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(回答先: !今回小選挙区で完全惨敗した民主であるが、前回小選挙区の総得票数を300万票も上回っている。 投稿者 cacophony 日時 2005 年 9 月 14 日 17:50:29)
http://sp.mt.tama.hosei.ac.jp/users/igajin/home2.htm
9月14日(水)
「小泉マジック」と「小選挙区制マジック」の合体による巨大与党の出現
民主党について書こうと思ったのですが、昨日の表を見ているうちに、まだ指摘しておくべきいくつかの事実に気がつきました。昨日の叙述の補足として、以下に書かせていただきます。
第1に、圧勝した自民党は、比例区で500万票強、小選挙区で600万票強を増やしたにすぎないということです。これは、前回衆院選で民主党が増やした700万票よりも少ない数です。
増加分だけを見れば、今回の自民党は前回の民主党に及ばないということになります。それがどうしてこれほどの圧勝になったのかというと、何度も言いますが、小選挙区制のカラクリのためです。
第2に、自民党の増加は500〜600万票ですが、これ以外に、国民新党、新党日本、諸派・無所属が合計で300万票強を獲得しています。これをあわせると800〜900万票になります。
これが、保守勢力全体で増やした票数です。将来、国民新党、新党日本、諸派・無所属などが自民党に合流すれば、それは自民党のものとなり、今回での増分として加算されることになるでしょう。
第3に、民主党は比例区で106万票の減ですが、小選挙区では300万票近く増やしています。小選挙区でこれだけ増やしているのに議席が大きく減っているのは、増え方が自民党よりも少なかったからです。
そのために相対多数の座を自民党に奪われ、民主党の候補者に投じられた票の多くは「死票」になりました。ここにも、小選挙区制の「特性」が現れています。
第4に、公明党は比例区で26万票増、小選挙区で9万票増になりました。比例区で獲得した899万票は過去最高になり、議席を減らしたものの善戦・健闘と総括しています。
しかし、比例区での26万票の増は、共産党が増やした33万票よりも少ない数です。自民党の全面的なバックアップを受けても、この程度しか増えなかったということになります。
第5に、共産党は比例区で33万票増、小選挙区でも10万票増となりました。前述の通り、比例区での増分は公明党よりも多く、小選挙区では立候補者数を減らしたにもかかわらず、得票を増やしました。
第6に、社民党は比例区で69万票増となり、小選挙区では71万票減となりました。比例区での増分は、公明党の3倍弱、共産党の2倍強になります。
比例区で社民党が勢力を盛り返したことは明らかです。小選挙区での減少は、立候補者を大きく減らした影響です。
第7に、共産党と社民党は、比例区での合計で102万票も増やしています。これは民主党が比例区で減らした106万票とほぼ匹敵します。つまり、民主党が減らした分を共産党と社民党が吸収したという解釈が成り立つかもしれません。
「小泉マジック」とマスコミの結託など、総力を挙げた取り組みにもかかわらず、それによって新たに自民党が集めた得票は比例区で523万票、小選挙区で643万票にすぎませんでした。投票総数での割合にすると、比例区で7.7%、小選挙区で9.4%になります。つまり、投票した人々の1割に満たない数です。
たったこれだけの人々によって、3分の2以上という圧倒的な勝利が自民党にもたらされました。それは小選挙区制のカラクリによって助けられたからです。
「小泉マジック」によって作り出された変化が、「小選挙制マジック」によって増幅された結果が、今回の自民党の圧勝でした。つまり、巨大与党はこの「小泉マジック」と「小選挙区制マジック」の合体によって生み出されたことになります。
このように、各党の得票数を厳密に検討すれば、議席の変動によって示されているほどには、劇的な変化があったわけではないということが分かります。小選挙区制という「制度のカラクリ」に惑わされてはなりません。
自民党は議席で示されているほど多くの国民の支持を集めたわけではなく、民主党はじめ野党各党も国民から見放されたわけではありません。圧勝した自民党には自制が求められるゆえんであり、敗北した民主党もそれほど悲観するにはあたらないということになるでしょう。
ということで、民主党については、明日、書かせていただきます。
9月13日(火)
自民党に押し寄せた「変革願望」の波
「こんなにバカな国民が多かったのか」という驚きの声が、ネット上を飛び交っています。「バカな国民」とは穏やかではありませんが、今回の総選挙で自民党の圧勝を作り出した人々のことです。
今回の選挙を端的に評すれば、自民党の圧勝と民主党の惨敗、後はほぼ微増ということになります。このうち「バカな国民」は、「小泉マジック」に踊らされて投票所に向かい、自民党に入れた人々です。
それはどれほどの数になるのでしょうか。数字で確認してみることにしましょう。そうすれば、今回の結果は、「バカな国民」以上に「バカな選挙制度」に、より大きな責任のあることが分かるでしょうから……。
まず、下の票をご覧ください。比例代表と小選挙区の前回と今回の得票数を比較したものです。
衆院選党派別得票数の前回との比較(万票)
比例代表
今 回
前 回
増 減
自民党
2589
2066
523
民主党
2104
2210
△106
