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日本は外交主権も金融主権もないという事実から目を塞いで改革を叫ぶのは大本営発表の強がり(西尾幹二)
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投稿者 愛国心を主張する者ほど売国奴 日時 2005 年 9 月 12 日 09:47:09: tTp1/cyvuKUmU
 

投票日の朝に
 昨日ある企業の社長さんに会って、今度の選挙は革命ですね、と彼が嬉しそうに期待をこめて語るのを耳にした。小泉首相の乱暴なやり方が日本の社会を確実に変える、というのだ。従来の保守層、自民党支持者に、このような希望の声の小さくないことに私も気づいている。

 小泉首相の乱暴なやり方は、手を変え品を変えこの四年間繰り返されてきた。前回の参議院選挙の前にはジュンキンスさん騒動があった。外務省に命じてインドネシアを舞台に曽我ひとみさん一家の涙の再会シーンが演出された。あまりに見えすいた拉致被害者の選挙利用であることは誰の目にもはっきりしていたが、国民は曽我一家の幸福を喜び、首相の策謀を咎めなかった。

 今度の郵政解散も人目を驚かせただけでなく、自民党内に独裁恐怖心理を引き起こした――鴻池元大臣の参議院再否決はもうしないとの情ない白旗宣言ににじみ出ている――効果もやはり政治的にも、道徳的にもあまり非難されないで見すごされてしまうのかもしれない。

 それは国民の側に、変化を期待する感情がいつも余りに強いからである。日本が主権国家としての立場を確立するための変化なら歓迎されてよいだろう。しかしわけも分らず何でもかんでも変化を期待し、首相が「自民党をぶっ壊すだけでなく、永田町をぶっ壊す」というメッセージを出すと、何かが大きく変りそうな幻想を抱いて、従来の保守層にまで希望の心理が芽生えるのは、今まで何度も首相に乗せられ、また同じ手で同じたぐいのペテンに乗せられる人間の心の弱さ、哀れさを、しみじみ感じさせずにはおかないのである。

 この四年間の北朝鮮に対する首相の対応は、決して0点ではない。地村、蓮池、曽我の各家族を取り戻すことに成功しただけでも立派だったといえないことはないだろう。しかしブッシュの「悪の枢軸・イラク―イラン―北朝鮮」の発言があって初めて切り口が開かれたのであって、日本に外交主権があって起こった出来事ではない。外交主権がないことをむしろあらためて痛いまでに感じさせたものが北朝鮮の拉致事件であった。

 であるとすれば、郵政民営化が日本に金融主権がないことを同様に痛感させる事件であることを、日本人は正直に見つめるべきであろう。90年代、いわゆる「マネー敗戦」が進行した。あれはレイテ沖海戦だと自嘲する人がいた。とすれば郵政民営化は、台湾沖海戦から沖縄戦へ、そして広島・長崎への原爆投下になぞらえるべき事件ではないだろうか。

 日本は外交主権もなければ金融主権もない。その事実を正直に見つめないで「改革」と叫ぶのは、私には戦争末期の「大本営発表」の強がりに似ているように思えてならない。

 日本人はいま自国の主権確立のための、独立国家になるための「変化」だけを求めていけばよい。それ以外の「変化」を期待するのは幻覚である。小泉首相は永田町をぶっ壊してもいないし、ぶっ壊すこともできない。本当にぶっ壊すなら、もっと巨大なタブー、「平和」というタブーに挑戦しているはずである。

 そんな勇気もないし、そんな意思もない。むしろ自民党は逆の方向に走り出している。東京や静岡の比例女性候補者などに、平板な進歩主義的平和主義論者がかつがれていることが、自民党の左への移動を示唆している。

 当「日録」管理人の長谷川さんが9月8日に、次のように私に私信を送ってきた。まず昨今の「日録」の感想から始め、

今回、訪問者数も多く、ブログの役割は十分に果たしていますね。
小泉信者というよりも、自民党が元の自民党であると錯覚している人たちは、自民党を支持することによって郵政民営化というまん前にある落とし穴に落ちますが、その後の日本の行方に自分達の責任はないと思うのでしょうか。

 
 上記は私の気持をよく分ってくれている人の文章である。私もたしかにこういうことを言いたかったのだと思う。自民党は左へ移動しただけではない。責任感のある立派な伝統保守派の議員を多数見境もなく追放した。党内の融和をこわし、地域社会の義理人情を破壊し、恐怖と相互不信の情を政治の世界に持ちこんだ。

 自民党はもはや昔の自民党ではない。公明党の毒が全身にまわって、リベラル左翼の、ホリエモン的価値が横行する、しかも自由も民主主義も忘れた、人を統制したがる強権政治に傾く方向へ走りだした。

 私は自民党が圧倒的多数を占めることを望まない。今回は痛いお灸をすえる必要がある。地域によって異なるが、私は自民・公明・共産・社民の四党以外ならどこでもいいと思う。四党以外の党に投票する。

 それについて日米関係や安全保障の面で危いことが起こると心配する人がいる。自民党よりもっとひどい人権擁護法や外国人参政権を用意している民主党を選ぶことはやっぱりできない、という人もいる。それはそうだろう。

 けれども参議院は自民党多数であるから、急にどうなるものでもない。民主党は横路何某と西村眞悟が一緒にいる保革寄り合いの同床異夢の党である。あそこが一枚岩でありつづけることは考えられない。いつの日か分裂することは想定の内である。民主党が分裂するためには、自民党が弱くなるのが前提である。自民党が圧倒的に強ければ、寄り合い世帯の党も結束を固めざるを得ない。

 今度自民党は少し分裂したが、もっと大きく割れることが必要である。民主党内の同じ国家観、歴史観をもつ勢力と組んで、本当の、真正保守の党を結集してもらいたい。いっぺんにそうならなくても、この意味での政界再編が早く始まるためにも、小泉政権のひとり勝ち、独走体制は決して望ましくない。

 小泉強権の成立はむしろ危険である。時代の要請に逆行していると私は考える。

 以上投票日の朝の感想である。

(緑色部分、9/11 10:52追加)
http://nishio.main.jp/blog/archives/2005/09/post_218.html

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