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5月19日―メディアを創る
◇国連改革ごっこはもう止めてくれ
120人近くの大使を3日間も東京に滞在させて町村外務大臣は何をしているのだろう。常任理事国入りのために「各国の支持を取り付けろと命じる」のなら、電話一本で済む話だ。
19日の東京、読売、日経新聞は、こぞって、米国のライス国務長官がドイツの常任理事国入りに反対の意を示したと報じている。18日付のワシントンポスト紙が、ライス長官が米国議会関係者と懇談した時もらした発言をスクープしたのだ。
日本はドイツ、インド、ブラジルと組んで常任理事国入りを目指している。ドイツが入れなくて日本だけが入るということはありえない。これは日本の目論見を米国が完全に否定しているということだ。そういえば先日は米国が拒否権を認めないと言ったばかりだ。4カ国が提案する案は拒否権を要求している。根本的なところで米国の意見が日本など4カ国の意見と対立しているのだ。世界各国の3分の2の票集めをするより、まずこれら根本問題を解決するのが先決であろう。
町村大臣は直ちに駐米大使、駐独大使を本国に帰国させ、ライス発言の真意を米国政府に問いただすべきだ、米国に拒否されたドイツ政府の反応を聞くべきだ。そしてそれを国民に情報公開すべきだ。それが外交だろう。
3日間も内輪の会議を続け、無い知恵をしぼり、乏しい情報で議論していても、まったく意味はない。これ以上税金を無駄遣いしないためにも、外交ごっこはもうやめるべきだ。あたりまえの外交を真面目にするべきだ。
◇いつまでイスラエルを甘やかしつづけるのか
19日の日経新聞に、わが目を疑う記事がでていた。イスラエルのシャロン首相が今月末にもエルサレム周辺の入植地を分離壁で囲い込む工事に着手するというのだ。
そもそも、ベルリンの壁をはるかに凌ぐ巨大なコンクリートの分離壁、パレスチナ自治区の内部にまで侵入する形で建設されつつある分離壁は、国際司法裁判所の勧告的意見で違法とされ、国連総会決議で米国とイスラエルをのぞく圧倒的多数で建設中止が求められている。
それにもかかわらず、ついにイスラエルは聖地エルサレムまで一方的に囲い込むというのだ。周知のようにエルサレムの帰属権はパレスチナとイスラエルの紛争の核心部分だ。それを一方的にイスラエルが分離壁で囲い込む。こんな暴挙を行いながらパレスチナとの話し合いなど始められるはずは無い。イスラエルにはパレスチナとの交渉などハナから考えていないのだ。
ブッシュ大統領がシャロン首相に中止を申し入れなければウソだ。日本政府は来月にシャロン首相を日本に招待し、パレスチナとの和平交渉を求めると言う。ならば直ちに小泉首相はシャロン首相にイスラエルの囲い込みを止めろと申し入れるべきだ。握手して写真を撮ればいいというものではない。
イスラエルの暴挙を放置しておきながら、小泉首相がいくら「中東和平に貢献したい」とパフォーマンス発言を繰り返しても、むなしく響くだけだ。あたりまえの外交を真面目にするべきだ。
◇イスラエルの若者に期待する
そのイスラエルで異変が起こりつつある。19日の朝日新聞が次のように報じている。
イスラエルは小さな国土の周りをアラブという敵に囲まれている。国民の誰もが国防に専念しなければならない。イスラエルのユダヤ人は男女の区別無く兵役が義務付けられている。しかも兵役を終えても、男はさらに年一回の予備役をこなさなければならないという。
その若者に異変が起きつつあるというのだ。ある陸軍軍曹が、仲間の兵士が、石を投げるパレスチナの子供を追いかけ、力任せに殴りつける、それを目の当たりにして、「これが国防か」と疑問がわき、それ以来予備役召集を忌避しているという。この若者は例外ではないという。精神疾患を装い予備役の免除を求める若者が3割にも増えているという。
それは当然だ。「パレスチナ占領の片棒を担がされている」という事実を知った若者が、「軍服を着るのは格好が悪い、おめでたい奴とみられたくない」と感じ始めるのは自分の良心に忠実である証拠だ。
予備役改革の諮問委員長を努めたベングリオン大学のアビシャイ・ブラバーマン学長は、「イスラエル軍が職業軍人だけで成り立つ時代は、今後10年は来ない。なお社会のあらゆる階層から兵士が集まってくる点で、イスラエル軍はなお人民軍であり続ける」と断言するという。
しかしこの朝日新聞の記事はこう締めくくっている、「そこにはイスラエル軍が国民の接着剤であり続けて欲しいという旧世代の願いもこめられているようだ」と。
中東和平が動き出すとすれば、事実に目覚めたイスラエルの若者が、イスラエル政府やそれを支えてきた旧世代に異を唱える時ではないかと私は思う。「石を投げて抵抗するパレスチナの子供を殴りつけたり殺したりする」事実を知った時、良心に目覚めて、イスラエル政府のやっていることは間違いだと若者が気づかないほうがおかしいと思う。
イスラエルと言う国が、「このままでは世界と協調して存立することはできない」、イスラエルの若者がそう考え、外からの声に一切耳を傾けないイスラエル政府を内部から変えていく力になる、そういう国になって欲しいと、私はこの記事を読んで心から願うのである。
◇サッチャー元英国首相の息子の罪の深さ
今年1月頃の報道で、サッチャー元英国首相の長男マーク・サッチャー氏(51)が赤道ギニアのクーデター計画に関与したとして南アフリカ共和国の裁判所で有罪判決を受けたことは知っていた。しかし19日の朝日新聞松本仁一編集委員の記事で、長男の罪の深さを知った。このクーデター計画の実施部隊が南アの傭兵会社「エグゼクティブ・アウトカムズ」だったと言うのだ。しかもそのクーデター計画の動機が、赤道ギニアの海底石油に目をつけた英国石油資本が、自分たちに都合のいい大統領にすげ替えようとしたことにあったというのだ。
松本編集委員は、最大手の「軍事請負会社」アウトカムズ社について次のように書いている。
・・・アパルトヘイト時代の旧南ア軍将兵を中心に、89年に創設。兵士の訓練、武器弾薬の補給、警備などあらゆる業務を提供する。アンゴラやシェラレオーネの内戦で政府に雇われ大きな成果を上げた・・・戦争は国家の専権事項である。傭兵とはいえ国家の軍隊の一部だ。戦争に、金銭で戦闘行為を請け負う民間企業が、大挙出現してきた。イラク戦争後の大きな変化である・・・だいたい傭兵というものはその国の兵士の士気が低下した時に現れるものだ。大量破壊兵器は無く、アルカイダとのつながりも見つからない。戦争の意義が不明確なまま泥沼に入り込んだ。米兵は士気が上がらず、テロ攻撃に怯える。傭兵会社が後ろで支える格好だ・・・
こんな傭兵会社と一緒になって、利権の為のクーデターにサッチャー元首相の長男が関与していたのだ。そういえばサッチャー首相は、レーガン米国大統領と一緒になって、南アの白人政権に対する経済制裁に最後まで反対した首脳であった。長男の関与を果たしてサッチャー元首相は知らなかったのであろうか。いずれにしてもサッチャー首相は晩節を汚したことになる。
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