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2005.9.26(その1)
2005年森田実政治日誌[361]
総選挙の敗北を乗り越えようとたくましく生きる人々を訪ねて知ったこと――数々のおそるべき現実
「貧しい者は知っているが金持ちは知らないこと、病人は知っているが健康な者は知らないこと、愚か者は知っているが知的な人間は知らないことがある」(ジェラルド・ブレナン)
いま私は毎日のように総選挙で苦難を強いられた人々を訪ね歩いている。
敗者は知っているが勝者は知らないことがある。それは真実である。いままでの歴史は勝者の記録だったが、今後は敗者の記録を歴史にして残さなければならないと思う。
勝者のみが生き残り、敗者はこの世に生きつづけることが許されなかった時代には、敗者の記録は残らなかった。しかし、いまは、勝者といえども敗者の生命を奪うことはできず、敗者は生き残る。いま、敗者の側からの真実を記録することが可能となった。これこそが真実の歴史である。
9月11日の総選挙について、勝者の側はきれいごとのみを語っている。勝者にとって都合のよいことを語っている。このために、時に真実は隠される。しかし、実際に何が起きたか、どんな理不尽なことが行われたかは、敗者の側の証言を聞くとよくわかる。
いま私は毎日のように敗者の側を訪ねて激励するとともに、“敗軍の将”の証言を聞いている。以下では、三つのみ紹介する。
(1)愛知県民主党員の証言=「トヨタにやられた。トヨタ自動車全体だけではない。下請け、孫請け、系列、取引企業のすべてが、末端まで選挙運動に加わった。どんな小さな集会でも社長以下幹部の出席が義務づけられた。トヨタは企業全体が巨大な政治・選挙運動の集団になった。いままで民主党を支持してきたトヨタ系労働組合は破壊され有名無実化された」
トヨタは日本を代表する巨大な世界企業である。日本のみならず、下請け、孫請け、系列、取引企業のすべてを総動員して自民党のための選挙運動を、先頭に立って行ったのだ。「トヨタは政治企業だ」と言われるようになった。
トヨタの経営者に問いたい。政治と経済(企業)との間の(政経分離の)節度を超えて、政治・選挙運動に精出して、労働組合をつぶし、政権交代可能な政治システムを踏みつぶすようなことをして、世界的大企業の経営者として恥ずかしくないのか、と。日本を代表する世界企業が小泉自民党政権の首にぶら下がって生きていていいのか。経営者としてのプライドはないのか、と。いっそのこと、これからは社名を「トヨタ自民党自動車」とでも変えたらどうか。
(2)石川県民主党員の証言=「宗教団体の選挙運動が猛烈をきわめた。創価学会ほかすべての宗教団体が自民党の候補者の選挙運動を行った。まるで宗教団体選挙だった。宗教団体にやられた」
(3)中国地方の保守系候補陣営の証言=「外資系企業の選挙運動がすごかった。何がなんでも小泉自民党を勝たせようというアメリカ系企業の執念のようなものが感じられた。外資系企業の末端まで動かすような選挙運動にやられた」
今回は以上、三つの証言のみを紹介するが、これから9.11に日本列島で何が起きたかを明らかにしていきたい。日本の民主主義国とはほど遠い現実が明らかになるだろう。
昭和17(1942)年4月30日の「大政翼賛選挙」と同じように、国家、産業界、金融界などすべての経済界、宗教界、諸々の社会組織が、挙げて自民党の選挙運動に動員されたのである。アメリカ系企業も動いた。巨大広告会社も動いた。そして巨大なマスコミ(とくにテレビ局のすべて)が「不偏不党」原則を放棄して自民党政権の広告体となって、国民全体を洗脳しようとした。日米の政治権力と企業が政権交代可能な民主主義の生き方をつぶそうとしたのである。自公連立政権が衆院の3分の2以上の多数を実現したのは、平成版大政翼賛選挙の結果である。小泉首相の勝利と引き換えに、日本は民主主義を捨てた。「これでいいのか」と問いつづけなければならない。
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