鳴らした。去っていくトラックを見送りながら、ジェスはゆっくりと手を振る。クラクションを鳴らした車に、ジェスはほとんど全部、そうやって手を振っている。
「ここには反戦の機運なんて全くないね」ジェスは言う。「アルバカーキには50万人ほど住民が居るけど、俺に賛同する奴は10人もいなかった」
私は、徴兵制が施行されていたなら学生達もすぐ行動しただろうと話した。すぐさま激論して、プラカードを掲げて狂ったように活動するだろう。するとジェスは苦笑しながら、現在も徴兵が実在することを思い起こさせた。
州兵及び予備役兵の徴収と、現役兵士の退役を禁ずる特別命令、貧しい家庭の子供を入隊させるための学費援助システム---これらは全て、徴兵制そのものだ。しかし、今回の徴兵制は、大学生達の関心を惹いていない。
「毎日感謝してるわ」1人の女子学生が、徒歩で校門に向かいながら声を上げた。学生達の一団が、セントラル・アベニューを渡り、大急ぎで大学に向かっている。しかし、ジェスの看板に気づく者はほとんどなく、彼の活動を知るものはもっと少ないようだ。あの女子学生は、感じの良い例外でしかない。
1台のホンダ車が、短く3回クラクションを鳴らした。ジェスはゆっくりと手を振る。たぶん、10台に1台ほどがクラクションを鳴らしているようだが、平和の警笛を鳴らす人たちの職業や車のタイプには、何のパターンも見出せない。若者だったり年寄りだったり、男性だったり女性だったり、SUVだったりボルボだったり、バイクだったりトラックだったりという具合だ。
「戦争の犠牲は常に無視されてきたのよ!」1人の女の子が、ジープの助手席から叫んだ。ジェスが手を揚げて応える---「特に今の戦争ではな・・・イラクとアフガニスタンで、人を殺す理由なんか何もないさ。これは自由のための闘いじゃあない。・・・でもな、アメリカ人は戦争をやりたがるんだ」突然、彼の目は険しくなった。
ジェスの連れた2匹のプードルの片方が、私の手を舐めている。彼は面白い話をしてくれた。これまでに3回、路肩に車を停車させた運転手が、看板に書かれた数字がよくわからなかったからと言い、尋ねてきた。「いくらでそのプードルを売ってるんだって?」私達は二人でおおいに笑いあった。いい気分だった。
支持のクラクションは続き、ジェスのゆっくりとした感謝も絶えることはない。しかしながら、ジェス・アンレインにとって大切なことは、クラクションではなく、正しい行いだ。不道徳な戦争が進行する時代に、正しい行いをする。死んでしまった幼なじみの友達のために、正しい行いをする。遠い過去に起こった出来事は、恐怖と対峙する勇気を持つ者にとっては、ほんの昨日の出来事なのである。そしてジェスは、恐怖と対峙している。過ちを糾し、自身の気持ちを証言するために、アルバカーキのセントラル・アベニューに、ジェスは毎日立ち続ける。
ゆっくりとした崩壊
ワシントンポスト紙の見出しが躍った:「ブッシュ大統領の支持率、最低記録を更新」
しかし、なぜ突然、ジョージ・ブッシュが歴史を作ることになったのか?ワシントンにおける共和党の一糸乱れぬ下劣な政治活動の度重なる効果によるものだろうか?あるいは、アルバカーキのジェス・アンレインがブッシュ帝国をゆっくりと崩し始めたのだろうか?もしかしたら、その両方かもしれない。そう、陰と陽の力が政治的災難を引き起こしたのだ。
「2期目の同時期でみると、ブッシュは第二次大戦以降の大統領としては最低の支持率となっている」ワシントンポスト紙は記している。
しかし、そもそもジョージ・ブッシュは未だかつて国全体では人気があったためしがない。最初の大統領選挙では、一般投票で負けているし、2期目の勝利も一般投票獲得数はわずか50.7パーセント---もっとも、それすら怪しいのだが。ブッシュ帝国の足元を崩し、無能な敗残者へと蹴落とすには、それほど大変でもない。
薄っぺらで空疎で無価値なメディアのヒステリー時代に、多くのアメリカ人が、古いやり方で、密かに血を流し傷ついた手を挙げたなら、と思う。現在進行中の政治的泥沼は、ブッシュを確実に追い詰めている。ジェス・アンレインは、紛れもなく私達の味方なのだ。もっと多くのアメリカ人が、ブッシュ支持を考え直しているかもしれない。一端人々が頭を使いはじめたなら、何が起きてもおかしくはない。
