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カミソリ後藤田氏逝く ひっそり密葬
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2005/09/22/04.html
鋭い判断力と物言いで「カミソリ後藤田」と呼ばれた元副総理の後藤田正晴（ごとうだ・まさはる）氏が１９日午後８時５３分、肺炎のため東京都内の病院で死去していたことが２１日公表された。９１歳。徳島県出身。密葬は２１日午前、都内で営まれた。「お別れの会」が東京と徳島で行われる予定で、日時などは未定。喪主は妻松子（まつこ）さん。「第３次小泉内閣」が発足した２１日に伝えられ大物の悲報に永田町にも大きな衝撃が走った。
「カミソリ」と呼ばれた男は安らかな顔でこの世を去った。親族と事務所関係者数人だけが見守る中、そっと息を引き取った。最期をみとった事務所関係者は「苦しさも取れ、本来の優しい顔で息を引き取った」と語る。
関係者によると、８月のエックス線検査で肺に影が見つかり、内視鏡検査を受けた。１泊２日で退院できるはずだったが入院が延び、８月末に別の病院へ転院。その後、容体が一進一退し、最後は高齢からくる体力の衰えで呼吸が困難になったという。
密葬は２１日午前、東京都文京区大塚の護国寺桂昌殿で営まれた。式場の入り口には「御霊燈」と書かれたちょうちんが掲げられただけ。故人の名前を示すものはなく、周辺は静けさに包まれた。密葬を終えてから死去を公表するのが「故人の強い遺志」だったためだ。しめやかに、質素に、静かに送ることを家族と希望していた。
９６年に政界を引退してからも存在感あるご意見番だった。最近では自衛隊イラク派遣について「派遣は間違いだ。武力行使と一体化しないなんて牽強（けんきょう）付会の議論だ。小泉君は戦争を知らない。まったく知識がない」と小泉首相の判断を厳しく批判していた。
徳島県旧美郷村（現吉野川市）生まれ。東京帝国大学法学部を卒業後、旧内務省に入った。１９７２年、警察庁長官として連合赤軍あさま山荘事件の解決を指揮。田中角栄元首相に請われ、同年７月の田中内閣発足に伴い官房副長官（事務）に就任した。政界に入ったのは７６年で、衆院旧徳島全県区から初当選。その後、中曽根内閣で官房長官、宮沢内閣で副総理などを務めた。
政治改革推進派の代表格で、憲法改正論議では護憲派の姿勢を貫いた。また、「旧日本軍の暴走を知る世代」として、なし崩し的な自衛隊の海外派遣には批判的な態度を示していた。田中元首相の「懐刀」、中曽根康弘元首相の「知恵袋」などと形容される政治家だった。
≪正純議員涙≫大叔父に当たる正晴氏から地盤を引き継いだ後藤田正純衆院議員は２１日、黒のスーツに黒のネクタイ姿で初登院した。本会議終了後、記者団に「８月中旬ごろ、選挙情勢について２回ほど電話で話した。それが最後の会話。元気だと思っていたが…」と悲しみにくれた。
大学時代に正晴氏の私設秘書を務め「身内だからこそ、厳しい指導をしていただいた。あまりにも大きすぎる、ずっしりと重たい存在」と思い出を振り返った。また「選挙中、“３期目に当選したら正純がやりたいようにやっていい”と言ってくれた。いつもは“しっかり勉強するように”と言っていたのに。今思うと遺言じゃないかな」と目に涙を浮かべ、言葉を詰まらせた。
夫人で女優の水野真紀（３５）は午前１０時前までレギュラー番組のＴＢＳ「はなまるマーケット」に生出演。ふだんと変わらぬ様子で振る舞っていた。
[ 2005年09月22日付 紙面記事 ]
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