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似非ボナパルティズム − 没落させられる者が没落させる者を熱狂支持する
http://critic2.exblog.jp/1090743#1090743_1
今回の総選挙の結果と経過について、選挙の翌日に、それを捕捉解読するキーワードとして「革命」と「ファシズム」の二つを挙げた。あの夜、朝まで眠れず悶々としながら、直観的に思い浮かんだ言葉であり、それぞれ掘り下げて分析と検討を加える必要があるけれど、その作業を飛ばして、さらに第三のキーワードを挙げてみたい。それは「ボナパルティズム」或いは「似非ボナパルティズム」である。これは政治学の古典的な概念だが、最近はあまり流行らない。昔はボナパルティズム論をよく耳にしたが、現在はこの概念を駆使して政治を説明できる学者も減ったし、ボナパルティズムの言葉で説明しなければならない現実や現象が地上から姿を隠していた。古臭い感じがしてためらった。で、思うのだが、これから本屋でファシズム関係の本が売れるのではないだろうか。日本の思想状況の変化に敏感なアンテナを持っている神田三省堂本店の四階あたりで、そういう品揃と陳列になるのではないかと予想する。
二年ほど前に神田三省堂の四階で名著復刊のイベントがあって、そこにノイマンの『ビヒモス』が並べられていた。「あら懐かしい」と思いつつつ、価格の問題もあって素通りしてしまったが、今ならそのまま鷲掴みにしてレジカウンターに持って行きそうである。山口定とか、E.フロムとか、懐かしい顔ぶれがマスターズリーグのように書店の店頭に戻って来るのではないか。岩波の「哲学思想辞典」を開くと、ボナパルティズムの特徴を次の三点に西川長夫が整理している。@人民投票と普通選挙によって支持された「大革命の子」の強調、A産業育成の政策主張、B儀式や祭典を多用して国民統合を図る宣伝と情報操作。Aの「産業育成」を「構造改革」に置き換えれば、眼前の小泉政治は上の三点にぴったり当て嵌まる。と言うより、何やら、今回の郵政民営化総選挙を仕掛けた首相側近が、このボナパルティズム論を事前に読んでいて、役者の小泉首相にこれを実践させたのではないかとすら思わされる。
フランス語の一般的な言葉であったボナパルティズムを政治学の概念にしたのはマルクスで、政治学では『ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日』に従ってボナパルティズム論が講義される。そこで重要なのは、マルクスがそれを分割地農民を支柱とした独裁権力として把握していたという点だった。講座派経済学は、このボナパルティズム(ナポレオン的観念)の概念を戦前の日本資本主義の分析、いわゆる天皇制ファシズムの構造分析に適用して、「似非ボナパルティズム」の概念で没落する自作農が直接に(救済者として偶像崇拝する)天皇に忠誠を誓う倒錯した構造を析出している。本来、寄生地主の権力である天皇の独裁権力が、観念倒錯によって自作農の権力のように擬制され、没落自作農が逆に天皇制を支える強力な支持基盤となるのである。ナポレオンは分割地農の土地所有を保障したが、戦前の天皇制は昭和恐慌で自作農を没落させた。眼前の「小泉改革」のボナパルティズムは「似非」だろう。
小泉政治を考察するにおいては、ファシズムの言葉だけでも十分かも知れないが、例えばマスコミと政権の「束」の現状を表現するにはファシズムだろうが、小泉首相が、没落する中産層に向かって「賛成か反対か直接問いたい」と人差し指を突き立てた途端に、自分が「改革」によって生活の権利を剥奪され、社会のパイの分け前から排除される没落者やその予備軍である事実もすっかり忘れて、社会から疎外されている自分に政治参加の機会が与えられたものと錯覚して、涎を垂らしながら嬉々として小泉首相に一票入れている大衆状況の絵を見ると、これはやはりファシズムの言葉よりも、ボナパルティズム(似非ボナパルティズム)の言葉を使った方が、よりリアルで説得的な構造分析になるのではないかと思われて仕方がないのである。そういう問題意識や政治感覚は、少なくない人間が持ち始めたのではないか。ボナパルティズム論もファシズム論に関連する。政治学者は再びファシズム論をやるべきだ。
七十年前は、この没落者たちは侵略軍の一団となって中国大陸に攻め込んで虐殺と略奪と強姦と放火を繰り返したわけだが、今度の没落者たちはどのようなアクティブになるのだろうか。生活の安定が破壊されるということは精神の安定が破壊されるということでもある。破壊された精神の再安定、バランス回復を求めて、人はたやすく狂人になる。刑法が無い世界を地上を与えてもらえれば、そこで刑法の無い「自然状態」的な生き方をすることができる。暴力と嗜虐で精神のバランス回復を果たす。ガルベストンの町で避難のバスに乗り遅れて取り残された住民に向かって、パトカーの警官が「乗り遅れたあなたが悪いから自分の責任で避難先を探せ」と言っていた。住民たちは怒っていたけれど、イラク戦争に賛成してブッシュに票を入れたのは、こういう南部とか中西部の貧しい階層が多いという話は定説になっている。米軍がファルージャの住民を虐殺するのを支持していたのはこういう貧しい人たちだったのではないのか。
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