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05年度版防衛白書 米「不安定の弧」戦略への追随・具体化に踏み出す
(労働新聞 2005年9月5日号・社説)
http://www.jlp.net/syasetu/050905a.html
政局は、九月十一日投票に向けた攻防のさなかである。だが、総選挙で真に争点となるべき点は、「改革政治の打破」と併せ、「対米追随で、時代錯誤の軍事、政治大国化の道を転換させ、自主、独立でアジアと共生する新たな国の進路を実現すること」(労働党中央委員会政治局声明・前号参照)である。
しかし、対米追随でアジア敵視の自民・公明の与党に加え、野党・民主党も「日米同盟はアジア・太平洋地域の安定の要」と、まったく同じ立場である。国の進路問題は選挙戦の争点から消えたごとくである。
そうした下で、八月二日、防衛庁は、二〇〇五年度版「防衛白書」を発表、閣議で了承された。
防衛庁は三十一日、来年度予算の概算要求で、ミサイル防衛(MD)構想関連予算を今年度比約二五%増の千五百億円要求することを決めた。そのほかにも、中国を見据えた対潜哨戒機の「能力向上」、海外派兵に即時対応できる「中央即応集団」編成費などを求めるという。今「白書」の危険性は、こうした事実に端的に示されている。
対米追随の軍事大国化を進める「白書」の危険性を暴露し、独立・自主のわが国の進路を実現する闘いは、ますます重要である。
新「防衛大綱」の具体化に踏み出す
昨年の「白書」は、「存在する自衛隊から機能する自衛隊へ」へという方向性を提示し、全世界規模の対米軍事支援、海外派兵拡大と、中国への公然たる敵視を打ち出したことに特徴があった。
今年の「白書」は、昨年十二月に閣議決定された「新防衛計画大綱」を受け、昨年の「白書」の方向性をさらに推し進めた点に最大の特徴がある。 「白書」は、新防衛計画大綱を説明・確認しながら、これまでの「基盤的防衛力の整備」という防衛構想が転換され、テロなどの「新たな脅威」に対応した「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」という方向が打ち出された。「侵略の抑止」から「対処能力重視」「海外関与型」への方針転換である。自衛隊創設後、建て前であれ掲げ続けられてきた「侵略からの防衛」という目的が後景化され、海外派兵のスピーディー化、本格化がめざされているのだ。
この方針の下、「統合幕僚監部」新設など「統合運用の強化」をはじめ、「情報機能の強化」「科学技術の発展への対応」「人的資源の効果的な活用」が「防衛力の基本的な事項」とされ、海外派兵やMD構想推進を体制面からも加速させる方向が叫ばれている。先述した「中央即応集団」(白書では「即応近代化部隊」)の創設も、中国をにらみ「本州以南」と配置場所を明記して提起されている。
また「白書」では、海外派兵拡大への国民的支持取りつけを狙って、一部のイラク国民やインド洋津波被災者など海外からの「自衛隊への感謝の声」などを紹介している。
対米追随・アジア敵視の深まり招く
「新防衛計画大綱」を受けた「白書」の方向性は、本年二月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)での「共通戦略目標」合意を前提にしたものである。
これは、全世界的に孤立にあえぐ米帝国主義のまきかえし策、「不安定の弧」戦略に積極的に追随し、世界的範囲で日米同盟を機能させるというものである。
同時に、全世界に権益を持つに至ったわが国多国籍大企業による、軍事大国化の要求でもある。それは、アジアでは中国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を事実上の仮想敵とし、アジアでの戦争を辞さないという亡国の道にほかならない。
「白書」は、「米国の軍事的プレゼンスはアジア太平洋地域の平和と安定を維持するために不可欠」などと言い、世界的な米軍再編について二ページもさいて解説、「中東から東アジアにいたる地域(まさに米国が「不安定の弧」と呼ぶ地域だ)の安定はわが国にとってきわめて重要」「米国の軍事態勢見直しにわが国としてどう対応するかが大きな課題」と、米戦略とその一環である米軍再配置に対する積極協力を明言しているのだ。
一方、アジアに対する敵対姿勢も明白である。北朝鮮に対しては、昨年同様、「重大な不安定要因」と決めつけ、引き続き敵視している。盧武鉉・韓国政権の対北朝鮮柔軟政策などは、まるで無視されている。
中国に対してはどうか。
大野・防衛庁長官は、「白書」閣議決定後の記者会見で「(中国軍の)透明性を求めていきたい」と、対中敵視の態度を示した。
2プラス2の「共通戦略目標」に掲げられた台湾問題については、昨年同様、「この地域の平和と安定を脅かしかねない安全保障問題」と明記された。ここでは、台湾問題が中国の国内問題であるという、七二年の日中共同声明以来、日本政府も認めてきた基本原則は事実上投げ捨てられ、「中国側から見た立場」にすぎないとされている。まさに、米国に従い、台湾海峡の危機をあおり、介入する姿勢を再確認しているのである。
実際、中国が制定した「反国家分裂法」について、かなりの文章をさいた上、「懸念」を表明している。さらに、昨年十一月の中国原子力潜水艦による領海内航行問題については、当該自衛隊員へのインタビューも含めて詳細に解説、その脅威をあおり立てている。
