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欧州憲法がフランスとオランダの国民投票で相次いで拒否されたことは、米国では、欧州連合(EU)の前進を止め、主権国家の自主性を示した歴史的な事態としてみながら、米国や米欧関係にとっては好ましい展開との見方が表明された。
第一次ブッシュ政権の大統領顧問だった政治評論家のデビッド・フラム氏は二日、フランス、オランダ両国民が欧州憲法を葬ったことを「米国にとっても米欧関係にとっても好ましい動きだ」と評し、その理由として(1)共通の憲法で団結する欧州は新しい思考やアイデンティティーの希求のために反米主義を共通のきずなとする恐れがあった(2)共通憲法下での各国の統合が進むと、選挙で選ばれた各国の政治家が選挙で選ばれていないEU本部の官僚に実権を引き渡すことになる(3)EUという超国家が主権国家を抑えることは国民レベルで自国や自民族への誇りを殺すことになるとして、国民が反発した−などの点をあげた。
この発言はブッシュ政権に近い大手研究所、アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート(AEI)が開いた「共通憲法なしの方が、よりよい欧州?」と題するシンポジウムでなされた。このタイトルが示すように米国のブッシュ政権周辺の保守派の間では今回の動きについて、欧州各国が一つの超国家の連合体へと進む流れの停止として非公式に歓迎する向きが多い。
米国保守派は国際問題での主権国家の自主的な役割を最も重視し、その主権を一部にせよ奪う国際機関や超国家機関への反発が伝統的に強い。
しかし、シラク仏大統領やシュレーダー独首相が欧州憲法での欧州の統合推進を米国への対抗手段としてきたという見方は米側ではブッシュ政権とは距離をおく非保守陣営にも根強く、ワシントン・ポストのコラムニストのジム・ホーグランド氏も「仏独首脳が米国の軍事、経済のパワー増大の危険を欧州の政治統合の理由に使ってきた」と述べた。
今回の欧州での事態が米国のリベラリズムへの痛烈な打撃になったという見方も、ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、デビッド・ブルックス氏により表明された。
統合へと進む欧州は、米国のリベラル派が主唱する寛大な社会福祉政策、労働者保護、高率の累進課税、単一の健康保険制度、寛容な年金供与などの政策を採用してきた。それらの政策の結果、欧州は高失業率、低経済成長率、高齢化、人口減少に悩まされ、斜陽と衰退の道をたどっており、そうした諸政策をさらに拡大する形での欧州統合こそ欧州国民から排された、というのだ。
しかも、欧州の国民はその斜陽から抜け出す方途としても国家統合や超国家結成という選択には背を向けたことになる。となると、ブルックス氏の議論では米国のブッシュ政権の独立国家の主権最優先の保守主義が正当性を証したという結論にまでなってくる。この種の見方は米国保守派の間では「究極の皮肉はイラク戦争に反対したシラク、シュレーダー両首脳が自国民から叱責(しっせき)され、賛成したブッシュ、ブレア両首脳がともに再選を果たしたことだ」(法律家のアラン・トポル氏)という指摘にまで発展する。(ワシントン駐在編集特別委員 古森義久)
(産経新聞) - 6月4日3時5分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050604-00000001-san-int