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「まだ間に合う。憲法は死んでいない」 澤地久枝さんの講演報告
http://www.janjan.jp/living/0509/0509212761/1.php
9月17日午後1時30分より西東京市民会館ホール(東京都西東京市)で、作家の澤地久枝さんを講師に迎え、「人としての原点〜憲法九条と私の場合」と題し、講演会が開催されました。主催は西東京市高齢期問題連絡会。参加者は約270名。以下は講演の要旨です。
澤地久枝さんは「九条の会」の呼びかけ人の一人で、日本全国を回り、憲法九条を守るための訴えを続けています。
与党が圧勝した今回の選挙について澤地さんは「大変残念」と述べ、「日本の将来を決める大事な国政選挙であったにもかかわらず、無知蒙昧な、現在日本が置かれている状況を何も考えない人たちの一票によって自分たちの一生が決められることに、腸が煮えくり返る思い」と、選挙結果に対する強い不満を述べました。「だが、絶望したくない。戦争で死にたくないと思っていた人たち。明日も明後日も生きていたいと思っていた人たち。しかし、生きることのできなかった人たちのために、いま生きている者たちが未来づくりをしなければならない。次の世代、その次の世代に未来を渡してやりたい。アメリカの傭兵として軍隊のある国を未来に渡したくない。これまで一生懸命生きてきた人間として、死んでも死に切れない」と戦争体験者としての思いを語りました。
幼少時、父の仕事の関係で満州に渡った澤地さんは、14歳のとき敗戦を迎え、日本に引き上げてきました。「大本営の発表を信じ、正しい戦争であると思っていた。しかし、戦争が終わったあと、軍隊は逃げ出した。軍隊がいかにあてにならないものであるか知った。8月15日を境にして国はなくなった。助けてくれたのは中国や朝鮮の人たちだった。彼らの主食のヒエを食べながら、戦争に負けたと思った」と当時を述懐し、「国家に任せておくと、とんでもない目に遭う。信用できない」と述べました。
そして、戦後、占領軍による言論統制が敷かれていたことを踏まえながら、「日本は民主主義国家と言っているが、戦争中と変わらない方向にいくのではないか」と、自由にものが言えない現在の日本と言論統制の敷かれていた戦時中と時代の雰囲気が似ていることに警鐘を鳴らしました。
また、ハリケーンの被害者が「ブッシュは嘘つきだ!」と叫んだことに触れながら、「政治家は嘘をついてはいけない」と政治家としてのブッシュの資質に疑問を投げかけました。ハリケーンの被害が拡大したのは、危険が予想されていたにもかかわらず、イラク戦争のために予算が取れず堤防の工事を放置していたことと、州兵がイラクに行っていなかったことが原因であると言われています。イラクに大量破壊兵器がなかったにも関わらず、イラクに戦争をしかけたブッシュを小泉はなぜ急いで支持したのか。小泉は聞かれるときちんと答えない。論理をすりかえる。言葉が貧しい人間は人生も哲学も貧しい。そのような人間が国のリーダーなのである。日本の未来を思うといたたまれない。「背中に火がついたような感じ」だと、澤地さんは現在の心境について述べました。
澤地さんが「九条の会」の呼びかけ人になったのは、「いまの時代に生きる人間が次の世代の未来づくりをしなければならないという使命感」からであったと言います。「日本は世界の未来を先取りした憲法を持っている。これを変えることは愚かである」と語り、「冷戦終結後、唯一の超大国となったアメリカが世界の運命を決める。それを日本が変えていく原点として九条がある。その九条を守る運動を日本中に広めていくことが自分たちの務め」と「九条の会」が果たすべき役割について述べました。そして、「平和を願う人たちは、選挙のとき憲法改正に反対する候補者に投票してください」と呼びかけました。
「政治は苦手」と語る澤地さんですが、「九条の会」の仲間たちとともに、声がかかれば日本中どこへでも講演に行き、九条を守ることの大切さを訴えているそうです。日本各地で講演をしながらいつも感じるのは、集った人たちの「このことに関しては一歩も譲れない。九条を守る」という強い思いだそうです。その思いに触れ、元気をもらって帰ってくると言います。
このような運動をやっていると嫌がらせを受けることも多く、無言電話がかかってきたり、だれかが勝手に自分の名前を使ってその人を中傷するような手紙を送りつけたり……。選挙の後は、もっとひどくなってきたそうです。しかし、ここで引いたら負ける。テロの恐怖は一人がテロに遭うことで社会全体が後ろに下がることである。テロによってマスコミや社会全体がおびえている。選挙の前に小泉首相が「殺されてもいい」と言ったそうだが、相手を挑発し、テロの恐怖を煽るだけの軽率な発言だと批判しました。
「九条の会」の運動は全国に広がって、今では全国津々浦々に2000以上の九条の会ができ、市民運動が広がっているそうです。「選挙で自公に3分の2以上の議席を与えてしまったため、これからはどんな悪法も通ってしまう。権力の暴走に歯止めをかけるためには、市民の輪を広げていくしかない」とさらに輪を広げることの重要性を訴えました。
「これからは、21世紀の世界の在り方を先取りしたような人が政治を行うべきだ。憲法改正には衆参両院の3分の2以上の賛成が必要であるが、今回の選挙でそれが可能になった。だが、国民投票で国民の半分が賛成しないと成立しない」と述べ、「日本人は九条を守ることを選ぶと思う」と、九条に関しては国民の多くが改憲を望んでいないとの認識を示しました。
ベトナム戦争やイラク戦争で息子を失くした母親が大統領に抗議をしたことに触れながら、「世界中の母親が、私はお前たちに人殺しをさせるために生んだのではないと言えば、戦争は起きない」と、悲劇を再び繰り返さないために母親である女性たちが自ら率先して声をあげてほしいと訴えました。
最後に、「世界がもし100人の村だったら」という本の中にある「まずあなたが愛してください。あなた自身と人がこの村に生きてあるということを。もしたくさんのわたしたちがこの村を愛することを知ったなら、まだ間に合います。人びとを引き裂いている非道な力からこの村を救えます」という一節を紹介しながら、「まだ間に合う。憲法は死んでいない」と、九条を守る運動を広めることが戦争に突き進むいまの流れを食い止めることができる、と述べました。
「この60年、自衛隊は1人の戦死者も出していない。まだ間に合う」
「戦争の記憶が薄れていく中で、戦争を知っている世代が子どもたちや若者世代と話し合い、戦争というものがどういうものか話してほしい。この日本で戦争の記憶のない家族はいない。おじいちゃんやおばあちゃん、中間世代が次の世代に戦争の話をすることが残されたものたちの責任である。じっくりと忍耐強く語り伝えること。イラクのこと。将来のこと。日本の未来のこと。自分の頭で判断すること」
「たとえ小さな声でもあげていこう。これは譲れないという一線は決して譲らない。人々のその思いが層を成して大きくなったとき、未来を決定することができる」と、互いに連帯を強め、市民のネットワークをつくって運動を広げていくことが大事であると訴えました。
(ひらのゆきこ)
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