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【社説】
2005年09月17日(土曜日)付
「狙撃」発言 口に出すおぞましさ
政治の場で使われる言葉は、ここまで乱暴になってしまったのか。15日に開かれた民主党の両院議員総会でのことだ。小泉首相の掲げる郵政民営化を批判して、西村真悟衆院議員が次のように発言した。
「マネーゲームの世界に国民をなだれ込ませているのが小泉なんです。あれは狙撃してもいい男なんです」
周囲から「撤回しろ」との声が相次いだため、西村氏は「みんなが言うから訂正します」と応じた。
「狙撃してもいい」では、政治テロを容認しているとしか受け取れない。当人は、単なる比喩(ひゆ)で訂正もした、と弁解するかもしれないが、そもそも公の場で口にできる言葉とは思えない。政治家の発言の責任を厳しく問う欧米諸国だったら、進退問題に直結しただろう。
日本では近年、政治の場での言葉がすさんでいる。強い表現、刺激的な言い回しを使ううちに、言葉の重さを忘れてはいないだろうか。
2年前、日朝交渉を担当する外務省幹部の自宅で爆発物を模した不審物が見つかった。その際に、石原慎太郎東京都知事は「爆弾を仕掛けられて当たり前」と述べた。私たちはこの発言を「テロ容認そのものだ」と批判した。
個性的な政治家が口を滑らせただけのことだ。いちいち目くじらを立てるのは大人げない。そんな見方もあるだろう。しかし、テロを認めるような言動は、どんなささいなものであれ、見過ごしてはならないと考える。
武力や暴力による言論の否定は、民主主義社会を破壊することだ。乱暴な言葉に慣れっこになり、そうした危うさへの感度が鈍ることを恐れる。
それにしても解せないのは、西村氏が民主党にいることだ。小沢一郎氏の率いた旧自由党に属し、後に合流した経緯はわかる。しかし、民主党はアジア重視の外交を唱え、岡田代表は首相の靖国神社参拝に反対している。
一方の西村氏は靖国参拝に賛成したうえ、日本の過去の戦争は自存自衛のためであり、侵略戦争ではないと断言する。
97年には中国と領有権を争っている東シナ海の尖閣諸島に上陸した。このときは石原氏が船で同行している。99年には雑誌の対談のなかで日本の核武装の検討を唱え、防衛政務次官を辞任した前歴もある。あまりにも考えが違いすぎる。
それだけにとどまらない。03年に「建国義勇軍」や「国賊征伐隊」を名乗って広島県教組などに銃弾を撃ち込んだ刀剣愛好家団体の最高顧問を務めたことがある。その団体の会長が役員である会社から政治献金を受け取っていた。
「狙撃してもいい」という西村氏の発言に、その場で何人かの民主党の議員が声をあげて撤回を求めた。適切な判断だったと思う。しかし、解党的出直しを言うのなら、こうした資質の政治家を抱え続けることの当否についても、真剣に考える必要がある。
http://www.asahi.com/paper/editorial20050917.html#syasetu2
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