公明党
899
873
26
共産党
492
459
33
社民党
372
303
69
国民新党
118
−
118
新党日本
163
−
163
諸派・無所属
43
−
43
合 計
6781
5910
871
*国民新党、新党日本、諸派・無所属の合計は324万票
小選挙区
今 回
前 回
増 減
自民党
3252
2609
643
民主党
2480
2181
299
公明党
98
89
9
共産党
494
484
10
社民党
100
171
△71
国民新党
43
−
43
新党日本
14
−
14
諸派・無所属
326
417
△91
合 計
6807
5950
857
政党の力関係がハッキリと表れる比例区で比較してみましょう。前回93年総選挙の投票総数は5910万票、今回は6781万票ですから、今回新たに投票した人は871万人になります。この人たちが、投票率を6.66ポイント押し上げたわけです。
この新たに投票した人のうち、324万人が新党に入れたと考えれば、残りは445万票です。これに民主党が今回減らした分、106万票を加えて、公明、共産、社民の微増分を減らせば、自民党の増加分523万票となります。
これが、今回新たに自民党に投じられ、圧勝を作り出した「バカな国民」の数です。523万という数字は、このような劇的な結果を生み出した要因として、多いのでしょうか、少ないのでしょうか。
自民党が増やした得票数は523万票ですが、これを得票率で見ると前回35.0%から、今回38.2%への増となります。わずか3.2ポイントの増加にすぎません。
投票総数での割合も8%弱です。自民党の比例区での当選は、前回が69で今回は77です。8議席増ですから、それほどの増加ではありません。1割ほど増えただけです。
それなのに何故、これほどの躍進につながったのかというと、その秘密は小選挙区制にあります。自民党の小選挙区での当選者は、前回の168から今回の219へ51も増えました。議席では130%もの増加ですが、得票数では643万票、得票率ではわずか4ポイント増えただけです。
ここに小選挙区制の特性が明瞭に表れています。第2党とのわずかな差が、議席の上ではきわめて大きな差に増幅されるという特性です。
自民党と民主党の差は771万票で、得票率からすれば11.4ポイントにすぎません。それが議席になると219対52という4倍以上もの差になってしまいます。
これが、人為的な多数派を作り出す小選挙区制の仕組みです。安定した多数派を生み出す機能だとして、これをプラスに評価したのが小選挙区制導入論者たちでした。
つまり、今回の自民党の圧勝は制度のカラクリによるもので、民主党の後退はそんなに大きなものではなく、自民党と民主党の差も見かけほど大きくはありません。民主党にとっては、十分挽回可能な位置に付けているということになります。
また、「こんなに多かったのか」というほどに、「バカな国民」が多かったわけでもありません。確かに、今回新たに自民党に投票した523万票という数字は決して小さなものではありません。
しかし、民主党は2000年衆院選の1508万票から2003年衆院選の2210万票へと702万票増やした実績があります。523万票は、決して追い抜くことのできないほどの差ではないでしょう。
しかも、この523万票は決して「バカな国民」などではなく、日本の政治を変えたいという「変革願望」の特殊な現れ方のように思われます。選挙のたびごとに、その受け皿を求めてさまよい続けてきた「変革願望」が、「改革幻想」に惑わされて小泉自民党に向かったというのが、今回の結果なのではないでしょうか。
以前、雑誌『経済』2004年10月号の座談会「現代日本とイデオロギー V部 対抗的イデオロギーの現状と展望 科学的社会主義・社会民主主義・市民主義の盛衰」で、このような「変革願望」について、私は次のように指摘したことがあります。
日本の場合、いま申し上げたような形で対抗イデオロギーはあったのですが、それが「変革願望」を受けとめて政権を変えるほど大きな力にはならず、「受け皿」としてはっきり認知されませんでした。89年参院選では社会党がこのような変革願望の「受け皿」として期待されたわけですが、その後は「無党派」に向かって青島・ノック現象を生みだし、95年参院選では新進党を躍進させ、98年参院選では共産党にもこの波がやってきます。01年参院選では「小泉ブーム」という形で自民党にまで「変革願望」の波が押し寄せました。そして今回、04年の参院選では民主党がこのような「変革願望」の「受け皿」になった。「受け皿」としての民主党は03年衆院選でデビューし、今回の参院選で認知されたということになります。
つまり、03年衆院選、04年参院選と、2度にわたって「変革願望」の「受け皿」となった民主党は今回の衆院選では見限られ、01年参院選に続いて、再び「『小泉ブーム』という形で自民党にまで『変革願望』の波が押し寄せ」たわけです。民主党が、「受け皿」としての期待を持続させることができなかったからです。
その結果、比例代表区では、前回に比べて民主党だけが得票を減らしました。今回の選挙について、「自民党が勝ったのではなく民主党が負けたのだ」といわれるのは、そのためです。
民主党は、今回、大きな失敗を犯しました。それはある種の警告だったと言えるかもしれません。
ということで、この点について詳しくは、また明日……。
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