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以下引用
「治安の民営化」イラクで増す危険 警備会社へ攻撃多発
2005年05月10日23時48分
イラクでは、戦争終結後の早い時期から、復興事業に携わる多くの外国企業、機関が民間警備会社にその安全を託してきた。一方で、斎藤昭彦さんが拘束された今回の事件のように、警備会社自体が狙われるケースがここにきて多発している。米軍は警備会社の存在で結果的に負担軽減を図っているとの指摘もあり、「治安の民営化」をめぐる問題が事件であらためて浮き彫りになった。
斎藤さんが同僚らとともに武装勢力に襲撃されたとみられるイラク西部アルアサドからさらに西に250キロ進んだシリア国境の町カイム。付近では、7日から米軍が1000人を投入、大規模な掃討作戦を進めていた。作戦は現在も続いている。武装勢力100人を殺害し、8日の1日だけで54人を拘束、多数の武器庫を発見したという。
「ネズミの道」。米紙ニューヨーク・タイムズによると、カイムからヒートを経てラマディに至るユーフラテス川沿いの街道を、米軍はそう呼ぶ。ザルカウィ幹部が率いるとされる「イラク・アルカイダ機構」やシリアからの志願の外国人戦士が、住民の協力を得て自由に行き交っているという。
この地域は大半がスンニ派教徒で旧フセイン政権の軍、情報機関幹部の出身地でもある。
「ハート・セキュリティー」社は、昨年4月にも警備員5人が中部の町クートでシーア派過激派と見られる武装グループに襲われ、南アフリカ人スタッフ1人を失っている。
このような状況下で、斎藤さんのようなプロの外国人警備員は、最善の自衛策を取っていたはずだ。だが、武装勢力はその斎藤さんら一行の動向を事前に把握していた、と犯行声明の中で語っている。
バグダッドに拠点を置く別の外国警備会社のスタッフは、武装勢力が斎藤さんらの一行に狙いを定めた理由について、(1)アルアサド基地への出入りが見張られていた(2)イラク人スタッフ(警官や護衛)による情報漏洩(ろうえい)があった、などの可能性を指摘した。
通常、警備会社は、最も危険な基地などの出入りに際して、車や時間を頻繁に変えるのと併せ、事前にイラク人スタッフに周囲の安全を確認させる。しかし、たとえ信頼されているイラク人スタッフであっても、脅迫などで情報を漏らさざるを得ない状況に追い込まれる危険性は常にある、という。
◇ ◇
米国務省は、ホームページでイラクでの復興ビジネスにかかわる企業向けに30を超える民間警備会社のリストを提供している。業務内容の紹介欄では、どの会社も警護に加え、「危険評価」「危機管理」などを得意分野としてあげている。
99年設立のハート・セキュリティー社は各地にスタッフを派遣する多国展開型。自らのホームページで、ジンバブエやスーダンなどでのBBC記者の警護やマラッカ海峡での海賊対策の海上警護などの活動を紹介している。
イラクでは送電線の警備やイラク治安部隊の訓練、メディアや企業関係者の警備などの業務に従事。現在募集中のイラクでの仕事は日当300〜340ポンド(約6万〜6万8000円)で、勤務期間は最低56日間という。
米英メディアの報道によると、警備会社がイラク各地に派遣している民間人は約2万人。昨年6月のイラクへの主権移譲前後と比べても5000人近く増えたことになる。9200人の駐留英軍をしのぎ、13万8000人の米軍に次ぐ「第2の勢力」といえるほどに膨らんだ。
英国の軍事アナリスト、ティム・リプリー氏は民間警備会社の広がりの背景に冷戦後各国で進んだ軍縮をあげる。軍の要員が大幅に解雇される一方、元特殊部隊要員らが警備会社を設立して経験豊かな退役軍人の受け皿作りを進めた。
特に米国では90年代、クリントン政権が軍事費を削減。大幅な兵員削減にともなって業務の外注化が進んだ。その穴を埋める形で、米軍から業務を受注する民間企業が成長した。
そんな中、警備会社の活動を一気に活気づけたのは01年9月の同時多発テロだ。ブッシュ政権はアフガニスタン、イラクと相次いで武力制圧。成長中の警備業界に、復興事業に携わる企業、機関の安全という大きな「マーケット」が広がった。
だが、警備員はあくまで民間人。戦闘員とは位置づけられていないため、戦闘に巻き込まれた時の対応や自己防衛の目的で発砲した際の正当性などもグレーゾーンだ。
戦場でビジネスをする企業の動向に詳しいブルッキングズ研究所のシンガー主任研究員(対イスラム世界外交研究部長)は「警備会社に業務を託すことで、米国社会に不満が根強い予備役の招集は抑えられる」と、米政府にとっての民間警備会社の効用を指摘する。
「戦場で命を落としても米兵の犠牲者には加えられない。(米国内で)イラク攻撃を決断した政府への批判を和らげている側面も否定できない」と話した。
引用ここまで URLhttp://www.asahi.com/international/update/0510/020.html