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仏独がイラク戦争反対国として米国政府に「古いヨーロッパ」と呼ばれていた頃、単独でワシントンに乗り込み、戦争の支持を表明したメルケル氏の姿を有権者は忘れていません。(本文より)
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拡大EU 新時代を読む (ジャーナリスト 福田直子)
http://www.tbs.co.jp/newsi_sp/eu/
勝者なき選挙のゆくえ
(2005/09/20)
【隔週火曜日更新】
9月18日に行われたドイツ総選挙は、野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が僅差で勝利宣言をしましたが、予想をはるかに下回る支持率でした。対する社会民主党(SPD)のシュレーダー首相も勝利宣言をするという、異例の事態となっています。
両者の議席数は、CDU/CSUが225議席、SPDが222議席、得票率からみると、1ポイントの差であります。戦後、保守とリベラル、野党と与党にこれほど票が割れたことはなく、「勝者なき選挙」といえるかもしれません。
CDU/CSUは、企業寄りの自由民主党(FDP)と連立政権を組むだけでは連邦議会の過半数に達することが出来ず、保守とリベラルが妥協して、大連立政権となるのか。ほかにも組み合わせはあり、この原稿を書いている時点では、政局はきわめて混沌し、不透明であります。
経済の悪化と思い切った社会保障の削減で人気が低迷していたシュレーダー首相でしたが、ドイツの基本政策であるはずの社会的市場経済モデル、いわゆる「ライン型経済」が、CDU/CSUでいっそう揺らぐのではないか、貧富の差がさらに開くのではないかという懸念から、SPDを選んだ有権者が多かったようです。
これに一役かったのが、8月末、アメリカ南部を襲ったハリケーンによる大洪水でした。普段はテレビにとりあげられることもないアメリカの低所得者層をみるにつけ、「アメリカのような弱者切り捨ての国にはなりたくない」と思った人が多かったのです。社会保障の削減が必要なことは頭では理解しても、現実となると不安で仕方がない選挙民の心もさぞ揺らいだことでしょう。ヨーロッパ型社会保障か、アメリカ型競争社会か。これは大きな政府に慣れ親しんできた市民にとっては厳しい選択です。
メルケル首相率いる新政権となれば、ドイツはアングロ・サクソン型の競争社会に近づけることを目標に、法人税を引き下げ、雇用法を緩和し、企業が従業員を解雇しやすくすることで、労働市場の流動化を図ろうとするでしょう。
ところで、ドイツの新政権は、EUにとってどういう意味があるのでしょうか。シュレーダー政権の頃、イラク戦争にフランスとともに全面的に反対したため、一時期、米国との関係が冷え切っていましたが、CDU/CSUはもともと米国との連携を重視しており、彼らが政権につけば、まず米国との関係修復に努めることでしょう。
仏独がイラク戦争反対国として米国政府に「古いヨーロッパ」と呼ばれていた頃、単独でワシントンに乗り込み、戦争の支持を表明したメルケル氏の姿を有権者は忘れていません。
あるいはドイツの足並みの乱れは、欧州政治の分岐点をあらわしているのでしょうか。近く、EU統合の牽引役を担ってきたフランスとドイツの団結の終わりがくるかもしれません。シラク大統領は健康が優れず、2年後の大統領選挙に再出馬はしないと表明しています。
EU統合の推進役であったシュレーダー首相が去って、シラク大統領もいなくなるとすれば、EUが仏独中心であった時代が過ぎ去り、ひとつの時代の終焉を意味するのかもしれません。
しかし、現時点では、連立政権の組み方によってはシュレーダー首相が残る可能性もなきにしもあらず。あるいは大連立政権となる場合は、第三の首相候補が出てくるのか。民主主義制度のいきづまりでしょうか、混乱した事情は、時代を反映しているのかもしれません。
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