ブッシュ政権の環境に対する政策は、アメリカ国民の大部分にとって常に不安材料だったが、最近のアラスカにおける北極圏野生生物保護区への石油採掘をめぐる法案により、懸念は一層拡大している。ブッシュ政権の米外交における過激な変化---先制攻撃や人権無視政策など---どれも多くの人々を不安にさせている。穴だらけの国境問題、国家防衛や労働者の給与に対する共和党の無関心、特に最低賃金基準などは、誰にとっても問題だ。ブッシュ政権の社会保険民営化構想、金持ち減税政策とガソリン価格急騰、膨らむ財政赤字---次世代への贈り物だ---テリ・シャイボの悲劇につけ込んだ下品で下手な企図、それらは全て、ジョージ・ブッシュの信頼性低下と支持率低下へ貢献している。
今では『抑制と均衡』という合衆国憲法の大原則をひっくり返そうという共和党議員達の意図も、ブッシュ政権の誰にとっても利するものではなくなっている。それは実際、アメリカ国民とブッシュ政権の間にできた壁に、新たなレンガを積み上げただけのようだ。
そして、国家はイラク戦争という大問題を抱えている。アメリカ人の死亡者数は3ヶ月間ほど減少していたが、4月にはまたしても死亡者数は急増している。イラク戦争が間違いだったというアメリカ人の数はゆっくり増加しており、最新のギャロップ調査によれば、54%に昇っている。(訳注:5月に公表された最新調査では、57%に増加している)
大半のアメリカ国民の見方によれば、ジョージ・W・ブッシュと仲間達はほとんどの分野で間違いを犯しているというわけだ。これは、すでに充分危険領域に達するほど人気の落ち込んだ政権にとって、決して良い事態とはいえない。そんな事情で、ブッシュ政権は絶え間なく他の問題をでっち上げている---例えば、結婚に関する憲法問題等---本当に大切な問題における不同意から国民の目を逸らせるために。
ジェス・アンレインは、彼独自のやり方でこう示している:ジョージ・ブッシュの考え方は、アメリカ人の考え方を代表してはいない。ジェスのような人々は皆、毎日そのように主張している。或る者は道路の傍らに立ちながら、或る者は滅多に配信されない新聞に投書を書きながら、あるいは集会で声を上げ、報道されることのないデモ行進に参加しながら、・・・・社交上沈黙が礼儀とされていても黙ることなく、議員事務所に電話をしたり、国家から忘れなさいと言われても拒否し、インターネットフォーラムに書き込み、真夜中のシャワーで叫んでみたりする---苦しむ人々のために、手足を吹っ飛ばされるようなことを止めさせ、人類を殺しまくることを止めさせ、虐待を止めさせることを最上課題とする、ジェス・アンレインのような人々。彼等は言っている:ジョージ・ブッシュの考えは、国民の考えに沿っていない。
それでも、ジョージ・ブッシュの支持率を決定的に貶めるビッグバンは未だないが、ブッシュ政権に異議を唱える個人はじわじわと動き出し、或る日の大統領演説に困惑したり、別の日には新たな政策に憤ったりしている。無党派層の人々---ジョージ・ブッシュの選挙勝利をもたらし、ブッシュ政権の足元を溶かし始めているかもしれない人々---この人々こそ、最も新しい異論の現場となりつつある。指導層はなく、予測不可能であり地理的にも不規則。わが国の政治的現実のゴミをあさり始め、ジョージ・ブッシュが間違っていると偶然理解した類の人々が、この重大な層に含まれている。そして、全国のジェス・アンレイン達が、小さな灯りを手に、彼等を導いている。
数ヶ月前にセントルイスで、視界も遮られるほどの土砂降りの中で、州を跨ぐ橋の上に、『今すぐ戦争を止めろ(Stop the War Now.)』と書かれたびしょ濡れの看板を掲げて、男が独り立ち続けていた。あの酷い天気の日に外に立つなんて、たいした変わり者・・・ジェス・アンレインと同じ変わり者だ。
しかし、アメリカにはジェス・アンレインのような変わり者がとても少ない。あまりにも多くの人たちが、支持のクラクションを鳴らしては、通り過ぎていく。通り過ぎず、立ち止まって世界を変えよう---マーガレット・ミードはそう言った。「献身的な市民の小集団が世界を変えられるということを、疑ってはいけません。実際、そうした人々がそれを実現してきたんです。(“Never doubt that a small group of committed citizens can change the world. Indeed, it's the only thing that has.”)」
ジェス・アンレインは、違う形でそれを語った。「言葉が変わっても気にするな。自分流でいけ。それが世界を変えていくんだ(“Don't worry about changing the word; live with yourself. That will change the world.”)」
グループでも、たった独りでも構わない。世界を変えてやろう。ジョージ・ブッシュと奴の戦争仲間に、厄介な政治罰を与えてやろう。(以上)