欧州連合(EU)の対中武器輸出に関しても「反対」と「注目」をあらわすなど、けん制している。概算要求にみられる中国敵視のあらわれについては、すでに述べた。 これらを見れば、マスコミが本「白書」について「中国に配慮された」(日経新聞)などというのは、まるでデタラメであると分かる。
アジアで孤立に直面した支配層
しかし、このような対米追随で、わが国の軍事大国化を進めるという支配層の選択は、大きな困難に直面している。
中国、韓国などでは反日感情が高まり、わが国はアジアで戦後最大の孤立に陥った。2プラス2会議以降、靖国神社参拝問題や歴史教科書問題もあり、中国の反日デモが巻き起こる一方、韓国は対日政策の転換を宣言した。
八月十五日の小泉談話では侵略への「反省」をしてみせたが、これ自身、九五年の村山談話からも後退した内容であり、アジア諸国が納得するはずもない。
支配層の願う国連安保理常任理事国入りも、中国、韓国などアジアの反対で行き詰まり、頼みの米国にすら見放される始末である。最近では、東南アジア諸国連合(ASEAN)のオン・ケン・ヨン事務総長も、日本の常任理事国入りに「(賛成の立場では)一致していない」と述べるほどだ。
こうして、日本のアジア外交は、八方ふさがりの状態におちいっている。
無力な与野党、大衆行動の発展を
このような情勢の中、わが国与野党の態度はどうか。
台湾問題に対する態度では、わが国の政党は自民党、民主党はもとより共産党ですら「平和解決」という内政干渉の態度である。これでは、アジア外交の行き詰まりを真に打開することはできない。
神奈川県座間基地への司令部移転など米軍再編に対しては、労働組合を中心とする闘いが始まっている。支配層の中にも動揺がある。軍事面だけでなく、経済面での日米基軸への不満も含めれば、なおさらだ。
支配層は、国民大衆の反撃を恐れている。今回の「白書」では米軍再編に関して「米軍の抑止力を維持・強化しつつ、在日米軍施設・区域に係る過重な負担軽減に留意」となっていたが、発表直前に「強化」を削除した。「強化」こそが日米両国の本音であるが、かつての沖縄県民の決起のような国民的反撃を恐れ、小手先のごまかしを用いているのである。ここにも、敵の弱さを見ることができる。
支配層は内部に亀裂を抱えたまま、危険な軍事大国の道に踏み込むことになる。闘いの発展には大きなチャンスが訪れている。自主・アジアとの共生の壮大な国民運動を起こすことが求められている。
参照:【17年版防衛白書メニュー画面】http://jda-clearing.jda.go.jp/hakusho_data/2005/w2005_00.html
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不安定の弧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%AE%89%E5%AE%9A%E3%81%AE%E5%BC%A7
不安定の弧(ふあんていのこ:arc of instability)
今日におけるアメリカの世界戦略は豊かな油田のあるアフリカ北部を「チャンスの弧」(arc of opportunity)と位置づけ、治安と経済が安定している欧州を「安定の弧」(arc of stability)としてそれぞれをアメリカの世界戦略基盤としてとらえるとともに、イスラエルからカスピ海を通り北朝鮮を結ぶ線と紅海から韓国へと至る弧の間、つまり東欧から中東、インド、東アジア(特に中国、北朝鮮)にかけての地域が近年、テロの温床となり、米軍基地も少ない地帯であることから、「不安定の弧」(arc of instability)と名付け、米軍による関与の強化を明示している。 2001年、アメリカにおいて4年に1度行われる米国防見直し(QDR:Quadrennial Defense Review)ではアメリカは不安定の弧について次のような見解が示された。
1.大規模な軍事衝突が起こりやすい
2.力を伸ばす大国と衰退する大国が混在する
3.豊富な資源をもつ軍事的な競争相手が出現する可能性がある
4.アメリカの基地や中継施設の密度が他の地域とくらべ低い地帯
アメリカはこの国防見直しにおいて、世界に展開している米軍のトランスフォーメーションを進めている。 とりわけ、不安定の弧戦略に対しては極東における在日・在韓米軍の編成を改め、極東における兵力を中東までのチョークポイントである南アジアにシフトするとともに、中東或いは石油資源の獲得の上で重要なアフリカ地域への重点化を進めている。 ちなみに、この不安定の弧戦略とはもともと、地政学ではイギリスの地理学者 マッキンダーが同地域のことを「危機の弧」(arc of crisis)と定義しており、このアメリカの戦略は地政学的観点に由来しているものと思われる。マッキンダーは海洋国家の対ユーラシア戦略をまとめたハートランド論を唱えた学者であり、マハン同様、アメリカの地政学に大いに影響を与えた人物である。この不安定の弧地帯はアメリカの同盟国日本にとっても経済活動における重要な通商ルートであるシーレーンがあり、日本にとっては貿易を中心とした船舶の航行上の安全、及び少資源国で海洋国家である日本のエネルギー補給上においても重要地域である。この点において日米両国は不安定の弧地域の安定化において利害関係を共有する関係にあるといえる。こうしたことから、アメリカ政界の保守層の中には日本の自衛隊による自主防衛力強化と不安定の弧地帯での周辺事態において米軍の後方支援の役割を果たすよう求める声が強い。
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