★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK14 > 796.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
小泉ガリバーの出現:私の見方/5止 元首相・中曽根康弘さん
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20050917ddm005010013000c.html
◇初心帰り本命課題を
私が首相当時(1986年)の衆院選でも、280議席前後かなと思っていたのが300まで来た。この時にはこれだけの議席に値する政治がやれるかどうか、喜びより国民の期待に対する重圧感の方がありましたね。小泉君(純一郎首相)も同じだろうと思います。
白黒で単純化された小選挙区制に乗って、選挙戦のうまさが光った。彼は卓抜な勝負師ですよ。数カ月前から解散を想定し、各選挙区を調べて戦術、戦法を研究していたのだろうが、自民党も野党も気付かなかった。太平洋戦争を開戦した日本軍の真珠湾奇襲作戦のように、兵力を一挙に集中し奇襲的に解散を打った。「郵政改革」「小さな政府」「官から民へ」と、三つの有効な弾に限定して国民の頭に染み込ませたのに、野党は対抗策を持たなかった。
テレビをうまく使って選挙自体を劇場型に仕立て、最後は党首戦にも完勝した。小泉君はクールビズという戦闘服をずっと着て、毎日新しい服に変えた。色彩のある値段の高いものだと思う。片っ方(岡田克也民主党代表)は上着を着たり、ワイシャツ姿に変わったりで、小選挙区の劇場選挙への認識の差が出た。
小泉君は切れの良さ、清潔性を持っていて、さっぱりしている。片っ方は悪いけど、苦しげな表情で終わった。これでは女性は小泉君に拍手すると思う。日本軍はおごって次のミッドウェー海戦で決定的に負けたように、小泉自民党もおごると次の参院選ではミッドウェーになりますよ。
我々が「小泉は変人だ」と言ってきたが、日本自体が変人型社会になっていた。国民意識が90年代の日本の暗い漂流のあとに「既成秩序を破壊し、新しい世界に日本をもっていけ」と変わり、圧力グループに入っていた建設、農業関係者たちがグループの言うことを聞かなくなった。大半が無党派層になり、テレビ、携帯電話、インターネットで個別的な独立人に変わってしまった。そんな時に「自民党をぶっ壊せ」と叫んだ小泉君に先見の明があったわけだ。
ただ、小泉解散は大統領的大衆政治で憲法、議院内閣制的秩序を侵食していないかという課題を残した。衆院通過の法案が参院で否決された場合の手続きは憲法や国会法で決められているのに、その手続きを無視し、郵政法案だけを正面に解散という内閣の信任を問うやり方に持っていった。両院制なので衆院は参院へのエチケットが必要だが、今度の解散にはそれがなく、政治的クーデターの要素がある。
小泉改革は郵政のように局部的、各論的なものに一生懸命になり過ぎて、本命の問題を扱っていない。国家の基本にある憲法、財政、社会保障、地方分権、人口減少、中長期的な外交などの政治課題を軽視している。残り1年でこうした問題に決着をつけて工程管理を表に出すか注目したい。
戦後60年、自民党立党50年の節目の年に衆院選の大勝利。この三つの意味を考えてほしい。50年前の保守合同による自民党結成の第一目標は占領政策からの主体性の回復と、憲法、教育基本法の改正にあった。今日これだけの大きな多数が与えられたのは、憲法改正、教育基本法見直しなど、自民党創立時の「初心に帰れ」という天の命が下ったのである。【聞き手・徳増信哉】=おわり
毎日新聞 2005年9月17日 東京朝刊
▲このページのTOPへ HOME > 政治・選挙・NHK14掲示板