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(回答先: 「オランダには、リップルウッドの資金管理組合があります。ここに新生銀行の株売却資金1兆円を送金し国税局が告発しましたが」 投稿者 外野 日時 2005 年 9 月 24 日 22:21:45)
1つ目の「濡れ手に粟」批判。本当にそうだろうか。長銀の受け皿には、日本の銀行グループ(中央三井)も名乗りを上げた。すなわち複数の候補のうち、日本政府から見て最もいい条件だったのがリップルウッドだった。
もし、他の投資家グループがリップルウッドよりもっといい条件(国民負担が少なく、金融危機を回避できる条件・スキーム・実行可能性)を示していたら、そのグループが落札できたはずだ。その意味でリップルウッドがいちばんいい条件を出し、いちばんリスクを取ったわけだ。
しかも、単にお金を出しただけではない。きちんと汗をかいて事業を再生させた。リップルウッドでなかったら、今回のような短期再生ができなかったかも知れない。中央三井や公的管理のままだったら、しがらみの中で問題を先送りし、国民負担は拡大していたに違いない。
およそ実業を知らないマスコミには、事業(ましてや事業再生)の大変さは分かるまい。リスクを取り、汗をかいた結果として大きなリターンを得たのだからそれを批判するのは的外れのそしりを免れない。
■2つ目の瑕疵担保条項。これもM&Aの実務からすれば当然の話だ。商品を買って、品質が悪かったら返品なり値引きをしてもらうのは当たり前だろう。
もし最初から返品不可だったら、買い手は不良品をつかまされるリスクを負うわけだからその分安くないと買わないはずだ。今回に関してはもともとの買値が安く、それ以上安くはできないのだから瑕疵担保条項でリスクヘッジするほかない。
また、M&Aにおいては時間をかけて買収先の事業や資産内容を調査した上で買収価格を決めるわけだが、今回のケースは政府が破綻処理を急いだため、投資家には十分な時間もなかった。となれば、後で瑕疵を調整する条項を入れないと話はまとまらない。
もし瑕疵担保条項が不平等条約と呼ばれるほどに理不尽ならものだったら、日本政府は瑕疵担保のない中央三井を選ぶこともできたろう。1つ目の問題にも関連するが、売り手には複数の選択肢があったのだから売り手の判断が批判されることはあっても買い手に批判の矛先が向かうのは筋違いだ。
(買収の過程でリップルウッドが「政治力」をつかったのは事実だろうが、かと言って、長銀を破綻させた経営陣や大蔵省が問題の元凶だという事実は動かない)
■3つ目の課税問題。税負担は投資判断において重要なコストだ。合法的に税負担を減少できるスキームがあれば、それを選択するのは当然だ。むしろ、それをしなかったらリップルウッドは投資家から訴えられるだろう。
極端な話、日本で課税されるならリップルウッドは今回の話に乗らなかったということもあり得る。税負担がないことがスキームの1つの前提だったかも知れないのだ。
海外(オランダ)を経由した租税回避は今に始まった話ではない。国税庁ではオランダとの租税条約の見直しに着手するとの報道があったが、今回に関しては手遅れだ。もっともここ数年、税務当局は国際的な租税回避スキーム封じに向けて躍起になっているが・・・。
■さて、今回の問題の本質はリップルウッドや日本政府の対応にあるのではなく、国民の意識にこそあるように思う。自分ではリスクを取る勇気もないくせに他人のリターンには妬みを覚える意識にこそだ。
日本では「お金儲け」というとネガティブに捉えられがちだ。ある意味、日本の美徳ではあるだろう。しかし今や、世界中の資金が収益機会を求めて動きまわっている。日本の中だけで仲良し村を形成できる時代ではないのだ。
こうした時代の厳しさを認識して、国民ひとりひとりの財務に対する感覚(お金に対する感覚、リスクに対する感覚)を磨く必要がある。合理的に対応しないとゲームには勝てない。感情的な対応しかできないうちは、外人に「やられっぱなし」だ。
リターンを得るには、リスクを管理しながらリスクを取る。感情で動くのではなく、冷静に合理的にものを考える。経済の金融化がますます進行している現在、こうした感覚・習慣を国民全体として身につけることこそ求められているのではなかろうか。
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